5月17日(水) 2006 ヤマザキナビスコカップ
広島 0 - 1 清水 (19:00/広島ス/2,070人)
得点者:'82 マルキーニョス(清水)
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■特J!プレイヤー: 山本 海人選手(清水)
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あれ?今日は5バックじゃないぞ。
記者席で思わず、そうつぶやいてしまった。いつもの広島ならば、アウトサイドがCB3人と完全に横並びになり、攻撃の時もその陣形をほとんど崩さない。しかしこの日は、マイボールになると左の服部公太はシャドーストライカーのウェズレイや上野優作と同じレベルまであがっていた。一方、右の李漢宰は、ボランチのベットと同じ高さまで進んでいた。これまでが5-2-3だったとするならば、この日は間違いなく3-4-3だった。
さらに違っていたのは、最終ラインである。この日、3バックのセンターに入った吉弘充志は、これまではペナルティアーク付近で止まっていた最終ラインを、自分の意志でどんどん前に押し上げていた。清水FWのマルキーニョスの存在は怖かったはずだが、その不安を蹴散らすように決然とした意志をもって、大きな身振りでラインを前へ前へと進めていた。
清水は、その広島の攻撃的な姿勢に、戸惑ったのかもしれない。水しぶきが上がるほどのピッチコンディションも影響し、中盤のつなぎでミスを重ね、広島のハーフカウンターをもろに受けてしまった。さらに自陣からのFKでもストッパーがペナルティエリア内にあがってロングボールのターゲットになる広島の強引な戦術も、清水にとっては圧力となった。立ち上がりから清水は自陣のペナルティエリア内でのプレーが多くなり、必死に押し返しても攻守の切り替えが早い広島の守備陣の前に、ミドルレンジからのシュートを撃つことが精一杯。アウトサイドからの攻撃も、盛田剛平や八田康介ら背の高いストッパーにはじき返されてしまった。
後半、清水・長谷川監督は、FW矢島卓郎を投入。中盤の布陣をダイヤモンド型に変え、トップ下にマルキーニョスを据える布陣を引いた。また、右サイドの市川を高めに配置し、3バック+1ボランチというリスクを覚悟したフォーメーションにシフトしたのである。
マルキーニョスが一列下がったことで、確かに前を向いてボールを持てるようになった。しかし、やはり裏に抜け出せるシーンはほとんどなく、前半同様にミドルシュートを撃つしか攻め手がなかった。一方の広島は、中盤で戸田和幸が驚異的な運動量を見せてセカンドボールを拾い、そこからのカウンターが次々と決まった。
しかし、そこで広島の前に立ちはだかったのは、プロ初出場の20歳のGK・山本海人である。前半から落ち着いたセービングを見せ、ウェズレイの決定的なFKをはじき跳ばしてから勢いに乗った。62分、ベットの左クロスを完璧に合わせた上野のヘッドを左手1本ではじき跳ばし、67分の佐藤寿人のシュートに対しても落ち着いた対応を見せてゴールを割らせなかった。雨で湿ってボールが滑りやすい状況ではあったが、山本は果敢にキャッチを試み、それをことごとく成功させる。この勇気と技術が、清水の選手たちに大いなる希望を与えた。
しかし、それでも広島にチャンスはあった。78分の服部パスカットからウェズレイにつなぎ、さらに服部へとボールがわたってクロス。完璧か、と思われたサイドアタックだったが、佐藤寿のヘッドはバーの上。さらに82分、服部のパスをウェズレイがヘッドで落とし、佐藤寿が抜け出す。角度がないところからシュートを放つが、枠をとらえない。
これまで1チャンスを抜け目なく決めたことで勝ち点を拾っていた広島が、これほどチャンスをいかせなければ、逆の目が出てしまうのがサッカーだ。82分、マルキーニョスの「時間が止まったような」ループシュートの前に広島は屈した。その後、盛田を前にあげるなどパワープレーに出たが、及ばなかった。
これで広島は予選リーグ敗退が決定。過去ベスト8に進出した経験がたった1度(2001年)と、広島はつくづくナビスコカップに縁がない。しかし、ここ2試合の広島は明らかに「超守備的戦術」からの脱皮を目指しているようだ。任期があと1試合となった望月監督が最後の新潟戦でどういう戦いを見せてくれるか、楽しみにはなった。
一方の清水は、「非常に厳しい戦い」(長谷川監督)を制し、決勝トーナメント進出に望みをつないだ。今日、千葉が新潟に対して勝ち点を落とすことがあれば、次の直接対決で勝って首位突破も狙える。そういう意味でも、山本海人という新星の大活躍がもたらした意味は、とてつもなく大きい。
以上
2006.05.18 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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