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【J1:第28節 広島 vs 磐田】レポート:残留に向けて熱い闘いを見せた広島の前に大きく立ちはだかった川口能活。(07.10.06)

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10月6日(土) 2007 J1リーグ戦 第28節
広島 0 - 1 磐田 (14:01/広島ビ/9,363人)
得点者:83' 成岡翔(磐田)

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 88分、ウェズレイのパスに飛び込んだ柏木陽介は、完全にフリーだった。至近距離からのシュート。しかし、磐田の守護神・川口能活が、絶妙のタイミングで身体を投げ出す。柏木の渾身のシュートは、その川口の身体に当たって跳ね上がった。互いの気持ちがぶつかりあったゴール前の攻防は、川口の鬼神のごとき気迫が、若武者・柏木の想いをわずかに上回った。結果としてこの試合は、川口のゲームとなった。

 広島は前半から攻勢に出た。キーマンとなったのは、左トップ下に入ったストヤノフ。磐田のダブルボランチにプレスをかけるべく、この位置に起用されたストヤノフだが、むしろ攻撃面で輝きを見せた。強いフィジカルでボールをしっかりとキープすると、そこから落ち着いたパスさばきで広島の攻撃を構築する。29分、服部を走らせる素晴らしいスルーパスは、ここしかないというポイントにピタリ。服部のクロスをウェズレイが押し込んだゴールはオフサイドで取り消された。だが、ストヤノフの攻撃センスが輝いたシーンだった。

 ペースを握った広島は、その後も縦に速い攻撃を繰り返し、磐田の最終ラインをゆさぶる。36分、駒野のクロスにストヤノフが飛びこんだヘディングシュートは、枠外にそれたものの、決定的。40分には柏木、41分には佐藤寿人がゴール前に飛び込んだ。しかし、川口は慌てず、落ち着いてしのぐ。特に佐藤のシュートに対して川口の素晴らしいポジションどりがなければ、シュートは枠外にそれなかったはずだ。位置が少しでも後ろであれば佐藤は落ち着いてトラップできたし、詰めすぎていればループを打たれていただろう。目立たないが「ここしかない」という場所にポジションをとった川口の頭脳プレーが光ったシーンだ。

 広島のシュートが外れたことと川口の好プレーによって、何とか失点ゼロに抑えた磐田だったが、このままではまずいと判断した内山監督は修正に着手する。右サイドの太田吉彰を下げて成岡翔を投入。同時に、左サイドの上田康太とボランチのマルキーニョス パラナの位置を入れ替えた。これによって、広島の切り札・駒野友一をマルキーニョス パラナが落ち着いて抑えにかかる。一方、後手を踏んでいた中盤も、上田の運動量と成岡が中に切れ込むことで盛り返した。この修正によって、前半は機能しなかった前田遼一が生き返り、磐田も広島のゴール前に迫れるようになった。ゲームは一気に活性化。互いのゴール前を行き来する激しい展開になった。

 ここからは互いの守備、特にGKの好プレーが光る。広島の背番号1=下田崇が、51分に茶野のヘディングシュートを右手一本でクリア。55分には前田がフリーで放ったシュートを、はじき出す。川口も、65分にウェズレイがゴールエリア付近で連続して放ったシュートを身体を張って跳ね返し、78分にもウェズレイのループシュートを右手を伸ばして防いだ。同年代の名手が互いの誇りをかけて好プレーを応酬する姿は、圧巻だった。

 78分、奮闘したストヤノフがやや運動量が落ちてきたこともあって、高柳一誠と交代する。この交代の後、少し広島の中盤に混乱が見られた。そこを、巧者・磐田は見逃さない。中盤で素早くボールをつなぎ、左サイドで西がキープ。ここで、マルキーニョス パラナが決然とあがり、西とのワンツーから成岡へ。この時、広島の最終ラインにはMFの高柳や青山敏弘が入ってしまい、飛び込んでくる成岡にマークがついていなかった。ダイレクトで放ったシュートは、好守・下田の指先をかすめ、ゴールネットに突き刺さった。

 J1残留を賭けて強い想いを示して闘った広島の前に、日本代表GK・川口能活は敢然と立ちはだかった。凄まじい集中力を随所に見せ、次々と相手の攻撃を跳ね返す姿は、磐田サポーターには神々しく、広島にとっては巨大な石壁のように感じさせた。この日のMVPをあげろと言われれば、ゴールを決めた成岡も素晴らしかったが、やはり川口だろう。

 広島は、これで4連敗。残留争いに足を突っ込んでしまった。しかし、懸案だった守備はここ2試合で大きく改善を見せ、チャンスの質もあがっている。特にストヤノフの創造力と身体の強さは、広島の新しい武器となる可能性も感じた。この日の敗戦にも「続けていけばいい。大丈夫、信じているから」と戸田和幸が語るように、選手の気持ちは折れてはいない。全員で闘うスタイルがここにきて身を結び始めつつある広島にとって、喉から手が出るほど欲しいのが「勝利をつかむための小さなきっかけ」だろう。

以上

2007.10.06 Reported by 中野和也
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