9月2日（土） 2006 J2リーグ戦 第37節
柏 4 - 0 湘南　（19:04／柏／7,801人）
得点者：'47 北嶋秀朗（柏）、'86 ディエゴ（柏）、'89 平山智規（柏）、'89 鈴木達也（柏）
----------

今や他のチームやプレス陣の間でも名物とばかり注目されている、柏のホーム戦勝利試合後に観られる恒例のパフォーマンスである「勝利ダンス」。

しかしその「勝利ダンス」と共にセットになっているもので、密かに目にする光景がある。それは、「勝利ダンス」や「ヒーローインタビュー」を終えてピッチの上でクールダウンする選手達ひとりひとりに握手を求め向かうフロントのGMの姿である。何かメッセージを伝え移すかの如く、しっかりと交わされている握手である。

今節の柏は４−４−１−１とトップ下にディエゴ、両サイドにMF平山、FW鈴木達也を配する布陣で９位の湘南をホーム・日立柏サッカー場に迎えた。
開幕戦（vs湘南＠柏）での悔しい引分けの思いと、前節の愛媛FC戦で原点に戻る意識で臨み３−１と勝利しながらも、冷静に受け止めた課題を克服したいとする思いから、90分間柏の持ち味『らしさ』が見られた。「前半から、チーム全体で前線からのプレスをかけて動けた（FW鈴木達也）」し、一人一人の守備の意識も徹底され、「守備のバランスも１１人みんなの連動が良かった（GK南）」。湘南に押しこまれる場面も全員の集中力を保持し続けたことで、後半の大波のような４得点を生んだ。最後の駄目押しのFW鈴木達也の今季初ゴールは、チームもサポーターも待ち望んでいたものであり、スタジアム全部が歓喜の波で包まれた。

一方の「前半は凌いでいたし（MF中町）」スコアレスで折返した湘南だが、後半２分MF平山のFKをヘディングで決めたFW北嶋の先制点が、精神的ダメージを大きくし「決めるべきところで決めきれず悔やまれる（FW石原）」後悔のまま、ロスタイムも含めた最後の７分間で柏に勢いを与えてしまった。「パスがゴールまで繋がるのが凄い（DF須田）」と言わせ、「（北嶋の予定だったが）怪我をした山根と代えてカウンターを狙える形に李忠成を入れた（石崎監督）」采配も的中した。今日の柏のゴールした選手が前線のFW北嶋、鈴木達也、MFディエゴ、平山という顔ぶれであるのも、「全員で守備して攻撃する」柏『らしさ』で「プレッシングサッカー」を取り戻しつつあることを表わしているようだ。

前節から今節までの間に行われた練習試合（vs大宮）で好調なアピールをしていたDF蔵川が「いろんなポジションをやってくれて（石崎監督）」、途中出場の李忠成やフランサら「１６人全員で戦ったことが今日の勝利に繋がった（石崎監督）」首位の柏。
監督と、サテライトも含めた選手全員に、サポーターに、そしてフロントもがひとつの家族になって戦っていることが、いくつかの波を越えながらも現在の柏の結果を生んでいるように思う。

第35節（vs東京V）の大敗試合後に前述のGMがぽろりと口にしていた。「選手の今季の移籍加入などの登録期限は第３クール最終節（9/13）までだから、フロントとしては第４クールに向けてのチーム作りとして他の選手を探してくる仕事も最終策としては残っているんだよね。でも、今のメンバー全員を信じてこのまま戦い切りたいんだよね」と。

チームの中で、監督や選手サポーターに加えてフロントも思いをひとつに戦っている。その思いがあの選手との握手へと伝わり、チームを原点にリセットさせて柏『らしさ』を感じ起こす１戦となって連勝となった。

「攻撃の時のバランスも考えなければ（菅野監督）」という湘南の反省は、以前の柏の課題でもあった。次節は５位にあがってきた鳥栖戦に向けて「自分達のサッカーを立て直していきたい（MF中町）」とする湘南。

柏との第４クールでの対戦は今季の最終節である。それまでの14試合で互いにチームを信じあうことで、ひとつになって『らしさ』の出せるサッカーをしていけるかが鍵となろう。

第３クール柏の残り２試合は上位チーム、仙台と横浜FC戦である。「下位チームに弱い」と言われた柏が、『らしさ』を取り戻し、少しずつ克服のルートを導き出している。

アウェイ戦でも、恒例パフォーマンスが見られることを期待したい。

以上

2006.09.02 Reported by 脇本 カオル