9月23日(土)J1 第24節 広島 vs 大宮(16:00KICK OFF/広島ビ)
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守る、守る、徹底して守る。
極端に守備的戦術を敷き、大宮に7割以上のボール支配率を許しながら、カウンターでもぎとったたった一点のゴールを亀の甲羅のような堅い守備で、広島は守り切った。この5月3日の試合は、広島の今季初勝利でもあった。
あれから4ヶ月。広島は監督がミハイロ・ペトロヴィッチ氏に交代し、彼による徹底した意識改革を断行中だ。破壊されたサッカー選手としての自信を取り戻し、闘う意欲と意志をチームに再び植え付けようとしている彼の努力は、この4試合で2勝1分1敗と確かな実を結びつつある。しかもその相手は、鹿島・磐田・名古屋・浦和と個々の能力に優れたチームたちだけに、評価してもいい戦績だ。
ただ、ペトロヴィッチ監督が当初掲げた「攻撃的なサッカー」の達成度を考えると、それはまだまだ発展途上だ。シュート数こそ、就任前の9.75から12.27にと増えている(※数字は1試合平均)。が、実感値として、それほど攻撃的になった感覚はない。戸田和幸は「決定的に崩したシーンはそれほどなかった」と浦和戦後に語っていたが、それは浦和戦だけでなく、現在のチームの問題点そのものだ。
今の広島の守備は、最終ラインの押し上げが少なく、ボール奪取ゾーンが低い。そのために、有効なハーフカウンターを機能させることができるが、攻撃はどうしても遅攻が多くなっている。いかに能力の高い2トップであっても、彼らだけで相手がつくる守備ブロックを崩すのは難しい。2列目・3列目の選手が前線にどんどん絡んでいかなければ、DFは混乱しないのである。これは、ペトロヴィッチ監督が目指す攻撃の形なのだが、実際にはその動きは少ない。相手DFの前でボールを回すことが多く、シュートレンジまで来ているのにシュートが打てない状況に陥っている。
中盤でのパス回しにミスが減り、最終ラインに技術のある選手たちが並んだため、ビルドアップはうまくいき始めた。したがって、ボール支配率があがっているのは確かだし、そうなれば以前よりもシュート数が増えてくるのは必然。だが、その中身はまだ乏しく「打てそうなのに打てない、入りそうなのに入らない」というイライラした状況が、今の広島の現状なのである。
18歳の柏木陽介、20歳の青山敏弘など、若手を積極起用してチームを活性化し、戸田や森崎和幸をDFにコンバートして守備を安定化させた(ここ4試合での平均失点は0.75)ペトロヴィッチ監督の手腕は確かだ。しかし、「監督がやろうとしているサッカーをまだ表現できていない」と森崎浩司が言うように目指すべき「攻撃的サッカー」実現は、まだ道半ばだ。
ただ、広島が右肩上がりで成長していることは間違いない。一方の大宮はと言えば、4試合で1分3敗という数字が証明するように、今は苦しみの中にある。特にこの4試合で喫した失点12は、いかに相手に川崎Fや浦和という強豪が含まれていたとはいえ、それまでの平均失点1.42を考えると異常だ。
前節の甲府戦でも大宮の特徴であったはずの組織的かつ連動した守備は影を潜め、甲府のアグレッシブなサッカーに為す術なく失点を重ねてしまっていた。終了間際に得点を重ねたとはいえ、大宮の良さはほとんど発揮できなかったと言っていい。そのチーム状態の悪さに加え、今節は守備の重鎮・トニーニョと中盤の構成力に長けた小林慶行の二人が出場停止。小林大悟や波戸康広、奥野誠一郎のスタメン復帰も有力ではあるが、戦力の低下は否定しがたい。
だが、こういうネガティブな状況を逆に利用して、チームに新しい息吹を吹き込むこともできるはずだ。特に、大宮の守備を6年間支えてきたトニーニョ不在が、今の停滞期をブレイクし新しい大宮のディフェンスを構築するきっかけとすることも、やり方によっては可能たろう。そこは三浦監督の手腕に注目したいところだ。
ただ、守備の再構築を果たすという目的と広島というチームの特性を考えれば、大宮はしっかりとブロックを固め、守備優先の闘い方を選択してくる可能性が高い。特に、広島の2トップと両サイドはJ屈指の能力を持っているだけに、マークは厳しくなるだろう。J1残留争いから抜け出せていない広島にとっては、その大宮のハードな守備を崩し、鋭く速いカウンターを抑えて勝点3を奪いとることは、至上命題といえる。
以上
2006.09.22 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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