10月7日(日) 第87回天皇杯3回戦
仙台 1 - 2 順天堂大学 (13:00/ユアスタ/6,546人)
得点者:117' 岡本達也(順天堂大学)、118' 田ノ上信也(仙台)、119' 岡本達也(順天堂大学)
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今回、10年前の再現を狙う(詳細はプレビュー参照)順天堂大学を迎えて天皇杯の3回戦を戦うこととなった仙台は、直近のリーグ戦からスタメンをCBの渡辺のみ残したメンバー(この渡辺も、リーグ戦次節出場停止という事情がある)で臨んだ。プロ入り7年目にして初めての公式戦デビューとなったGKの萩原など、熱心なサポーターにとっては注目の布陣であり、今後残り8節となった終盤のJ2において、チームを助けることのできる貴重な駒を発掘する上でも、この1戦の価値は決して低くなかった。そもそも「誰が出ても普段と変わらないサッカー」というのが今季の仙台が掲げた目標の一つであっただけに、それを証明する機会でもある。
ところが結果は芳しくなかった。
確かに試合のクライマックスは、最後の3分間に集約されている。しかしゲームを通して見た印象では、戦う場所の違いこそあれ仙台と同じく自分たちのリーグ戦の最中でありながら「Jリーグのチーム相手にどれくらいできるかという楽しみを持って」(順大・吉村監督)並々ならぬ決意でこの一戦に臨んできた順大に、仙台は大半の時間を圧倒され続けた。(出場した選手個々の話ではなく)クラブとしてのこの一戦に対するモチベーションの違いが、そのまま結果に出たか。
立ち上がりから順大が活きの良さを見せる一方、大きくメンバーを入れ替えた仙台はどこかチグハク、セットプレー以外でチャンスを作れない。田ノ上、富田ら、トップでの出場時間も長い選手たちは落ちついたプレーを見せ、これまで機会をあまり与えられなかった選手の中でも例えば大久保などは、持ち前の裏へ抜け出すタイミングの良さで後方からのボールをよく引き出していた(たとえ順大が守りを固めた際に中央へと寄るところがあり、サイドにスペースが空きやすい状況だったとしても)。だが何人かの選手は、明らかにリズムに乗れないままに、判断の遅さ、またはそれに起因すると思われるミスを連発し、順大が狙っていた前からのプレスの餌食となった。
中盤で危なっかしいプレーが続いたことで、仙台の「ボール動かし」に怯えの影が。仙台は結局、後半に入るまで、ペースを順大から取り戻せなかった。
そして皮肉にも、仙台が順大に対して脅威を与えられるようになったのは、ベンチに配していた「主力メンバー」(本当はこういう書き方をしたくないのだが…)をピッチに送り出した後だった。65分に同時投入された中島と梁は、それぞれ大学生相手に各の違いを見せる。梁が判断と球離れの良さを活かしてリズムを作れば、中島は強引な突破から順大DF人を「個の力」でねじ伏せていく。さらに80分にはボランチに菅井を入れ、試合を決めようとした。
だが、公式戦初出場の萩原が61分に迎えた大ピンチを2つ(岡本との立て続けの1対1を共にファインセーブで凌いだ)防ぐなど奮闘したものの、攻撃では最後まで順大ゴールを割れずに、スコアレスのまま延長へ。現在の延長戦のレギュレーションは、以前と違いゴールデンゴールなしに全後半計30分をフルに戦うもの。3日後に迫った次のリーグ戦(山形戦)のために本来は休ませたかったに違いない中島、梁、菅井に、さらに30分間の超過勤務を強いらせることになってしまった。しかも関口に至っては、元々ケガを抱えていたところに、これで120分ものフル稼働に…
元々運動量で順大はほころびを見せなかっただけに、90分で決めようとした仙台とのガソリン量の差は歴然。延長後半には、仙台の守備が3人しか残っていないところ、順大が6人で攻めあがるという場面すら生まれていた。
そして最後の3分である。この日何度も萩原に決定機を止められていた岡本が117分、ドリブルでするすると左サイドを持ち上がった後に強烈なミドルシュートを決め、ついにこの日の「主役」に。
直後に仙台も田ノ上が決めるが、さらにその直後の119分、完全に足が止まった仙台守備陣を簡単なワンツーで置き去りにすると、ゴール右から持ち込み、ファインセーブ連発の萩原のニアを冷静に抜くシュートで、今度こそヒーローの座を確定させた。
望月監督は、試合を直近に控えた中での取材で当日のメンバーを聞かれると「うちはみんなで戦っているので」という言い回しを使って、特定のメンバーの名を挙げるのを拒む。
「みんなで戦う」。思えばこの言葉には様々な意味があると思うが、今回の天皇杯を例に挙げれば、なかなか出番を与えられない選手たちの力でこの試合を制し、リーグ戦で疲れた選手たちを休ませるということも、広い意味での「みんなで戦う」という意味だと、私は考える。
結果だけ見ればそれは叶わなかった。だが萩原など、この試合で価値を再評価された選手もいないわけではない。彼だけでなく今日出場した他の選手たちも、この先のリーグ戦を戦うチームを助けるために、今日の悔しさをバネに機会を伺い続けて欲しい。それがひいては、自分のためにもなる。
仙台サポーターにとって、新年の東京に自分たちを連れて行ってもらう夢は早くも潰えた。だが過ぎたことはもうよい。元日の国立が無くなった代わりに、来年の3月に、僕らをJ1へと連れて行ってくれるのならば(と、J2の上位4強のサポーターは、今頃みな思っていることでしょう)。
少なくとも今日、不満の多い120分をスタジアムで強いられた6千人強の仙台サポーターには、それをチームに求める権利がある。
以上
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