9月20日(水) 2006 ヤマザキナビスコカップ
横浜FM 2 - 1 鹿島 (19:00/日産ス/12,583人)
得点者:'18 上野良治(横浜FM)、'77 柳沢敦(鹿島)、'82 松田直樹(横浜FM)
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苦しい試合だった。直前のリーグ戦ではすばらしい出足の鋭さで好調・清水を圧倒する試合を披露した鹿島だったが、この試合では別のチームかと思うほど、チームは全体的に運動量が少なく、やりたいサッカーができなかった。それでも決勝に進出したのは鹿島だ。この試合は1−2で敗れてしまったものの、2試合の合計スコアは同点。柳沢のヘディングシュートが貴重なアウェイゴールとなり、久々のタイトル奪取をかけて決勝進出の切符を手にしたのである。
試合を通じてペースを握っていたのは横浜FMだった。そこには2つの理由がある。
まず第一はミスの多さだ。特に前半、鹿島は信じられないようなパスミスが多く、しかもそれが連続して続くという最悪のパターンだった。そのせいで、いつものようなポゼッションを基本とするサッカーが展開できない。
「良いかたちでボールカットしたのに、それをつなげなくて相手に簡単に渡してしまった。相手にチャンスを渡していたみたいだった」という試合後の深井のコメントが象徴的だろう。バックライン、ボランチで奪ったボールがそのまま相手に渡ってしまうため、鹿島の選手たちは前線に飛び出すことができなくなった。それにより、パスを受ける動きが減ってしまい、さらにパスミスを誘発する悪循環を産んでいたのである。パスミスが直接失点につながることはなかったが、何度となく決定的なチャンスを作られてしまっていた。
また、苦しい試合になってしまった2つめの原因として、相手の左サイドを抑えることができなかったことがある。横浜FMの布陣は第1戦と同じ3−4−2ー1。しかし、前線の選手の顔ぶれはまったく違った。1戦目は、1トップに久保、2シャドーに狩野と吉田だったのに対し、この2戦目では、1トップに大島、2シャドーに奥と山瀬が起用されていた。この2シャドーの動きに鹿島は手こずる。1トップの大島は、センターバックの岩政と青木でマークを受け渡すだけで守れるものの、最終ラインとボランチのあいだを自由に動き回る山瀬と奥を、誰が捕まえればいいのか明確にできずに混乱してしまう。特に鹿島の右サイドに山瀬か奥がポジションを取ったとき、内田が対応しなくてはならないため、そこにドゥトラが入ってくると、マークは野沢が請け負わざるを得なくなる。結果として、鹿島は自陣に押し込まれることになってしまった。
前半の失点シーンも、左サイドをドゥトラに突破されたことが発端だった。中央への折り返しは跳ね返したものの、リバウンドがゴール前でかまえていた上野に渡り、ミドルシュートで先制点を決められてしまった。
失点後も、鹿島のサッカーは落ち着きを取り戻せない。複数の選手が意図を通じ合わせるパス交換はほとんどなく、サイドライン際で壁パスを試みるも、横浜FMの松田や中澤に簡単に対応されてしまう。選手の誰もが悪い流れを感じながらも、パスミスから来る運動量の低下という悪循環を断ち切れないまま試合は進んでいった。
こうした苦しい試合展開の中で、悪い流れを変えるプレーをしたのは後半途中出場した興梠だった。鹿島ゴール前まで何度も迫っていた横浜FMは勝負を決めに来ていた。ディフェンスラインの選手も再三攻めあがる。しかし、興梠はそれこそチャンスと思い、虎視眈々と逆襲の速攻を狙っていた。「むこうのディフェンスのひとたちもかなり飛び出してきてたんで、そういう人たちが飛び出てきたらチャンスかなと思っていた」。ディフェンスラインとボランチの間でボールを受け、決定的なチャンスを演出し、鹿島に得点の雰囲気をもたらす。
そうして迎えた77分。鹿島に貴重なアウェイゴールがもたらされる。中盤でのボール争いで身体を張ってボールをキープしたフェルナンドは右サイドでFKを得ると、自らゴール前に蹴りこんだ。普段のキックよりふわりとした弾道であがったセンタリングは、フリーになっていた柳沢の頭にピタリと合う。待ち望んだエースの得点で鹿島が同点に追いつき、さらに横浜FMをあと2点以上とらないと決勝に進出できない状況に追い込んだのである。先のリーグ戦に先発せず、このヤマザキナビスコカップにかける思いは強かったのだろう。試合中も、ミスを繰り返す若手選手を励ます姿が何度も見られた。
「今日みたいな試合をしていては、次、勝つことは厳しい。」
柳沢だけでなく、試合後の選手たちに笑顔は少なかった。決勝の相手は2連覇を狙う千葉だ。10個目のタイトル獲得まであとひとつとなった。
以上
2006.09.21 Reported by 田中滋
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