9月2日(土) 2006 ヤマザキナビスコカップ
鹿島 1 - 0 横浜FM (19:00/カシマ/10,602人)
得点者:'22 フェルナンド(鹿島)
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鹿島のゴール付近、DF岩政と競り合って激突し倒れたFW吉田孝行は、仰向けのまま、自分の左側頭部を触るとその手には血がべとついていた。「手を上げて助けを求めた。頭なので、止めてくれると思っていた」。だが、ピッチではプレーが続く。鹿島の先制ゴールは、その数十秒後、吉田は天を仰ぎながら味方の失点を知ることになった。
DF那須大亮は、懸命にプレーを止めるよう、審判にアピールした。「(吉田が倒れていたので)アピールしたんだけど、気づいてほしかった」。MF塩川岳人も「孝行が倒れているので、出してほしかった」と憤りを隠さなかった。だが、選手の状態を危険と感じ、プレーを続行させるかを判断するのは、レフェリーの権限。吉田との激突で自らもその後、包帯を巻いてプレーした鹿島の岩政は言う。「向こう(横浜FMの選手)もプレーは続けていた。ウチはルールにのっとってプレーした」。
事実、プレーは続けられたのだから、失点の責任は集中力を欠いた側に大きいのは当然。結果的にはこの1点が勝敗を決することになった。しかし、第2ラウンドが終わるまで、この1点は『決勝点』ではない。「まだ半分。何としても決勝に進んで、タイトルを絶対に取る」と主将・松田直樹。「ウチはあくまでフェアプレーで勝つ」。早くも、チームは次のホームにおける第2ラウンドに向けて切り替わっている。
22分に先制点を許す直前、ペースをつかみかけたのは横浜FMのほうだった。19分、セカンドボールを河合が拾って上野につなぐと、流れるように右の塩川へ。塩川のタイミングのいいクロスに吉田がフリーで合わせたが、ヘディングはクロスバーを掠めた。それまでも、両チームが互いにボールの出どころをしのぎ合う展開から、早くゴール前まで運ぼうという意識は強かったが、ラストプレーで精度を欠いてしまっていた。
ショックな形で失点した横浜FMだが、その後の切り換えは早かった。特に、後半は攻守ともに高い集中力から、何度もいい形をつくり出していた。水沼監督のハーフタイムの指示は明確だった。「あれは忘れろ」と。ただ、一方では「このまま黙ってやられるのか、お前たちは」と、選手たちの闘志に火もつけることを忘れない。司令塔・上野良治も前半途中から接触プレーで右足首を腫らしながら、残る15分ほどを気力でプレーした。
その上野も前半限りで交代。代わって後半開始からFW大島が投入され、前線の起点を増やした。59分には右で大島が起点となり、久保を経由して左・ドゥトラからのクロス。走りこんだ大島のヘッドは、わずかに左へ逸れた。2分後には左のコーナーキックが逆サイドにこぼれて、河合が右足アウトで狙ったが、GKにセーブされてしまった。鹿島も押し込まれる展開から、徐々にファウルを冒す回数が増える。GK曽ヶ端のゴールキックに大島がプレッシャーをかけ、遅延行為からイエローカードも出てしまった。
ついにはゴールを割れなかった横浜FMだったが、最後まで攻める気持ちが衰えることはなかった。水沼監督に代わって、チームには明らかに変化が感じられる。一つには、攻撃が必ずシュートで終わるようになったこと。また、松田の言葉が象徴するように「ミスをしても、全員でカバーし合う意識が強くなった」ことも大きい。そして、以前だったら不本意なジャッジから自滅した(5月21日、ナビスコ浦和戦のように)チームが、逆に悔しさを力強いプレーに変えられるようになった。この敗戦がチームにとって、成長の肥やしになれたかの証明は、20日のゲームで存分に見せてくれるに違いない。
以上
2006.09.03 Reported by 近藤泰秀(インサイド)
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