5月14日(日) 2006 J2リーグ戦 第15節
湘南 5 - 0 徳島 (14:04/平塚/3,473人)
得点者:'8 オウンゴ−ル(湘南)、'30 佐藤悠介(湘南)、'53 アジエル(湘南)、'58 佐藤悠介(湘南)、'66 加藤望(湘南)
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キックオフ4時間前、湘南とサポーターとの間で「クラブハウス問題を考える集い」が行なわれた。今年9月に練習グラウンドを大神から馬入に移すことが決まっている一方で、クラブハウスの行方は定かではない。残された少ない時間のなかで模索は続く。現状は厳しい。だが苦境にも、真壁潔・湘南ベルマーレ代表は言い切った。「我々は9月に上位を争っていなければならない」と。クラブの誇りは地域住民の誇りでもある。集まった100人を超えるサポーターは皆、クラブに対するバックアップを誓い、スタジアムへ向かった。
サポーターの決起に応えるかのように、試合は湘南のワンサイドゲームとなった。口火を切ったのは8分、高い位置で徳島DFのパスをカットしたアジエルがドリブルで持ち込み、シュートを放つ。GK高橋範夫が一度はセーブするものの、DFに当たりオウンゴールを誘った。以降、湘南は加藤望ら右サイドで主にゲームを作っていく。30分には右サイドで囲まれたアジエルがドリブルで相手を振り切り逆サイドへ送ると、受けた佐藤悠介が「イメージどおり」というゴールを決めた。「流れのなかで決めたい」フリーキックのスペシャリストが常々話していた、待望のゴールだった。
前半は以上の2ゴールで折り返すが、徳島にもチャンスはあった。22分には速攻から左サイドの羽地登志晃が中央へ切り返し、ポスト直撃弾を見舞っている。だがチーム全体として動きに精彩を欠いた。「前に出るのか引くのか、判断が中途半端で、動き出しで後手を踏んでしまった」と、田中監督は振り返っている。背景には湘南の絶え間ない守備意識と運動量、そこから生まれる球際の粘り強さがあった。アジエルや佐藤をはじめ、前線の横山聡に至るまで、ボールへの執念は相手のそれを凌いだ。1トップの徳島・小林康剛にボールが入れば、田村雄三と松本昂聡、そしてニヴァウドが挟み込んで奪取する。徳島の前線への単調なロングボールは、松本を中心にほぼ跳ね返していた。
反撃に転じたい徳島は後半開始早々、小林を経由して伊藤彰が裏へと反応するも、パスが合わない。決定力とラストパスの精度という課題が局面で顔を出す。逆に湘南は53分、佐藤の素早いリスタートから右サイドの加藤、そして加藤を猛然と追い越した冨山達行へと繋ぎ、クロスのこぼれ球をアジエルが突き刺した。
「3−0」となっても、湘南は攻撃の手を緩めない。士気の落ちた徳島に対し、58分にはふたたび佐藤が、そして66分には加藤がそれぞれ持ち込み、追加点をあげた。終ってみれば「5−0」の大差で、湘南が徳島を下した。湘南の5得点は2001年10月の横浜FC戦以来、およそ5年ぶりのことである。
「技術や戦術以前の問題。駆けつけてくれたサポーターの方々に対し、本当に申し訳ない」試合後、徳島・田中監督は苦しげに語った。大敗に、チームのベースに潜む課題を自ら問う。一方の湘南にはひとつ、いまのチームを象徴するシーンがあった。5点を取ったあとのことだ。引き続く攻撃で、コーナーキックのこぼれ球を取り損ね、ゴールチャンスを逃した尾亦弘友希が天を仰ぎ、即座に自身のポジションへと戻った。5点を奪ってもなお全選手が貪欲にゴールを目指し、守備では相手の交代選手にも勝る動き出しを見せる。90分間、勝利への集中力が弛むことはなかった。
試合後、サポーターはふたたび集まり、誓いをさらに強くした。続く山形戦はもちろん、移転を控えるシーズン終盤まで、湘南の律動は止まらない。クラブとサポーターがひとつになって、実りの秋を目指す。
以上
2006.05.14 Reported by 隈元大吾
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