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【J1:第17節 福岡 vs 大分 福岡レポート】九州ダービーの屈辱。改めて浮き彫りになった福岡の問題点。(06.08.13)

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8月12日(土) 2006 J1リーグ戦 第17節
福岡 0 - 2 大分 (19:04/博多球/18,205人)
得点者:'11 ラファエル(大分)、'66 松橋章太(大分)
★ハイライト&会見映像は【こちら】
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 筆者の記憶の中では、博多の森のアウェイ側ゴール裏が相手サポーターで埋め尽くされたのは浦和戦を除けば初めてのこと。福岡サポーターを大きく上回る人数と、統制の取れた応援スタイル。キックオフ前には青と黄色のストライプがゴール裏に見事に描き出された。「ここは本当は自分たちのホームではないかと思うことができました」(シャムスカ監督・大分)。サポーターならずとも福岡に関係する全ての人にとって屈辱とも言える言葉にも返す言葉が見つからない。内容も、結果も、福岡が敗れたことを認めざるを得ない試合だった。

 この日の福岡の布陣は3−5−2。佐伯を最終ラインの中央に置いて右に千代反田充、左に川島眞也。WBには中村北斗と布部陽功。トップ下に久藤清一を配置した。基本システムの変更と言うよりは、古賀、アレックスの欠場でパワー不足になったサイド攻撃を補うことが目的。考え方としては、純粋な3バックというよりも、4−4−2の右SBが高い位置へせり出した形。実際、3人の最終ラインは2人のストッパーにリベロという関係ではなかった。

 あくまでも守備よりも攻撃を優先させた形。トップ下を置いたのも、中央の高い位置にボールを預けられる場所を作って攻めに厚みを加えることが目的だった。その狙いにしたがって前に出ることで強引にリズムを掴もうとする福岡。いつも通りに手堅い守備で跳ね返しながら自分たちの時間が来るのを待つ大分。対照的な形で試合を進める両チームの戦いは、序盤戦はこう着状態のようにも見えた。しかし11分。福岡がラファエルのヘディングシュートで先制点を許すと、ここから試合の流れは大きく大分に傾いた。

 前がかりになる福岡の中盤にはバイタルエリアをカバーする者がおらず、両WBも後方のスペースを空けたまま。そのスペースが気になる久藤は思うように攻撃に絡めない。1人、1人は必死になってボールを追うのだが、中盤の連携という意味ではないに等しかった。連携も、バランスもなくした福岡が押し込まれるのは当然のこと。空いたスペースを梅崎に自由に使われ、引いたFWにDFがついていくと、その動きと入れ替わりに中盤の選手に裏へフリーで飛び出される。そして大きなサイドチェンジからサイド突破を許した。

 後半に入っても流れは変わらない。福岡は懸命にボールを追ってはいるものの、全てが後手に回って大分のいいように試合を進められた。そして66分、福岡は屈辱的な形で2点目を失う。大分陣内深いところからつながれたパスは7本。最後はフリーになった松橋にGK水谷が飛び出した後の無人のゴールに流し込まれた。その後も気持ちだけで前に出る福岡だったがゴールは生まれず。76分に田中佑昌が放ったシュートを最後に、守備固めに入った大分の前になす術もなく敗れた。

 組織力と守備を武器に戦った松田前監督と、個人の強さと攻撃に武器を求める川勝監督の違いが鮮明に出た一戦だった。その違いに戸惑いを見せるサポーターも少なくはないが、実は両監督ともスタートは同じところにある。それはFWの得点力に欠けるということ。その中で、点が取れないなら点をやらない戦い方を選択した前者と、点が取れないのなら失点のリスクを増やしても相手より1点多く取ることを選択した後者。それは勝ち点を取るためのアプローチの違いでしかない。

 前者の戦い方をフロントが否定した以上、川勝監督が違うアプローチをするのは当然のこと。そして選手たちは、新しい指揮官の下で力の限りに戦っている。しかし、戦力と抱えている問題に変わりがなければ結果が変わらないのは道理だ。また、J1で戦える選手が15、16人しかいないという現状では、けが人が出てしまえば打つ手は限られる。この日も危険を承知で攻撃を仕掛け、そして決定機を決められなかったが、改めてフロントのチーム編成上の問題が大きくクローズアップされることになった。

 福岡にかかわる全ての人にとって、厳しい現状を突きつけられた試合。それゆえに複雑な思いを抱いてスタジアムを去ったサポーターは多いことだろう。選手たちは最後まで攻め続けたが、それでも結果に手が届かなかった現実に徒労感さえ漂う。しかし、情けなかろうが、悔しかろうが、この日の現実を真正面から受け止めることでしか前へは進めない。現状の原因を自分の中に求め、その中で、それぞれの立場で何が出来るかを見つけ出して突き詰めていくしかない。戦犯探しは不毛なだけだ。

 ただし、何より強く求められているのはクラブの意識の変化であることは疑いようがない。チームの方向性を定めるのは監督ではなくフロントの仕事。それを明確にし、その実現のためにどんな手が打てるのか。結局は全てがそこにかかっている。求められているのはフロントの危機感と体質の改革。過去の繰り返しは愚の骨頂だ。現場とサポーター、そして福岡にかかわる全ての人を再び犠牲にすることは許されない。置かれている状況は更に厳しくなったが、いまならまだ間に合うのだが・・・。

以上

2006.08.13 Reported by 中倉 一志
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