長谷川監督が今季から就任して、サッカーのスタイルを1から作り直した清水。サポーターが待ち望んだ新指揮官の仕事ぶりは、プロチームを担当するのが初めてとは思えないほど堅実かつ緻密で、着実に成果を上げている。
ただし、序盤戦は大いに苦しんだ。まずは守備の組織を整備するという正攻法のやり方で入り、守備面ではすぐに成果が出たものの、攻撃が機能するには時間がかかって、6節まで4分2敗と勝ち星なし。アウェー戦ではよく粘っていたし、選手は長谷川監督の目指すサッカーを忠実に行ない、内容も悪くなかったが、6節で大分に敗れてホーム2連敗となった時点では、チーム内にもかなり動揺があった。
だが、次の千葉戦で待望のリーグ初勝利を挙げると、そこからは試合ごとに自分たちのサッカーに自信を増し、以降は3勝3分と負けなし。ナビスコカップ予選(6/4鹿島戦まで)も含めると、9試合連続無敗という成績を残し、1位でナビスコカップのベスト8進出を決めた。
内容的にも、リーグ戦12試合でわずか10失点と守備は非常に安定しており、攻撃のほうも攻めのバリエーションが増え、エースのチョ・ジェジン他、取るべき選手が点を取れるようになってきた。つまり、中断前のチーム状態は、確実に上昇カーブを描いていた。
◆再開後の展望・見どころ
再開後でポイントになるのは、まずここまでの良い流れを持続できるかどうかという点にある。その意味では、いきなり首位を快走する鹿島とアウェーで当たるのが微妙なところ。その試合ではエースのチョが出場停止で、逆に鹿島は代表組がコンフェデレーションズカップでの敗退によりチームに戻れることになった。ここで今の勢いと自信を保てるだけのゲームができれば、チームの軸がしっかりしているだけに心配は少ないだろう。
また、暑さで動きが落ちると守備に穴が空いてしまうというタイプの守り方ではないので、基本的には夏場にも弱くないはずだ。唯一の不安材料は、DFラインにケガ人が出たときに、今の堅守を維持できるかという点。とくにサイドバックの層が薄く、ここがアキレス腱となる可能性もある。また1トップの部分も層が薄く、これらのポジションの選手たちには、コンディショニングも含めて頑張ってもらわなければならない。
だが、その他のポジションでは、バックアップの選手も徐々に充実してきた。決勝トーナメント進出が決定した後のナビスコカップ第6節・名古屋戦では多くの若手が貴重な経験を積み、新人の岩下が即戦力と言える実力を示すなど、中盤の層は厚い。
中断期間中のトレーニングで長谷川監督が大きなテーマとしていたのは「個々のレベルアップ」という部分。これが2%でも3%でも平均して上がってくれば、チームとしてのまとまりは十分にあるので、全体としては大きなレベルアップにつながるはずだ。
ただ、新生エスパルスとしての経験値はまだ十分とは言えない。したがって、どこかでつまずきが出たときにうまく対処できるかどうかは未知数だ。清水の浮沈のカギは、メンタル面にもかかっていると言えるのではないだろうか。
◆HOT6の注目選手
注目選手として第一に挙げたいのは、2列目の左サイドでプレーするチェ・テウク。序盤戦では、初めての海外移籍ということもあって、なかなか本来の力を発揮できなかったが、ナビスコカップに入って5月21日の名古屋戦で初ゴール(しかも1試合2ゴール)を決めたあたりから本格的にエンジンがかかってきた。元々サイドを突破してクロスを上げるだけでなく、中に入ってゴールを決めるという面も持っている選手だけに、彼のゴールが増えてくれば、チームの得点力にも大きなプラスになる。ぜひ「清水のロッベン(オランダ代表)」と呼ばれるようになってほしい選手だ。
もう1人、注目選手を挙げるとすれば、右サイドバックの市川。昨年はケガで苦しい1年を過ごしたが、今年に入って完全復活。序盤戦こそ意識が守備に傾いて攻撃参加が少なかったが、守備面での自信がついてくるとともに、持ち前の長い距離を爆走する攻撃参加が増え、ゴールにも絡むようになってきた。チームとしても中盤でのタメが作れるようになり、クロスに対する選手の入り方も良くなってきて、市川が活躍する下地は整っている。もちろん、このまま調子を上げていけば、代表復帰という声も自然発生してくるはずだ。
◆再開後のフォーメーション予想
以上
Reported by 前島芳雄