10月7日(日) 第87回天皇杯3回戦
徳島 2 - 0 FC岐阜 (13:00/鳴門大塚/1,479人)
得点者:68' 長谷川 太郎(徳島)、76' 小林 康剛(徳島)
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[ながら]と言えば長良川を思い浮かべる人も多いだろう。この長良川で有名なのが【鵜飼】である。〔鵜匠〕といわれるウミウを操る職人が、適度な強さの紐で括った10羽程度のウミウを紐が絡まないよう巧みに操り、次から次へと鮎やアマゴなどを獲っていく。
1000年以上も受け継がれてきた伝統漁法である。
その長良川が生活の一部に溶け込んでいる土地からやってきたFC岐阜を迎えて行われた天皇杯3回戦。やはりというかこれまで勝ち上がってきた岐阜に攻勢に出られ、守勢の続く徳島ヴォルティス。マイボールとするもそれを察知した岐阜陣営は数人で取り囲み、奪いにかかる。奪うと丁寧なパス回しで、あっという間に徳島陣内深くに侵入し、シュートを放つ。この状態が前半ほとんどの時間で繰り返された。徳島も反撃がなかった訳ではないが、どうもゴールのにおいが漂う雰囲気ではなかった。
前半とは対照的な流れで後半は試合が進行する。前半、あれだけ攻勢に出ていた岐阜が大人しくなってしまい、逆に徳島はチャンスとばかりにボールをつなぎ、岐阜ゴールへ襲いかかった。ワンタッチパスが面白いようにつながりはじめ、岐阜選手を翻弄し始めたのである。60分に小山拓土選手に代えて長谷川太郎選手を投入したことが見事的中。68分にのどから手が出るほど欲しかったゴールを奪うと、続く76分には、これまた65分に石田祐樹選手と代わって入った小林康剛選手が2点目を決め優位な状況に立つ。
何とか1点を返して徳島にプレッシャーを与えたい岐阜は、前半の勢いを取り戻そうと前線への供給を行うも、前半から体を張った守備で数々のピンチを凌いできた徳島守備陣に遮られ、このまま試合は終了。徳島は格上の面目を保ち4回戦進出を果たした。
この試合、前半は初戦ということもあり、様々なプレッシャーから固さの目立つ徳島に対して、失うものはなくチャレンジャー精神で体当たりをしてきた岐阜に思うようなサッカーをさせてもらえなかった。その証拠に徳島の選手がボールを保持すると必ず岐阜の選手2人が取り囲みパスを出させず、またそのボールを奪いにかかってきたのである。松永監督も「守備の部分では中盤でプレスをかけたり、パスワークをさせないようにすることに主眼を置いており、前半はそれができていた」とゲームプランどおりの展開が出来たようである。
ただ、攻撃に転じフリーでシュートを放つもなかなかゴールの扉を開けることの出来なかったことで、徳島にチャンスを与えることとなってしまう。この点について両チーム監督は先制点を挙げたチームに勝利が転がり込む可能性が高かったことを認識していた。徳島の交代策もピタリと当てはまったことも相まって、後半に大きく試合が動き、良い流れを持続することが出来た徳島に軍配が上がった。
次はJ1勢との対決が待ち構える。今度は逆に徳島がチャレンジャーとして立ち向かう番となる。だからといって恐れることはない。落ち着いて相手の動向を見極め、自分たちで考えながら、チャンスをものにしていってもらいたい。
ところで、岐阜との試合において、監督の選手交代策が見事に当てはまったが、鵜匠も10羽ほどのウミウを同時に扱いながら、しっかりと1羽1羽を見極めて、良いタイミングで飲み込んだ魚を舟上で吐かせるという。
さながら、ピッチという川で溺れかかっているウミウたちを掬い上げ、生きの良いウミウを投入し、ゴールという獲物を次々と獲る手法は、〔鵜匠〕ならぬ〔名将〕が巧みに見せる手腕なのかもしれない。名将今井監督の手腕が光る試合が今後も続くことで、徳島の鵜飼はまだまだ続きそうである。
余談が続くが、長良川の【鵜飼】は、そろそろシーズンオフに入るようである。今年どうしてもこの鵜飼が見たくなった方は一日でも早く岐阜県を訪れることをお勧めしたい。
以上
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