10月6日(土) 2007 J1リーグ戦 第28節
甲府 0 - 1 千葉 (16:05/小瀬/14,037人)
得点者:89' 青木孝太(千葉)
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「新居を引っ込めて良かったと思ったでしょ?でも今は青木がいいんですよ」
試合終了直後、甲府贔屓の記者の海に浮かぶ沈黙の小島だった千葉担当の記者が突然振り返って、片方の眉毛を上げながら言った。その言葉通り、77分に新居に代わってピッチに入った青木が、89分に佐藤(勇)のクロスを胸で押し込んで決勝ゴールを決めた。主力選手の何人かが抜ける中、雌伏の時を耐えた千葉はチーム新記録となる偉大な6連勝を達成した。返す言葉は無かったが、自分の見る目の無さと、上がった眉毛を呪いながら首を縦に振った。
新居が交代と分かったときには喜んだが、結果的には決定的チャンスの数、シュート数(甲府7、千葉17)を、勝ち点0と3という残酷な数字に置き換えられてしまった。逃がした勝ち点を数えても仕方が無いが、広島と大宮が敗れていただけに、逃した勝ち点は無くした財布の現金のように脳裏にチラついた。
中盤の主導権争いから始まったこの試合、内容は双方のサポーターを充分に楽しませるものだった。お互いにいい部分を引き出し合って、フェアに戦った。奪ったボールをシュートチャンスに繋げるという点では千葉が優勢だったが、甲府の新人FWの木村は希望を持たせてくれるプレーを見せた。アルベルトとのコンビネーションで作った14分のチャンスに力んで決められなかったのは残念だったが、千葉のDFから小突かれ、嫌がられていた姿に成長を感じた。
ただ、千葉との違いは、縦に入った“くさび”のボールを落としてからのコンビネーション。甲府はそういうシーン自体が少なかったが、千葉はそのボールに対して後ろから湧き出すように選手がサポートに出てくるからマークが遣り難いし、前に向かうパワーとスピードがディフェンスのバランスを崩して、ゴール前の選択肢を増やす。あるスポーツ新聞の千葉担当の記者は「前半は少し持ちすぎというか、もう少し早くシュートを打ってもよかった」と言ったが、サッカーに蔓延る不治の病・決定力不足の部分を除けば、いい攻撃を見せたていたと感じた。その縦のキーマン・FWの新居は、巻のように身体の大きさには恵まれていないが、ディフェンスをブロックする上手さ、速さ、捌きのテクニックで甲府のディフェンスラインに脅威を与え続けた。第29節の浦和戦ではケガに気を付けて、第30節の広島戦で大暴れして5〜6点決めて欲しいところだ。
前節の川崎F戦は2人が退場になって、最後はドン引きするしかなかったために、内容云々を言う試合ではなかったが、甲府は4−4−2に変えたことで自分たちのサッカーを取り戻したと言っていいだろう。サイドの細かいボール回しから作るチャンスも増えた。ゴール前の課題は前からあったので、もう一度それに直面しただけのこと。NASAとCIAが本気になってもこの課題の解決はできない。巡り巡る課題に取り組みながら進んでいくしかない。
心配なのは、甲府の郵便ポストに黄色や赤色のカードがどんどん届くこと。ディフェンスラインを中心に複数の出場停止選手が毎節出てしまうので、層の薄いポジションが出現してしまう。しかし、「(高卒、大卒を含めて)新人選手がどんどん力を出し始めていると思う。若い力でどんどんチームを盛り上げていきたい」と久野が言うように、ここまでベンチやベンチ外にいた選手にとっては大きなチャンス。置かれた環境をポジティブに捉え、挑み続けるメンタリティを持ち続けることがこれからの強みになる。
岡田主審が試合終了を告げたあと、甲府贔屓の記者の海は静まり返った。絶望していたわけではないが、記者席に座っていただけなのに増嶋以上に乳酸が溜まったような気分だった。しかし、ゴール裏のサポーターがすぐにヴァンフォーレコールを始めたことで、のろのろと記者会見場に降りるだけの踏ん切りはついた。
そして監督会見後、千葉の水本から、「甲府はJリーグの中でも特別なチーム」と抱きしめたくなるような言葉を聞くことが出来た。その言葉に甘んじることはないが、不安な気持ちをコントロールし、ヒステリックにならず、甲府のサッカーとスタイル、そして積み上げてきたものを信じる気持ちを充分に後押ししてくれた。
大木監督とともに甲府のサッカーを進化させる夢を、J1というステージで見続けたい。山梨の小さなクラブが挑戦する『日本人が世界で戦うためのサッカー』、『ACLに挑戦』という夢は、降格圏にいても本気で信じることが出来る。だから残り6試合、甲府のスタイルを信じて全力で戦える。
以上
2007.10.07 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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