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【J2:第35節 仙台 vs 横浜FC レポート】驚くべき復調を見せた仙台、我慢と落ち着きのパス回しで横浜FCを終始押し込む。勝ち点3は奪えなかったが、今後に期待膨らむ一戦に。(06.08.24)

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8月23日(水) 2006 J2リーグ戦 第35節
仙台 1 - 1 横浜FC (19:04/ユアスタ/15,239人)
得点者:'39 アレモン(横浜FC)、'58 ボルジェス(仙台)
★ハイライト&会見映像は【こちら】
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前節、アウェー札幌戦での、ブーイングを飛ばされても決しておかしくない内容による敗戦直後の話。仙台サポーターのいたゴール裏で、このような声が上がったという。「ブーイングならいつでもできる。今は我慢しよう」。こうしてブーイングこそ抑えられたが、それでもあの場にいたサポーターは、無様ともいえる負け方を見せたチームに対し、悔しさをかみ殺していた。

今節、仙台は2位の横浜FCを迎え、ホームで勝ち点1を分け合った。試合前からバックスタンドには「勝ち点3以外認めない!!」という激しい檄を記した横断幕が掲げられるなど、敗戦はおろか引き分けすら許さないという空気が漂っていたはずのスタジアム。しかし、試合を終えてピッチを一周する仙台のイレブンに対して、仙台のサポーターは一瞬の静寂の後、万雷の手拍子と共に、心の底からの「ベガルタ、仙台!」コールを送った。もちろん皆、悔しさは抱えている。しかし今日に関して言えば「あの」前節から中3日とはとても思えない素晴らしき戦いぶりが心を打っての、純粋な声援だった。

アウグスト、内田と、横浜FCが主力を二人欠いているとはいえ、前節までのチーム状況を思えば、仙台の苦戦は免れないものというのが、試合前の認識だった。ところが立ち上がりから、仙台は互角以上の戦いぶり。とにかく前線のブラジルトリオにやみくもにボールを送り、そして彼らが囲まれてボールを失うという単調な攻めを繰り返していたこれまでと異なり、この日の仙台は最終ラインやボランチの位置で落ち着いてボールを回し、テンポ良くサイドを変えることで、横浜FCの組織だった守備ブロックを確実に崩していった。しっかりと守備陣を振り回してから前線にボールを入れるため、受けるロペス、ボルジェスも、良い状態でボールを受けられる。

仙台はこの日、中盤で梁が久しぶりのスタメン出場を果たしていたが、パス回しが血流だとすれば、これまで熊林のみだった「心臓」の役割を梁も共に務めたことで、二つのポンプを得た仙台の血の巡りが格段に良くなったといえる。

だが、仙台にとっては好事魔多し。横浜FCは劣勢の中でも、アレモンがサイドに流れて基点となり、右サイドから中に飛び込んでくる崔が絡むことで仙台を脅かしていたが、39分、そのアレモンが粘ってCKを獲得。すると滝澤が放った右CKは、ゴール正面で上手くマークを外したアレモンの足元へ、スライディング気味に足を合わせたアレモンのゴールが決まって、横浜FCが先制点をものにした。

先制されると勝率が一気に悪くなる仙台、43分にはチアゴ ネーヴィスからのスルーパスを受けたボルジェスが、GK菅野と一対一の場面を迎えるものの、抜きにかかったボルジェスは菅野に足でのセーブでボールを奪われ、そのまま前半は終了。悪い時期の仙台ならば、このアレモンの一発で「ショックから心停止」に陥っても決しておかしくはない。しかし、後半に入っても仙台は素晴らしいサッカーを続けた。前半から続けたパス回しが、相手の体力にボディーブローのように効いてきたのか、横浜FCの選手の足が早くも止まり始めたこともあり決定的な場面も増え、ついに58分、同点ゴールが決まる。左45度で持ったチアゴ ネーヴィスから、ゴール正面のボルジェスの足元へタイミングよくパスが入る。立ち上がりからボルジェスに密着マークを行っていた鄭は、前半に一枚警告を受けていたこともあり、ボルジェスのシャツを軽く掴むのが精一杯。鋭い反転で右に流れながら、対角線であるゴール左隅に蹴りこんだボルジェスのゴールで、試合は振り出しに戻る。
さらに仙台は65分、大柴が昨年の最終節以来となる出場を果たすと、左サイドで効果的なポジションチェンジが行われ、後方の磯崎も攻撃参加しやすい状況が生まれるなど、ペースは完全に仙台に傾く。この素晴らしい戦いぶりが、仙台サポーターを完全に取り込み、逆転の期待に沸くユアスタ。

だが決勝ゴールだけは遠かった。71分にはスルーパスに抜け出したボルジェスが打てず、直後のCKでも木谷のヘッドはわずか左へ。76分にはこぼれ球を拾った梁が右に流れながらフリーで狙うもシュートは枠外。88分にはロペスからのスルーパスを受けた菅井がシュートレンジまで持ち込むものの、じっくり狙ったシュートはDFに当たり、GK菅野を脅かすには至らなかった。

アレモンを前線に残し、最低限の脅威を残していた横浜FCにも臆することなく、仙台は最後まで効果的な攻めを見せたものの、試合をひっくり返すことはできなかった。2位と4位の対決は、3度目も勝ち点を1ずつ分けあう形に終わっている。
とはいえ「勝ち点3以外認めない」としていたはずのサポーターも「認めた」、勝ち点3以上の価値を感じさせるほどの仙台の復調には素直に驚いた。

本当によく立ち直った。このサッカーを続け、次節のみちのくダービーで、今度は内容も伴った勝利を上げることが出来れば、仙台はサポーターの失いかけた信頼を「完全に」取り返すことが出来るはずである。
 
以上

2006.08.24 Reported by 佐々木聡
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