アテネ五輪代表を指揮した山本監督の就任と大型補強によって、開幕前はもっとも大きな話題を集めた磐田だったが、チームとして成果を出すには、やはり時間が必要なようだ。
開幕の横浜FM戦こそ内容よりも勝負にこだわって勝利を得たものの、5節までの成績は1勝1分3敗。内容的にも「ボールも人もよく動く」という磐田らしさがあまり感じられないものだった。
それが上向きの兆しを見せ始めたのは、6節（4/16）の新潟戦から。この試合では、成岡、太田といった若い選手が豊富な運動量と素早い攻守の切り換えを見せてチームを引っ張り、決勝点もこのコンビから奪って新しい磐田の胎動を感じさせた。続く鹿島戦でも、試合には敗れたものの首位の鹿島を圧倒する時間帯を長く作り、8節以降は3勝2分の成績を残して、中断時点で5位に浮上した。
この間チームを支えたのは、若い選手たちの前線での豊富な運動量とベテランの経験だった。前田、太田、カレンといった選手たちが（成岡は新潟戦のケガで以降欠場）攻守に惜しみなく動き、前線からの守備とボールを奪ってからの速い攻撃で大きな働きをすれば、服部や田中を筆頭としたベテラン陣が後方を締めるという形で、若手とベテランがうまくかみ合ったのは大きい。
昨年までの磐田のイメージとは多少異なるが、とりあえず「人が動く」という部分はかなり改善されたし、攻撃面での縦への速さは、新しい磐田の一面となりつつある。
◆再開後の展望・見どころ
磐田のチーム作りにとって痛いのは、まとまった中断期間＝代表組不在という図式になること。この6月もA代表の川口、田中、福西、茶野と、U-20代表のカレン、船谷、GK松井、韓国代表（U-20代表にも参加）の金など、レギュラークラスがごっそり抜けた中でのトレーニングとなった。
とくに問題になるのは、DFラインのコンビネーションを高められないこと。12節までの戦いでも、新たに金と茶野の2人が入ったDFラインで細かいラインコントロールができず、結果的にズルズルとラインが下がって中盤にスペースを与えてしまった。それが、磐田らしさがないと言われる大きな要因のひとつとなっていただけに、この問題をどう改善するのか、誰を起用するかも含めて山本監督の手腕が問われるところだ。
攻撃陣に関しては、藤田が抜けたことは痛いが、選手の層は厚く穴を埋めるのは不可能ではない。また、技術面ではどの選手も十分なレベルにあるので、あとは「動ける選手」が優先的に起用されることになるだろう。6月15日から22日までグアム・キャンプを行なっており、暑さ対策もある程度できている。連係に関しても、攻撃陣ではチームに残った選手が多く、ある程度高められているはずだ。
再開後は、まず川崎Ｆ、大宮と今季Ｊ１昇格組との戦いが続くが、ここできっちり結果を出して勢いに乗れれば、後半戦での優勝争いに絡んでくる可能性も十分にあるだろう。
◆HOT6の注目選手
まず期待したいのは、ケガからの復帰が待望されていた鈴木秀人。韓国代表の金とポジションを争うことになるが、田中とのあうんの呼吸やラインコントロールという点では一日の長がある。序盤戦は右サイドのスペースから崩されることが多かっただけに、ここを鈴木がしっかりとカバーすることができれば、チーム全体の守備も安定する。
また、中央の田中にコンディションの面で不安があるだけに、そのフォローも求められる。さらにラインを高く保つことは攻撃にも大きく貢献するため、あらゆる面で鈴木にかかる期待は非常に大きい。もちろん、その期待に応えられるだけの実力と経験を備えた選手であることも間違いない。
もう1人挙げるとすれば、ワールドユース選手権での悔しさを晴らしたいカレンも捨てがたいが、ここでは、トップ下での起用もありえる西紀寛を挙げておきたい。西も、序盤戦は本来の力を発揮できたとは言えず、ここまでまだ無得点だが、磐田が優勝を狙うためには彼の勝負強さは欠かすことができない。
山本監督がトップ下の選手に求めるのは、後ろに下がってゲームを作ることよりも、2トップをしっかりサポートし、さらに2トップを追い越してゴールを決めるという部分であり、その意味では西は適任と言える。ゲームメイクはボランチの名波や福西に任せ、西自身はコンディションを高めて、思いきり前線で暴れてほしい選手だ。
◆再開後のフォーメーション予想
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以上
Reported by 前島芳雄
