仙台の選手の中で、現在3位を争っている甲府に在籍した経験を持っているのが、バロンと大柴の二人。その内バロンは、昨年の途中まで在籍していたとあって、躍進した近年の甲府を肌で感じていたはずだが、大柴はどうか。彼が在籍していたのは、J2開始初年度である1999年まで。この年の甲府は、9位だった仙台に倍近くの勝ち点差をつけられてダントツの最下位だった。
なので大柴からしてみれば今の順位表は、それだけで感慨にふけさせるに十分なものである気もするが、しかし当の大柴は、決戦を前に感傷になど浸るそぶりすら見せていない。甲府がどうこうではなく、とにかく目の前の福岡戦という壁を自分たちで越える。こうした考え方も、今シーズンずっと変わらなかった。
水曜日に行なわれた紅白戦でも、大柴は今季自分がそうしてきたように全力プレー。前節と同様のメンバーとなった主力組の一員としてプレーした15分ハーフの1本目では、最後のプレーで相手と交錯、右腕を負傷したかのようなそぶりを見せ周囲を凍らせたが、それでも気迫溢れる試合への取り組みは変わらず。2トップの一角としてプレーした2本目では、味方のシュートの跳ね返りに嗅覚良く詰めてゴールを上げるだけでなく、味方のボール保持者に対する献身的なフォロー等で、チームのリズムを生むことに貢献していた。
前節の京都戦では、失点後に明らかに混乱したイレブンの中で、唯一といって良いほどの落ち着きを見せていた。どんな展開であれ、ただならぬテンションで時間が過ぎていくであろう12月3日の中で、やはり大柴の存在は欠かせない。
「サポーターに対しては、しっかりと結果を出した上で『ありがとうございます』と言えるようになればいい」と大柴。彼の頭の中には、自らのチームの力を見せることで甲府に競り勝ち、入れ替え戦に進出した仙台の姿しか描かれていない。
2005.12.01 Reported by 佐々木聡
J’s GOALニュース
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