1試合平均1.3失点。失点は昨季のそれ(2.1点)と比べるまでもないほどに激減した。「課題は相手のリスタートとクロス、そしてゴール前でのツメの甘さ」(小林伸二監督)。シーズン前に失点パターンを検証し、徹底して修正を図った賜物だ。
開幕こそ3連敗とつまずいたが、第4節から第11節までは8試合連続負けなし。去年までなら負けていた試合を引き分けに持ち込んだり、最少点差を守りきって勝ちをもぎ取ったりという粘りが見られ、勝点を伸ばすことに成功した。長年の課題であった守備を建て直して順位も中位(11位)、小林監督の目論見どおりの結果といえる。
インターバル前の最後の試合(G大阪戦)は久しぶりに4失点と大味なゲームになった。が、小林監督はそれも「良薬」ととらえている。「自分たちの持ち味である、全員で辛抱強く守るサッカーを忘れちゃいけないということをガンバ戦は教えてくれた。リーグ再開に向けて、原点を見直してチームを作っていきたい」(小林監督)。
選手個々に目を向ければ、新外国籍選手たちはいち早くチームになじみ、ポジションを獲得した。バックラインのブルーノ・クアドロス、左サイドのゼ・カルロスは欠かせない存在になった。また、開幕戦から先発メンバー入りしていた江添建次郎とファビーニョが負傷離脱したものの、前田和哉と下村東美が代わってメンバーに入り、穴を埋める以上の働きをしているのも大きい。西澤明訓、久藤清一、布部陽功らベテラン勢の奮闘も光る。特に西澤は1トップとして常に前線で体を張り、攻撃の起点になりつつ守備での貢献度も高い。チームにとって、もはや代わりのきかない選手になった。
◆再開後の展望・見どころ
第12節のG大阪戦での反省から「もう一度自分たちのサッカーを見直し、高めること」をこの休止期間の目標に掲げた小林監督。具体的には「守備ではもっと意図的にボールを奪えるようにすること」「攻撃ではある程度選手のポジションが固まってきたなかで、それぞれのプレーの質を上げることやバリエーションを増やすこと」と、テーマを明確にしてキャンプに臨んだ。
9日間にわたったキャンプ地にあえて暑いグアムを選んだのは、蒸し暑い大阪に戻ってコンディションを崩すことのないように、という考えから。特に7月はタイトな日程が待っている。東京、大阪、磐田、大阪、川崎、大阪(万博)と22日間で6試合とまさに東奔西走。小林監督は、「もともとうちはハードワークを必要とするポジションにベテラン選手が多い。夏場を迎えるともっと大変になる」と話していた。これまでの12試合やナビスコカップではほぼ固定したメンバーで戦い、それなりの結果を積み上げてきたが、今後は「新戦力」の登場が待たれる。ケガから復帰したファビーニョ、苔口卓也、さらに若い米山大輔、千葉貴仁、酒本憲幸らがメンバーに食い込んでこないと連戦を乗り切るのは難しいだろう。序盤戦で築き上げた堅いディフェンスをベースに、キャンプで得たプラスアルファをどう表現するかに注目したい。
◆HOT6の注目選手
負傷(右ひざ痛)から復帰を果たしたファビーニョに期待が集まる。開幕当初はボランチとしてプレーしていた彼が、どのポジションでどんなプレーを見せるか? 「もともと攻撃に絡むプレーが好き」(本人)というだけに、ナビスコカップ第5節、第6節で見せた2列目での起用も大いに考えられる。テンポよくパスを繰り出し、シュートも狙っていく選手なので、新しい攻撃のバリエーションという点で楽しみが増えそうだ。彼のポテンシャルを考えると、まだそのすべてを披露しているとは言いがたい。本人も「ゲーム勘にまだ課題が残る。もっとコンディションを上げてチームに貢献したい」と話しており、大いに期待したい。
また、ワールドユース選手権から戻った苔口卓也も奮起してほしい選手。期待されたワールドユース選手権での出場時間は決して多くなく、その内容も不本意だったはず。左サイド、もしくはFWとしての起用が有力だが、いずれのポジションにも強力なライバルがいる。チーム内の競争に果敢に挑んでほしいところだ。
◆再開後のフォーメーション予想
以上
Reported by 横井素子