11月4日(日) 第87回天皇杯4回戦
甲府 3 - 1 徳島 (13:00/小瀬/4,963人)
得点者:9' 石原克哉(甲府)、75' 大島康明(徳島)、107' 羽地登志晃(甲府)、119' 木村勝太(甲府)
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3点取って勝ったことは嬉しいが、内容では満足することが出来ない勝利。J2リーグ12位の徳島相手の天皇杯4回戦は、来週の神戸戦(第31節・11月10日・ホムスタ)に向けてどのように繋がっていくのだろうか。
立ち上がりは甲府が主導権を握り、9分に石原がこぼれ球を押し込んで先制する。前節(第30節、1−1)の横浜FM戦のように、クサビを入れてそのボールに反応して縦方向にパワーとスピードを持ってゴールに向かう場面はなかったが、ボールを回せたことが追加点の予感を感じさせてくれた。しかし、時間が経つにつれてボールを回せるということが雑なプレーや縦への意識を削いでいく。大木監督は「澱んだ」と表現する。「相手の逆を取ろうとして時間をかけすぎた」ことがその理由だ。もっと強く早いプレスをかけてくるチームが相手なら、同じようには出来なかっただろうし、しなかったはず。そういう場合に、横浜FM戦のようにクサビを入れて、サポートするプレーに切り替えることが出来れば心配は小さくなるのだが…。
徳島は心配していたセットプレーで先制点を許すのだが、逆に自分たちのセットプレーでは低い弾道で速いボールを入れてゴールの匂いを感じさせた。こういうボールがこぼれたり、ファーに抜けたりするとチャンスが生まれる。前半はその匂いをゴールに結びつけることが出来なかったが、後半から石田を投入すると流れが更に徳島に傾いた。選手間のバランスがいい状態ではセカンドボールを拾えるし、少ないタッチ数で甲府のディフェンスラインの裏も取れる。早いパス回しで裏を取った55分の場面は素晴らしかった。ただ、ラストパスが小林の足元に入りすぎて、GKとの1対1の場面には到らなかった。ここの精度が高ければ、昇格争いをしているはずなので、甲府同様にゴール前の課題はそう簡単にはなくならない。大抵の場合、精度の高いプレーが出来る選手は川の上流に生息するものだ。
甲府は流れを変えるために63分に羽地を投入する。徳島サイドのゴール裏に陣取った約60人のサポーターが、180人分くらいのブーイングで羽地を迎え入れた。徳島は67分に大島を投入して対抗する。大木監督は「徳島は、オーソドックスに細かいことをやってくる。スタイルが変わらないなかでクオリティを変えてくる」と、途中出場の石田と大島を高く評価する。そして、山本の足が攣ったタイミングでのセットプレーから、大島に同点ゴールを決められてしまう。その後もタイミングよくボールを散らしていく徳島に対して、甲府は強引に攻め込もうとするが、セカンドボールがなかなか拾えず、「まさか」の予感が頭を持ち上げる。なかなか決定機を作れなかった甲府は、78分に茂原がゴール前のスペースに入れたグラウンダーに羽地が走り込むが、彼の右足はボールにミートしなかった。決定的なチャンスを逃した甲府は延長戦に次節への希望を求めることになった。
歌い続けるサポーターに送り出された甲府の選手たちは――まるでペナルティエリアの外からシュートを打つのが禁止されているように――大事にボールを運んでは、徳島の選手にドカーンと蹴られてしまう。カウンターの精度が高いチームが相手なら失点した可能性が高い展開だったが、幸いにも、徳島はミスで甲府を助けてくれた。もちろん、甲府の守備陣もよく守ったのだが、マグノアウベス、ジュニーニョ、ワシントンが相手ならどうなったか分からない。しかし、延長後半に羽地が大きな仕事を古巣相手に成し遂げた。こぼれ球を得意の左足で徳島ゴールに叩き込んだ。「(78分の決定的なチャンスを外したミスは)引き摺っていなかった。ゲーム中に引き摺ればあとのプレーが悪くなる」とストライカーに必要な正しい傲慢をゴールにつなげた。119分にも途中出場の木村が茂原のアシストを受けてゴール。甲府での公式戦で、未だゴールがなかった2人が試合を決めた。
甲府にとってこの日の勝利は嬉しいが、内容的には満足いくものではなかった。藤田、井上の不在も響いたのだが、今一つ覇気が感じられなかった。原因は分からないが、高卒、大卒ルーキーらのように、残留争いに気を揉むよりも、自分が出たくて仕方がない選手にフレッシュな勢いと魅力を感じる。現在の主力に彼らの力を混ぜ合わせれば、理屈ではないパワーが生まれるのではないかと感じた。柏や新潟の仲間入りをしかけた危うさはあったが、羽地と木村の公式戦初ゴールが次節以降の勢いに繋がることをものすごく期待したい。
以上
2007.11.04 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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