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●準決勝 第一試合
作陽(岡山)1-0 神村学園(鹿児島)
1/6(土)12:10 キックオフ/7,730人/国立
得点者:24' 石崎晋也(作陽)
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本命なき大会と呼ばれている第85回全国高校サッカー選手権。強豪校、名門校と呼ばれるチームが敗れ、しかし、新たな驚きを感じさせるチームもまたいない。そして多くのチームが安定した守備を備えた落ち着いた戦いをする。その実力はどこも甲乙が付けがたい。ゴールシーンが例年よりも少なく感じられるのは、そういった背景が招いた結果だろう。しかし、そんな中、前評判通りの戦いを見せて勝ち進んできたのが作陽高校だった。
「相手の良さを消して自分たちの良さを出すのが作陽サッカー」。野村雅之監督(作陽)が語るように、鍛えられた組織力に裏付けられた対応能力の高さが作陽の最大の持ち味。4−2−3−1をベースにし、状況や相手の出方も実力に応じて、布陣、人、ポジションを変えながらゲームを進めていく。前の4人の攻撃能力が光るが、その攻撃能力に頼るのではなく、ゲームの流れを読み、それを手中に収め、そしてコントロールすることで勝利を得るのが作陽のスタイル。そして準決勝でも、その姿を十分に示した。
「作陽が守ってくるというのは想定していましたので、早いうちに仕掛けようと試合に臨みました」(竹元監督・神村学園)。立ち上がりから前に出るのは神村学園。雨の中の試合、しかもピッチに水が浮いている状況の中、早目に縦にボールを入れて高い位置からドリブルでゴール前へと突っかける。一見すると神村学園が優位に立っているようにも見えた。しかし、作陽は決してシュートを打たせない。そして、流れを読みながら落ち着いてゲームをコントロールする。
そんな作陽が前に出始めたのは10分が過ぎたあたりから。それまでのリスクを犯さない戦い方から、人もボールも動くサッカーへとシフトチェンジ。1トップの桜内渚が受けたボールを、トップ下の宮澤龍二がフォロー。そして宮澤からのパスを受けて、両サイドの濱中優俊と立川雄大が縦に走りこんでいく。そして24分、右サイドで得たFKに宮澤が頭で合わせてシュート。これはGK矢野貴大が弾かれたが、こぼれたボールを石崎晋也が右足で冷静に流し込んだ。
1点を追う神村学園は後半に入ると4−4−2の布陣を4−5−1へ変更。中央に人数を置いてサイドからドリブルを仕掛けてクロスボールを送り出す。これを見た作陽も布陣を4−1−4−1に変更。やや、守備的に配することでゲームに落ち着きを与える。力強く、ゴリゴリとドリブルを仕掛ける神村学園の攻撃が作陽を押し込む時間帯もあったが、ほどなく作陽が試合をコントロール。縦に入れてくる神村学園の攻撃を封じ込めてしまった。
得点差は1点。しかも雨の中での試合は、いつアクシデントが起こるか分からない。それでも作陽は、1点で十分と言わんばかりにゲームをコントロールしながら時間を使う。引いて守っているわけではない。チャンスと見れば積極的にゴール前へと飛び出していく。リスクを全く犯さないわけではない。高いラインとコンパクトなゾーンをキープして、しっかりとボールをつないで前へ運ぶ。しかし作陽のポイントを抑えた戦い方に、攻め手を封じられた神村学園は閉塞感が募るばかりだ。
結局、このまま試合は1−0で終了。作陽は岡山県勢としては初の決勝戦進出を果たした。「元旦に決勝戦まで進んだ岡山湯郷ベル(なでしこリーグ)の下部組織が作陽の女子サッカー部。同じ地域にあるチームが、異なるカテゴリーの決勝戦まで進んだ。これは新しいサッカーの文化が生まれているということで、これも地域の人たちの応援のおかげ。県民、地域の人のためにもいいサッカーをして、いい結果を残したい」(野村監督)。残るはあと1試合。作陽のサッカーで全国の頂点を目指す。
さて、初出場ながら準決勝まで勝ち進んできた神村学園。つなぐサッカーをベースにした攻撃サッカーが持ち味だが、この試合では縦へ、縦へと蹴ってしまうことが多かった。もう少しつなげればの思いも残る。しかし、それは結果論というものだろう。水のたまるピッチ状態を考えれば、大きく蹴りだすのも方法論のひとつ。最後の最後まで力の限りにボールを追い、ゴールを目指す姿勢は十分に示した。力は出し切ったといっていい。
「正直に言って大会に入る前は、ここまで来れるとは全く予想していなかった。それが1戦、1戦戦っていく中で、子供たちが非常に逞しくなっていくのを感じた。選手には感謝している。それと、選手権大会を経験した者が、その良さを伝えていかなければいけない義務がある。この試合を国立でやったことで選手たちがどう変わっていくのか、私はそれを楽しみにしている」(竹元監督)。神村学園の歴史は始まったばかり。来年の大会では、もう一回り大きくなった神村学園を見てみたい。
以上
2007.01.06 Repported by 中倉一志
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