10月28日（日） 2007 J2リーグ戦 第48節
草津 2 - 2 東京Ｖ　（16:04／松本／5,224人）
得点者：9' カレカ（草津）、26' フッキ（東京Ｖ）、71' フッキ（東京Ｖ）、89' 高田保則（草津）

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　草津の執念が東京Ｖを止めた。９連勝、そしてＪ１昇格「王手」を目前にした東京Ｖの目論見（もくろみ）を、ロスタイムで打ち砕いたのは草津のエース高田だった。

　11位草津と２位東京Ｖ。互いの意地がぶつかり合う形となった好ゲームは、カレカの先制ゴールによって、幕を開けた。東京Ｖの序盤の攻撃を凌いだ草津は、サイド裏へロングフィードを送ることで混乱を誘い、右ＣＫを獲得。「ナナメのフィードを入れると、ヴェルディのＤＦラインに隙ができるのはわかっていた」（鳥居塚）そして、松下が蹴ったＣＫにフリーで合わせたのがカレカだった。「いいボールが入ってきたので、うまく決めることができた」（カレカ）。７月に加入したカレカの初ゴールで、草津の士気は一気に高まる。

　東京Ｖ対策として４バック３ボランチの布陣を選択した草津は、７人がフッキとディエゴを囲い込み、チャンスの芽をつぶしていく。「フッキとディエゴへのコースを消すように心掛けた」（櫻田）。そして、時おり放たれるシュートはＤＦが体を張ってブロック。１点をリードした草津は気迫のＤＦを魅せる。

　その草津の守備網を突破したのは、フッキの卓越した個人技だった。26分、スローインからのボールをペナルティエリア右で受けたフッキがゴールライン際に進むと見せかけて内側へ切り込む。草津は３人が対応していたが全員が振り切られて、左足でのゴールを許す。「左足には警戒していたが、それでもやられた。右へのフェイントに引き寄せられた」と寺田。東京Ｖはフッキ一人の力で試合を振り出しに戻す。

　後半、東京Ｖのプレスが緩み始めると、主導権は草津に傾き始める。草津は前半のカウンターサッカーに、ポゼッションを加えてじっくりとボールを回す。そして62分には櫻田、67分には佐田がゴール前でチャンスを迎える。草津の攻撃精度が高ければゴールが生まれてもおかしくなかった。

　だが71分、ゲームの均衡はまたしてもフッキによって破られた。バイタルエリアでボールを持ったフッキがディエゴとのワンツーでペナルティエリアに侵入。飛び出してきたＧＫ本田をもかわして、角度のない場所からゴールへと流し込む。「外側へ追い出したはずだったが、うまく決められた」と本田が話したように、フッキの技術を褒めるしかなかった。その後、東京Ｖはしっかりと守備を固めて時間の経過を待つ。９連勝は時間の問題と思われた。

　しかし、85分を過ぎたころから、東京ＶのＤＦラインが下がり始める。そしてロスタイムに突入した直後、ゴール前に「空白」のスペースが生じる。そこに飛び込んだのが草津のエース高田だった。秋葉のクロスをヘッドでかすめ、方向を変えると、ボールは東京Ｖのゴールへと吸い込まれた。「ゴールへのイメージが形になった」（高田）。草津はその後も決定機を迎えるが、無情にもポストに阻まれ、逆転ならず。２対２でゲームを終えた。勝利には届かなかったが、この日の草津が魅せたサッカーは、フッキ頼みの東京Ｖのサッカーよりも魅力に溢れていた。

　土壇場で追いつかれた東京Ｖだが、自動昇格圏内である２位以内キープに向けて、優位な立場にいることは間違いない。次節のホーム仙台戦が天王山となるが、キャスティングボードは東京Ｖが握っている。「残り３試合勝てば昇格できる」（ラモス監督）。Ｊ２規格外の力を持つフッキを切り札として、昇格への階段を上るだけだ。

　東京Ｖ相手に殊勲のドロー劇を演じた草津。カウンターとポゼッションを織り交ぜた攻撃には、今季のサッカーの完成形が垣間見えた。だが、確かな手応えを感じさせる一方で、勝ちゲームを拾えないという課題は依然として解消されていない。「ここで勝ちきれないと本物のチームにならない」と植木監督。残り４試合を来季へとつなぐ道とするならば、草津は勝利という結果でその道を踏み固めることが必要となる。

以上

2007.10.29 Reported by 伊藤寿学