10月7日(日) 第87回天皇杯3回戦
水戸 1 - 0 ツエーゲン金沢 (13:00/笠松/1,054人)
得点者:44' 村松潤(水戸)
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「今日はすみませんでした。それだけです。本当に情けない。プロとしてのプレーを見せられなかった」。試合後、ヒーローインタビューに臨んだ吉本は勝利したとは思えないほど辛らつな言葉の数々を口にした。J2よりも2部下のリーグである北信越1部リーグのツエーゲン金沢(以後金沢)を相手に大苦戦。44分にセットプレーから得た1点を守り抜く形でしか勝利することができなかった。「勝てたけど、課題が多すぎる」と小椋が険しい表情で語ったように、水戸にとって素直に喜ぶことができない勝利となった。
立ち上がりは悪くはなかった。水戸が積極的なプレスをかけ、金沢を自陣に押し込み、チャンスを作り出していった。5分にはCKのこぼれ球を拾った西野がシュート。それを塩沢が合わせてネットを揺らすものの、オフサイドの判定。その後も6分に西野、22分に小椋、27分には鈴木良が積極果敢にシュートを放っていった。そして、44分に得た右サイドからのFK。村松がゴール前に蹴りこんだボールがそのままゴールに吸い込まれ、「ラッキーな形」(吉本)ながらも待望の先制点を手にすることとなった。
前半で先制点を得たことにより、金沢が前掛かりにならざるを得なくなることから、後半はさらに水戸に得点のチャンスが増えると予想された。しかし、実際はその逆となってしまった。金沢が前掛かりになったことで水戸のスペースが生まれることとなったが、「両サイドバックが攻撃参加できなかったし、フリーなのに前に出ることができなかった」(前田監督)。サイドバックが積極性を失い後手に回ったことによって金沢の猛攻を引き出すこととなり、そして、サイドで主導権を握れないことで「ボランチがイライラしてしまった」(前田監督)水戸。村松は自陣でパスミスを繰り返し、小椋とビジュも中途半端な飛び出しで守備のリスクをかけてしまうなど攻守のバランスが「チグハグになってしまった」(前田監督)。
水戸の後半のシュートは0。一方、金沢はサイド攻撃からチャンスを作り出し、後半だけで6本のシュートを水戸に浴びせるなど水戸ゴールを再三脅かすことに。79分にはFKから木村龍朗が蹴ったボールが壁に当たり、ゴールへ向かったものの、GK原田のファインセーブに阻まれるという決定的なチャンスも作り出すこととなった。しかし、「相手のミスに助けられた」と前田監督が振り返るように、金沢もゴール前のツメが甘く、水戸のゴールをこじ開けることができずに試合終了。結局、44分のゴールを守りぬいた水戸が勝利を収めることとなった。
勝ちはしたものの、Jの威厳を見せ付けられなかった水戸。とにかく「相手を崩すアイデアがない」と吉本が振り返るように、攻撃に問題を抱えていることは確かだ。ただ、それはここ最近の話ではなく、水戸の積年の問題でもある。そして、それを克服するために今年はアクションサッカーをチームは目指し続けてきたはず。しかし、第4クールに入り、守備的な戦いをすることが多くなってしまっているように思われる。
けがや出場停止でメンバーが揃わないという問題もあったが、それでもチームの重心は後ろに傾きすぎているのではないだろうか。それが前節仙台戦やこの試合において主導権を握りながらも得点に至らないという状況を生み出している一因と考えられる。もう一度、ここで今年のチームがどこに向かおうとして進んできたのかを考えてほしい。
「チームとしてやるべきことが多いことをあらためて感じた」と吉本の言葉通り、勝利以上にアクションサッカーの現在点が分かったことを収穫と捉えたい。リードをすることで積極性を失うサッカーはアクションサッカーとは呼べない。この日つきつけられたアクションサッカーの現実は果てしなく厳しいものだった。だからこそ、選手、監督、スタッフ、そしてフロントが一丸となり、方向性を確認し合い、この壁を乗り越える必要がある。水戸ホーリーホックがどこに向かうのか。3日後の草津戦でその指標をしっかり示さなければならない。
一方、善戦しながらもあと一歩足りなかった金沢。終盤の猛攻はチームの力を見せ付けるものであった。それゆえ、前半の守備的な戦いは惜しまれる。だが、JFLの2チームを連破し、J2チーム相手に互角の戦いに持ち込んだことは選手たちの自信になったことだろう。最大の目標は13日からはじまる全国社会人サッカー選手権大会。そこでJFL参入決定戦でもある地域リーグ決勝大会の出場権を勝ち取りたいところ。「天皇杯で一発勝負の戦い方を学んだので、全社(全国社会人サッカー選手権大会)でそれを出したい」と吉田智尚は意気込みを語った。
試合後、水戸サポーターにコールを贈ったツエーゲン金沢サポーター。エールの交換後にあるサポーターはこう叫んだ。「俺たちのことを覚えておけよ!」。Jリーグ入りに向けて戦うツエーゲン金沢。ぜひとも北陸から新たなうねりを作り上げてほしい。夢がかなうその日まで、ツエーゲン金沢という名と真紅のユニフォームを誰も忘れはしない。
以上
2007.10.07 Reported by 佐藤拓也
J’s GOALニュース
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