10月7日（日） 第87回天皇杯3回戦
札幌 1 - 1（PK 9 - 10）TDK SC　（13:00／札幌厚別／4,177人）
得点者：4' 石井　謙伍（札幌）、16' 松ヶ枝 泰介（TDK SC）

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二順目にまで回ったＰＫ合戦。１２番目のキッカーは先攻めのＴＤＫ　ＳＣは小沢がゴールほぼ中央に決めたものの、後攻めとなった札幌は砂川がクロスバーに当ててしまい失敗。その瞬間、観衆の大半を地元・札幌のサポーターが占めていた厚別競技場のグラウンドで、ＴＤＫイレブンが喜びを爆発させた。秋田県代表、ＪＦＬ１４位のＴＤＫ　ＳＣがＪ２で首位を走る札幌をＰＫ合戦の末に降したのだ。

３日後にリーグ戦のＣ大阪とのアウェーゲームを控える札幌はこの試合、複数のポジションでメンバーを入れ替える大幅なターンオーバーを敢行。Ｊ１昇格をかけての激しい順位争いが佳境に差し掛かっている最中でのこの天皇杯最初の試合を、フレッシュな選手を起用することで全体のコンディションバランスを取りながら乗り切ろうという狙いである。そして、対するＴＤＫ　ＳＣの小松監督は「Ｊのチームと戦うまでは負けられないという気持ちでやってきました」とこの試合に意気込んでいた。

「カップ戦の最初の試合というのは一番難しい」。試合後、敗れた札幌の三浦監督はこのように話していた。そう、負ければそこで終わりというトーナメント戦独特のシチュエーションではどうしてもプレーがセーフティなものになってしまい、積極性を失いがちになってしまう。ひとつ勝ってカップ戦の空気に慣れてしまうまでは、どうしても動きが堅くなってしまうのである。そして、この日の札幌のように自分達よりもディビジョンが下のチームと対戦する場合はより難しい。

「一番大事なことは次回進出の権利を得ること」（三浦監督）だとわかっていながらも、攻撃ではキレイな形で相手守備を崩そうとしてシンプルさを失ってしまったり、守備でも簡単にクリアをしてしまえば済む場面でもマイボールを維持しようと無駄にリスクを冒してしまったりする。自分達のレベルが上であるということを、知らずのうちに出そうとしてしまうのだろう。

実際に、この試合では札幌が開始４分に石井の得点で先制し、そのまま流れに乗ってワンサイドゲームに持ち込むかとも思われたが、１６分に自陣ペナルティエリア内でのプレーで簡単に外へ逃げてしまえばよいところを、池内がその判断を誤って相手ＦＷにボールを奪われて同点とされてしまった。

ＴＤＫ　ＳＣは序盤こそ高林、千野という守備的ＭＦを中心に中盤では積極的なプレスを仕掛けていたが、我慢を続けていれば決定機は充分に得られると感じたのか、１−１のタイスコアにしてからは無理して運動量を増やさず、しっかりとスペースを埋める守備を貫いて札幌のミスが訪れるのを待った。そうして、結局追加点を奪うことはできなかったものの、時計の針が進み焦りを感じてきた札幌がシンプルな攻撃を繰り出すようになってからも粘り強く封じ、ＰＫ戦へと持ち込んで勝利を得たのだ。

ただし、この日ＴＤＫ　ＳＣが勝利した要因は、もちろんカップ戦特有のマジックだけではない。「ウチもＪを経験している選手などが何人もいるので情報はあったし、札幌はメンバーが変わっても基本的な戦い方は変わらないだろうと考えていた」とＦＷ松田が話すようにしっかりと札幌への対策を練っていた。そうして、砂川、岡本という突破力のある札幌のサイドハーフをしっかりと牽制し、効果的なチャンスをなかなか作らせなかった。特に砂川に対しては加賀、松ヶ枝の２人が常に監視の目を光らせ、ほぼ完璧にシャットアウト。クロスボールにもしっかりと足を伸ばしたり身を投げ出したりして封じるなど、要所を押さえる集中力は見事だった。

こうしてＴＤＫ　ＳＣがＪ２首位の札幌を下すアップセットを見事に演じてみせた。「こっちにも、Ｊでやっていたというプライドがある」と松田。４回戦に進出し、Ｊ１クラブと対戦する権利を得た。果たして現在ＪＦＬで１４位のＴＤＫ　ＳＣがどこまで勝ち上がることができるのか。是非とも注目したい。

以上

2007.10.07 Reported by 斉藤宏則