10月6日(土) 2007 J1リーグ戦 第28節
柏 1 - 2 G大阪 (16:02/柏/10,640人)
得点者:51' フランサ(柏)、64' 播戸竜二(G大阪)、68' 遠藤保仁(G大阪)
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不意の敗戦を喫した柏と、確信的に勝利をつかんだG大阪。ピッチに注がれる刺すような日差しが、秋風吹き抜ける夕暮れへと姿を変えるなか、上位対決のハイレベルな激闘に浮かび上がったのは、小さいながらも、極めて決定的とも言える両チームの地力の差だった。
前半、相手の猛攻をポストに助けられながらも耐え忍び、後半開始早々に李忠成の絶妙なパスをフランサが強烈にゴールに叩き込んだとき、ホーム日立台に足を運んだ柏サポーターの多くは、勝利を確信したことだろう。古賀正紘を出場停止で欠いたことを感じさせず、リーグ最少失点を誇るチームは、これまで何度も同じように相手チームを完封して勝ち点3を積み重ねてきただけに、あとはG大阪の攻撃を零封さえすればミッションは完遂するはずだったからだ。
だが、この日DFラインの中央でバレー擁するG大阪攻撃陣と対峙した柏の小林祐三は、「そんなに簡単な試合じゃない」との言葉を試合後に残している。前線でボールを収める基点となり、そこからの強烈な突破で柏守備陣に脅威を与え続けたバレーと、その後方に位置する家長昭博の個人技などでゴールを窺ったG大阪。柏に先制点こそ許したものの、「点を取られたが、焦りはなかった」(寺田紳一)、「先制されたが、引っくり返せると思っていた」(遠藤保仁)との選手たちのコメントが示す通り、チームには揺らぎない自信が充満していた。
一方の柏はといえば、攻撃の中心には常にフランサがいた。劣勢の展開のなか、自らカウンターアタックの起点となり、徐々にホームチームにリズムを与えていく。先制弾も決め、チームを文字通り最前線で引っ張っていくと、アイデアが詰まったプレーを連発して観客の目を釘付けにしてもみせた。しかし、サッカーというのはやはりひとりで勝てるものではない。先制点のアシストこそ記録したものの、シュート0本に終わった李忠成、石崎信弘監督に「ミスが多過ぎた」と名指しで指摘された菅沼実を筆頭に、いつもは溌剌としたプレーを見せてくれる若手陣の停滞したプレーが、チームに暗い影を落としていく。
そんな展開が続いた64分、バレーの負傷退場によって後半開始からピッチに登場していたG大阪の播戸竜二が、同点弾を頭で叩き込む。スピードを活かしてG大阪の前線を活性化していた背番号11は、直前にも同様の形から高い打点のヘディングシュートを放っていたが、この場面できっちりと照準を合わせたかのように、再び迎えたチャンスを逃すことはなかった。すると、G大阪は4分後にも立て続けに好機をつかむ。リーグ戦初先発ながらも強烈なミドルなどでインパクトを残していた寺田が、巧みなトラップからのエリア内への進入で見事にPKを獲得し、これを“職人”遠藤が冷静にきめる。
このとき、柏DFラインには混乱が生じていた。「(1失点目の)クロスを上げられたシーンも、自分たちでファウルだと思って2回止まってしまった。2点目も1回僕がボールを取ったところから、また取られてつながれた」(小林祐三)。それまで身体を張ったプレーでゴールを死守していた柏にとっては、思わず集中が切れたところでの2失点。それはまさに魔の4分間とも言える連続での失点劇だったが、柏の若いDFラインに対し、ここぞとばかりに一気呵成の攻めを繰り出したG大阪の経験が、一枚上回った瞬間でもあった。
そしてさらに、ここからのG大阪の守備の堅さは、柏にとってまさに大きな壁となった。打てども打てども響かない鐘のごとく、どっしりと構えるG大阪を前にして、石崎監督の3人同時交代での4−5−1から3−5−2へのシステム変更という奇襲策も実らず。リーグ最多得点を誇る一方で、守備の堅さでもリーグ上位に顔を出すG大阪のもうひとつの一面を証明するかのように、その後も柏に得点の気配は生まれなかった。残り時間が着々と削り取られていくなか、逆転を許した時点で、G大阪勝利のシナリオは確定していたということだろう。
柏優位から、一転してG大阪勝利の展開となったこの試合。柏のDFラインをかき乱した播戸のプレーが及ぼした影響は確実にあったし、選手も口にしていた攻撃の緩急という部分での差も確実に存在した。だが、柏が絶対に勝てない相手だったかと言えば、決してそうは思えない。つまるところ、勝負を分けたのは柏が見せたミスの多さだった。石崎監督もしきりに嘆いていた「イージーミスが多過ぎる」とのコメントを待つまでもなく、終盤戦で優勝争いを演じる上位チーム相手に、自らリズムを失っているようでは、勝てるものも勝てないのはやはり道理である。
対するG大阪にとっては、タフな試合が続くなかでの貴重な勝ち点3となった。「勝ち点に対するこだわりが強く現れたゲームだった」とは西野監督の言葉だが、その表情に浮かんでいた今後に向けた自信が印象的だった。バレーが(負傷により)戦線離脱となれば大きな痛手ではあるが、「ここのところ自分のリズムを発揮できていなかった」(西野監督)という播戸がゴールを決めたこと、堅守柏を前に選手たちが思い描いた通りの流れで試合を進められたことは、今後も続く厳しい終盤戦への最大の収穫だろう。
試合後、夕闇に吸い込まれていく日立台に響き渡るG大阪の喜びの凱歌。ゲーム終了の瞬間、ひとつ前の席ではG大阪のチーム関係者と思われるスタッフが大きなガッツポーズを繰り返した。柏の勢いは止まった。この時点でそれは間違いない。だが、「トップ3」を目標に掲げた試合から2連敗を喫しようとも、これまでも巻き返しという言葉を体現してきた柏に悲嘆の言葉は似合わない。6試合を残し、3位鹿島との勝ち点差は8。くしくもインターナショナルマッチデーの関係で次節までは2週間のインターバルもある。そして何よりも、この日、全国にそのサッカーをアピールすることとなった柏の名指揮官が、この状況に黙って手をこまぬいているはずはない。
以上
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