3月9日（日）J2 第1節 草津 vs 広島（13:00KICK OFF/群馬陸）
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草津が、ホームで開幕戦を迎えるのはＪ２に昇格した05年以来３年ぶりだ。静寂に包まれたスタジアムはいま、その時を静かに待っている。２００８シーズンのザスパ草津がベールを脱ぐ瞬間を…。

開幕の相手・広島との戦いは、宮崎キャンプ中から水面下で勃発していた。草津のテストマッチには広島偵察隊の影がちらついていた。事前連絡が入っていたようだが、植木監督は不快感を示した。２月下旬の湘南戦でも同じだった。草津側は偵察を断ったがそれでも現れたという。指揮官は急きょ、主力をメンバーから外して徹底抗戦へ出た。「広島の戦力を考えれば、うちに対してここまでやる必要はないはず。ふつふつと怒りが湧いてきた」と植木監督。指揮官は開幕直前の６、７日の練習場所を直前で変更、報道陣らを煙に巻いた。昨季の開幕戦で布陣を変更した前例があるだけに、今回も「奇策」を仕掛ける可能性があるだろう。

情報流失を最小限に抑えた草津に対して、３月１日にゼロックススーパーカップを戦った広島のチーム状況は、「公」になった。佐藤寿、久保らＦＷ、森崎浩、青山らＭＦ、ストヤノフが中心となるＤＦライン。３―５―２のシステム、メンバーが大幅に変わることはないだろう。今季の優勝候補・広島には、ゼロックス覇者という修飾語も加わったが、肩書きが増えれば増えるほど、草津のエナジーは増大する。

草津が最も警戒するのは、当然ながら、エースストライカー・佐藤寿だ。「チャンスは必ず決めてくる。１回のチャンスも与えてはいけない」と植木監督。サイドを起点とした広島の攻撃は、佐藤寿のアクションから始まる。彼のポストプレーと、裏への動き、それに合わせて周囲が連動する。草津は、佐藤寿へのパスコースを塞ぐとともに、彼が作ったスペースを確実に埋めていくことが必要だ。

代表クラスの選手を抱える広島と、草津との戦力差は明らかだ。だが広島には不運があった。右ＷＢ李漢宰がゼロックスで退場処分を受け、開幕戦が出場停止になったのだ。ＤＦラインの森脇が繰り上がるか、代役を入れるかは不明だが、コンビネーションに不安を残す。昨年まで愛媛でプレーした森脇とは、Ｊ２で何度も対戦しただけに特徴は分かる。草津としては３バックを敷く広島の右サイド、すなわち左サイドに突破口を見つけたいところだ。

　そのサイドを切り裂く役割を担うのは、今季草津へ復帰した司令塔・島田だ。独特のリズムのドリブルから繰り出されるラストパスは広島が相手でも十分に通用する。ピッチに転がるボールが一度でも島田の左足を経由すれば、劇的な変化が巻き起こる。「一昨年とは戦術が変わったが、ゴールに絡むという自分の役割は同じ」と島田。ゲーム自体は広島が主導権を握ることが予想されるが、広島が攻め込む展開になれば、島田からのカウンターが威力を発揮する。

　広島ペトロヴィッチ監督は「Ｊ２でも自分たちのスタイルを変えることはない」とした上で、「Ｊ２は降格がない世界でも珍しいリーグ。今季も５〜６チームが上位争いをすると思うが、中位以下は上位を壊そうと必死になって戦ってくる。私には『カミカゼアタック』にしか見えない」と警戒線を張る。エレガントなサッカーを展開する広島が一番嫌がるのは、Ｊ２の泥臭いサッカーだ。名将・ペトロヴィッチは、Ｊ２が世界一恐ろしいリーグだということをこの開幕戦で知ることだろう。

指揮官が進退を懸けることをはっきりと明言し、背水の陣で挑む草津にとって、今季は単なる１シーズンではない。過去３年間の屈辱を晴らすための戦いだ。それが、これまで以上に厳しいものであることは間違いない。サポーターも覚悟を決めてシーズンに臨む必要がある。開幕・広島戦は、新生・草津の「出陣式」だ。

以上

2008.03.08 Reported by 伊藤寿学