7月23日（土） 2005 J1リーグ戦 第18節
広島 3 - 0 東京Ｖ　（18:02／広島ビ／12,176人）
得点者：'8 オウンゴ−ル（広島）、'22 佐藤寿人（広島）、'30 佐藤寿人（広島）
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　キックオフの瞬間から、東京Vは鋭く牙をむいた。左サイド、切り札の相馬にボールを渡すと、相馬はサイドを思い切りえぐり、強烈なクロスを供給する。ファーサイドに飛んだボールの折り返しを、平本がヘッド！　ボールは枠外に飛んだが、広島サポーターの肝を冷やした瞬間だった。
　さらにその1分後、ショートコーナーの折り返しを、米山がシュート。GK下田が何とかキャッチしたものの、これも広島にとっては危険なシーン。監督交代という「劇薬」をうけて、東京Vの選手たちがこの試合に自らのプライドをかけて戦おうとしていることが、よく伝わってきた。

「石崎さんが監督になった以上、一筋縄ではいかない」
　広島・小野監督が警戒していた通り、東京Vは、この試合にかける気持ちを前面に出していた。この立ち上がりの2つのビッグチャンスをものにできていれば、スコアは逆になっていたかもしれない。
　しかし、この東京Vの鋭さが、広島の闘志に火を点ける。大きな展開からFWにくさびを入れ、そこからスピーディーにサイドを突くことで、主導権を握った。そして8分、広島は先制点をゲットする。駒野のクロスパスを佐藤寿がワンタッチで左サイドの李に展開する。李のクロスに佐藤寿が飛び込み、ガウボンへパス。それがDFのバックパスのミスを誘い、オウンゴールとなったのだ。

　しかし、1点ではまだわからない。東京Vは先制されたことでさらに奮い立ち、左サイドの相馬を軸に攻め立てた。一方の広島は、鋭いカウンターから2点目を狙った。ここのせめぎあいをどちらが制するか。これが、この試合の大きなポイントだった。
　21分、李のCKをベットがシュート。そのこぼれをガウボンがシュート。GKがはじいたところを佐藤寿が押し込む。そこまで5本のセットプレーのチャンスをゴールに結びつけられなかった東京V、そして初めてのCKを抜け目なくゴールに納めた広島。
　この差は何か、と問われれば、「ゴール前の責任感の差」という答えになるだろう。広島は下田とジニーニョを中心に、常にボールと人を視野に入れて、クリアするまで全員が気持ちを切らせることはない。一方、東京VのDFたちは、広島の選手たちよりもまず動き出しで後手を踏む。「絶対に自分が守るんだ」という気持ちの発露がなく、どこか人任せになってしまっていた。だから、こぼれ球が広島側に転がるのである。

　ここで東京Vの選手たちの気持ちは、切れてしまった。何度もカウンターでピンチを迎えたあげく、30分には駒野のクロスを受けた佐藤寿にあっさりとDFラインを割られてしまい、3点目を献上。ここで勝負はほぼ決まった。
　前節、浦和の攻撃に引き裂かれ2失点を献上した広島だったが、ジニーニョ復帰とともにしっかりと守備を修正してきた。対照的に東京Vの守備の脆弱さは、目を覆わんばかり。後半は、確かに0点に抑えた。しかし実際は、攻撃に出るあまりに守備のバランスがおかしくなり、ボールを失ってはカウンターから何度も大ピンチを招いていた。広島のシュートミスがなければ、またも5失点以上の惨状に見舞われた可能性も充分にあったのだ。

　対石崎監督6戦目で初勝利をあげた小野監督は「今年は悪いジンクスを補う年。優勝争いにも絶対にからんでいく」と胸を張る。一方の東京Vは、守備の崩壊現象を「監督解任」という刺激をもってしても、ストップすることができなかった。ただ、幸いなことに、ここで約半月のリーグ中断に入る。この期間を利用して、チームの意識ベースから立て直していけば、個々のタレントには事欠かないだけに、充分巻き返しのチャンスはあるはずだ。
「プロとしてのプライドが持てるチームに持っていければ」
　GK高木義成がふりしぼった言葉は、そのまま東京Vサポーターの切なる願いである。


以上

2005.07.24 Reported by 中野和也