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【ヤマザキナビスコカップ 横浜FM vs 鹿島 横浜FMレポート】アウェイゴールに決勝進出を阻まれた横浜FM。モチベーションを再構築し、残りのリーグに悔しさぶつける。(06.09.21)

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9月20日(水) 2006 ヤマザキナビスコカップ
横浜FM 2 - 1 鹿島 (19:00/日産ス/12,583人)
得点者:'18 上野良治(横浜FM)、'77 柳沢敦(鹿島)、'82 松田直樹(横浜FM)
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「てっきり、延長かと思っていたよ」。
試合後のミックスゾーンで、そう言いながら出てきたのは、奥大介。ゲームは2-1で、横浜F・マリノスの勝利。第1戦の結果(0-1)と合わせても、1勝1敗で得失点差、総得点ともイーブン。だが、今年からの新方式『アウェイゴール』の恩恵で、決勝に進んだのは、鹿島アントラーズだった。
 
確かに、昨年までの方式であれば、延長戦(決着がつかなければPK戦)に入っていた。立ち上がりから恐ろしいまでの集中力を攻守に発揮した横浜FM。18分に、上野良治の力強くも美しいミドルシュートで先制。82分には、倒れこみながら泥臭く押し込んだ松田直樹の執念のゴールで2-1。しかし、その5分前に許した、たった一つのゴールで涙をのんだ。
 
9月2日におこなわれたカシマスタジアムでの準決勝第1戦。頭部から出血して倒れた吉田孝行を尻目に、プレーは続行、そして痛恨の失点。味方の負傷に、一瞬途切れた集中力。言い訳にはしたくはないが、この悔しさはプレーで晴らさなければならない。アウェイで無得点に終わっただけに、「まずは失点をしないで、2点差以上をつけることが条件」と、水沼監督以下、チームとして全員がやるべきことは痛いほど分かっていた。
 
キックオフ直後から、横浜FMは攻撃的にゲームを進める。中盤で激しく奪って、サイドへフィード。ボランチの一角、河合竜二が積極的にサイドや前線に顔を出す。同じくボランチの上野は絶好調。中盤で相手をいなし、ボールを効果的に散らす。相棒の河合は思い切って攻撃に参加できた。1分、6分と獲得したコーナーキック。栗原勇蔵が、そして河合が高さと強さを活かしてヘッドを叩きつける。守っても、GK榎本哲也が鹿島・深井のドリブルシュートを右手で防いだり、嫌な裏への浮き球に飛び出してセーブする。そして、松田は左右のサイドに精度の高いフィードを送り、チャンスを広げていく。
 
ゴールが生まれたのは、そんな松田のフィードから。左サイドでドゥトラ、山瀬功治のパス交換からドゥトラがクロス。ゴール前に飛び込んだ奥には合わず、クリアされるが、その先には上野が待っていた。ペナルティエリアの外から右足で放ったシュートは、GK曽ヶ端の手を弾いてネットに突き刺さった。上野はゴールの5分前(13分)にも、同じようなミドルシュートを放っている。「いいイメージで打てた」という上野のスーパーゴールは、1点という得点以上にチームに活力をもたらすかのように思われた。
 
「前半は狙い通りだったが、1点取った後に少し消極的になってしまった」と水沼監督が言うとおり、早い時間帯の先制にも関わらず、前半で2点目が奪えない。それでも、前線の選手をはじめ、前からのプレスが効いて、鹿島に自由な攻撃をさせない。ややもすると、集中が切れかける後半開始の時間帯、鹿島のリズムに合わせてしまう場面もあったが、榎本哲の判断のいいキャッチにも助けられた。それでも、2点目が遠い。61分、相手ボールをダッシュ一番、ドゥトラが奪い、上野とのワンツーでクロス。ゴール前、こぼれて最後はドゥトラがシュートを打つも、利き足とは逆の右だった。
 
その後、奥に代わり狩野健太、大島秀夫に代わりハーフナー・マイクを投入した横浜FMだったが、マイクの交代直後に落とし穴は待っていた。77分、鹿島のコーナーキックは右のタッチライン際。フェルナンドの上げたクロスの先にするすると柳沢が飛び出した。フリーで叩き込んだヘディングシュートはあっさりとゴールを割った。マイクの投入からわずか1分後。柳沢へのマーカーが曖昧なまま、許したゴールは1点以上の重みを持った。
 
決勝進出のためには、2点以上が必要。だが、残り時間はまだある。ゲームが再び白熱したのは、ここからだ。82分、田中隼磨のクロスをマイクが194センチの高さで落とす。山瀬功が放ったシュートはGK曽ヶ端が弾き落とす。しかし、ここに飛び込んだ松田が倒れながらも、最後は右足のかかとでGKの飛び出したゴールに押し込んだ。「どこに当たったのか、全然覚えていない」という松田の魂のゴール。しかし、88分に曽ヶ端がパンチングで飛び出したのを見て放ったループシュートは力なく左へ逸れていった。「気持ちは入っていたけど、技術がね。アレを決めていたら」と唇をかんだ。
 
終わってみれば、したたかにアウェイゴールの1点を狙い続けた鹿島に軍配が上がった。だが、最後まで観客を魅了した横浜FMの選手たちは胸を張ってもいい。サポーターの声援、コールも終わることなく鳴り響いていた。
 
「やるせない気分」と、DF中澤佑二。キャプテン松田も「皆、この試合に懸けていたからね」と悔しさをにじませる。この試合に限って見れば、内容もスコアも明らかに自分たちが上回っていたのに…。冒頭の奥の言葉は、単なる勘違いではないだろう。「まだまだ俺たちはやれたのに」という気持ちが込められていたに違いない。くすぶる気持ちはリーグ戦にぶつけたいが、モチベーションの再構築が難しいところ。だが、ベスト4に終わったヤマザキナビスコカップ、リーグ戦は中位、という状況は昨年とまったく同じだ。「今日のようなサッカーを続ければ、結果はついてくる。上位陣に俺たちの強さを見せつけたい」という田中隼の思いは、チームに浸透しているはず。横浜FMの本当の戦いが、これから始まる。

以上

2006.09.21 Reported by 近藤泰秀(インサイド)


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