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【第85回高校サッカー:準々決勝 駒沢会場レポート】静寂の前半。激動の後半。策士同士の対決は作陽が制す。第二試合は、攻めに出た堅守の広島皆実。盛岡商業の決定力に沈む。(07.01.05)

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●第一試合
作陽(岡山)3-2 静岡学園(静岡)
1/5(金)12:10 キックオフ/4,844人
得点者:52' 小室俊之(作陽)、57' 枝本雄一郎(静岡学園)、58' 小室俊之(作陽)、62' 宮澤龍二(作陽)、74' 伊藤達也(静岡学園)
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静岡学園の井田勝通監督は、4バックでスタートさせた前半を評して「機能せず、全体的に作陽のペースになってしまった」と悔やんでいた。ただ、それは作陽の3トップを抑え込む事を意図して採用した陣形による印象であり、その結果として0-0で終えた前半は個人な意見を言わせてもらえれば悪くはなかった。なぜならば、対する作陽が特に前半に取っていた作戦。つまり最終ラインで奪ったボールをつなぐのではなく「クリア」させていたからで、作陽もまずは失点しないという作戦をとっていたのである。ただしその一方で作陽の最終ラインは積極的なラインコントロールでコンパクトな中盤を創出。窮屈な戦いを強いられた静学攻撃陣は、決定機を作ることができなかった。そうした相手を圧倒するのはそう簡単なことではなく、共に守備的に試合をスタートさせたという背景を考えれば、0-0というスコアは両チームにとって悪いものではなかった。

前述の通り井田監督にとっての前半は不満のたまるものだった訳だが、機能不全を起こしたチームに命を吹き込もうと施したのが、ハーフタイムに行った4バックから3バックへの変更だった。しかしこれによって静学は少々の混乱に陥る。キャプテンでCBの小坂翔が「後半に3枚にして対応が曖昧になってしまいました」と振り返るバイタルエリアでの守備の甘さはシステムの変更に起因していた。

試合が動き始めたのが52分から。作陽の攻撃の核である宮澤龍二からのラストパスを受けた小室俊之がGKのポジションを確認し、ファーポストへめがけてよくコントロールされた技ありのシュートを流し込んで作陽が先制する。しかしその5分後に静学は、後半に左サイドバックから中盤へとポジションを代えていた枝本雄一郎が同点ゴールをねじ込んだ。井田監督にしてみれば、フォーメーションを代えたことで生まれたしてやったりの同点ゴールだったと言えるが、悔やまれるのは1点を奪ったことで攻撃への過剰な自信が芽生えてしまったことだった。小坂が悔やみながら振り返る。「1対1になった時はいけると思って前がかりになりました。守備から入るという基本に戻るべきでした」

作陽はケガで万全ではない村井匠を後半から投入。静学陣内でボールをキープし、攻撃の形を作っていたが、その村井が濱中優俊へとつなぎ、最後は小室が豪快に静学ゴールを突き破る。このゴールによって作陽は、同点に追いつかれたわずか1分後に1点のリードを取りもどす事となった。リードを許した静学は同点ゴールを狙うあまりリスクマネージメントに甘さを残す攻撃を仕掛けざるを得ず、さらに62分に宮澤に決定的な追加点を許してしまった。

74分に伊藤達也のゴールによって1点差へと追いすがった静学だが、時すでに遅し。そのまま1点のリードを守り切った作陽が、国立へのチケットを手にした。


●第二試合
広島皆実(広島) 0-1 盛岡商(岩手)
1/5(金)14:10 キックオフ/5,607人
得点者:'68 千葉真太朗(盛岡商)
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3試合連続無失点の堅守は、3試合無得点と攻撃を沈黙させて達成されていた。境を下した三回戦の試合後「申し訳ありません」と口にしていた鯉迫勝也監督は、その境戦後に「どうやって点を取るのか、子供たちに話をさせたいと思います」と口にしていた。鯉迫監督によると、皆実は選手たちが自主的に話し合い、そして目の前の課題を解決するチームになっていたのだという。そして準々決勝を前に話し合いによって出た結論が「今日は中盤から攻撃していこう」(猿澤亮)というものだった。

 これまでとは違い、積極的に攻めにでた皆実に対し、スペースという形で攻めの糸口を与えられた盛岡商業がチャンスを生み出していく。前半のシュート数こそ5対4と皆実が上回っていたが、より決定的な場面を作っていたのは盛商だった。しかし、その絶好機をミスでふいにし続けた盛商に1点が重くのしかかっていた。

「後半の立ち上がりから苦しみましたが、そこで踏ん張れました」と胸を張ったのは盛商キャプテンの藤村健友。「押されている状況でも頑張れた。前半にもう少し決めてくれてれば後半楽になったんですが、それは仕方ないし耐えようと話していた。1点でいいから取ってくれと話していた」と言葉を続けて、先制機を逸し続けた重苦しい時間帯を振り返った。

皆実には3試合連続でPK戦を制してきたGK増田卓也がいる。盛商にとっての0-0の重圧は皆実にとっての希望だとも言えた。しかし彼らは意地と誇りを胸に失点のリスクを背負って攻め続けた。皆実を最後尾から支え続けてきたGK増田は「PK戦は考えていませんでした。まずは80分で勝つことを考えていました」と口にすると「攻撃をすると言われていたので、ピンチはあると思っていました。それを防ぎ切れれば大丈夫だと思っていました」とゲームプランを振り返り、チーム全体が同じベクトルを持って戦っていたことを明かした。
4試合連続0-0によるPK戦が見えてきていた後半68分。その瞬間は訪れた。盛商は右からのクロスを途中交代出場の大山徹が頭で落とす。そこにフリーで抜け出した千葉真太朗は、増田との1対1で落ち着いてゴールへと流し込んだ。皆実にとっては、4試合308分目にして初めて喫した失点であり、奪われたリードだった。

ぐっと勝利へと近づいた盛商は、セットプレーにだけ気をつけていれば問題のない状況を手にしたが、皆実はそのセットプレーで同点ゴールを狙った。後半ロスタイム。土壇場で手にしたCKのチャンスにGK増田が攻めに出る。

「チャンスだったので、とにかく点がほしかった。(サッカー人生で)初めて上がりました。みんなからも言われましたし、自分からも行こうと思いました」(増田)。正確なボールが増田をとらえたかに思えたが、寸前で盛商DFがクリア。この試合最大の見せ場は、盛商守備陣に軍配が上がった。3分のロスタイムが経過して勝者を分ける笛が吹かれると、皆実の戦いが終わりを告げた。

来年定年を迎えるという盛商の齋藤重信監督にとって初めての国立の舞台はどのようなものになるのだろうか。「監督はこれまで一度も国立のピッチに立ったことがなかったので、昨日、国立に先生を連れて行こうとボクが言いました。ただ、国立に行くだけじゃなく、優勝をプレゼントできたらと思います」と笑顔で話す藤村の思いは通じるのだろうか?
一方、皆実は「守備は全国でもトップレベルだと思う。攻撃が足りなかった」と猿澤が振り返ると「来年の目標は得点力を上げることだと思います。そこを修正していきたいです」と増田。引退する3年生から「来年があるんだから、来年は優勝しろ」と言われたという増田だが、来季の皆実はどのようなチームになるのだろうか。強豪チームがひしめく中国地方の中で、新チームがどう成長していくのか。楽しみにしたいと思う。

以上

2007.01.05 Reported by 江藤高志
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