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【J2:第32節 仙台 vs 京都 レポート】両チーム合計7得点の激闘を制した仙台。貴重な勝ち点3をあげる(04.09.05)

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9月4日(土) 2004 J2リーグ戦 第32節
仙台 4 - 3 京都 (19:04/仙台/17,437人)
得点者:'13 崔龍洙(京都)、'16 財前宣之(仙台)、'22 萬代宏樹(仙台)、'39 佐藤寿人(仙台)、'59 田原豊(京都)、'80 佐藤寿人(仙台)、'83 中山博貴(京都)
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 前半13分、右サイドからのFKの際、なぜかゴール前ファーサイドの崔の周囲に、仙台守備のエアポケットが生まれた。そこに吸い込まれるように落ちたボールをしっかりとトラップした崔の、狙いすました左足シュートが決まり京都が先制。あまりに早い失点に、勝利のみを求めて詰め掛けた仙台サポーターは、一瞬拍子抜けした想いだっただろう。
 
 だがこの日の仙台は、その「勝たなくてはいけない」という目標がはっきりしているせいか、すぐに我を取り戻した。時間はまだ余っているし、そもそも財前をFWで起用したことで空いた右SHに、村上ではなく中田を投入したことも攻撃力を期待してのこと。打ち合いならば望むところである。

 うつむきかけた顔を上げた仙台は、わずか3分で流れを引き戻した。前半16分、最終ラインのセドロスキーから正確なロングフィードを受けた左サイドの梁が、右へ一度切り返した後に上げた左45度からのクロスに財前が反応。連動した前線の動きによってゴール正面でフリーとなっていた財前は、完璧な胸トラップでGKとの1対1を作ると、後はゴール左隅に流し込むだけだった。これで同点。
 
 ここから前半終了まで、仙台の動きは見違えて変わった。圧巻だったのはシルビーニョ。前半22分、自陣右サイドで佐藤が粘り奪ったボールを受けたシルビーニョは、不用意に上がった京都DFラインの裏へグラウンダーのスルーパスを通し、萬代の逆転ゴールをお膳立てすると、前半39分には京都ゴール正面から今度は浮き球スルーパスで、佐藤の技ありゴールを呼び込む。中盤での厳しいチェックと、リスクに応じたラインコントロールを失っていた前半の京都は、復調したシルビーニョのパス出しを止めることができないまま、試合は前半を終えて3-1。最初の失点こそいただけないが、仙台にとってはシルビーニョの活躍だけでなく、千葉を筆頭に全イレブンが激しくボールを追い回してリズムを作る、今シーズンで最も魂のこもった45分だった。

 だが、京都もこのままやられるだけではない。後半開始と同時に金と熱田を下げ石丸と中山を投入。ボランチだった中払を右サイドへ回し、中山はトップ下、石丸のほぼ1ボランチという布陣へと変更した。この柱谷監督の采配によって京都は、中盤を広範囲にカバーすることでチーム全体のフォアチェックの土台となっていた仙台・千葉に、トップ下に入れた中山へのケアを強い、動きの範囲を狭めることに成功する。これにより自然と、前半に猛威を振るった仙台の前線からのチェックが鳴りを潜め、京都のボール回しに余裕が生まれる。
 
 さらに京都にチャンス到来。田原のゴールで1点差まで迫った後の後半22分、仙台の小原が2枚目の警告で退場。ただでさえチェックが効かないため前に出られない仙台は、数的不利を負ったことでさらに引かざるを得なくなり、ここからの約15分間、京都は仙台をゴール前に完全に押し込む。ほぼ仙台エンドのみで試合が進む様子はさしずめ、ハンドボールの試合を見ているかのようなもので、仙台はシュートまで持って行くことすらままならない。
 
 だがこの絶望的な状況の仙台を救ったのは佐藤と、この日の前半、今季最高とも言えるパフォーマンスを見せていた千葉だった。後半35分、久しぶりに良い形でボールを奪った仙台。残り時間においてこれがほぼ唯一の、そして貴重なチャンスであると悟ったか、複数の選手が京都エンドに「越境」していく。自陣深い位置を離れられなかった千葉も最後尾からボールを追っていく。遅れて入ってきた彼には京都のマーカーが足りず、ゴール正面でフリーでボールを受けた。一度はボールを失いかけるが、ルーズボールを再び拾って、前方の佐藤にシルビーニョばりのスルーパスを通す。スタジアム中の視線と祈りが突き刺さる中、佐藤はこの貴重なチャンスをしっかりと決めて再び2点差に。佐藤はよく自ら口にする「FWとしての責任」をしっかりと全うした。
 
 3分後の後半38分に京都・中山のゴールを許し4-3となったことで、結果的に佐藤のゴールは、その意味を限りなく増大させた。京都にとってみれば、前半の問題点を改善した的確な采配、小原の退場による数的有利、それらからくる状況によって、仮に一度でも同点に追いていればそのまま押し切って逆転という展開も考えられただけに、余計に佐藤の2点目が悔やまれる。
 
 一方の仙台にとっても、この1点差を守りきることは容易ではなかったはずだ。ここまで終盤にゴールを決めることも多いが、相手にゴールを許し、取り得た勝ち点の土壇場での喪失も繰り返してきた仙台。しかしこの日はサポーターの大声援も味方に付け、ロスタイムを含めたラスト10分強、集中を切らすことはなかった。
 
 正直、あと5分試合が長かったら、勝ち点1を分け合うどころか、京都に勝ち点3がもたらされたかもしれない。だが試合はこのまま終了。4-3という激闘を制した仙台は、貴重な勝ち点3に何とかたどり着いた。
 
 この京都戦に、今シーズンの全てを賭けて戦った仙台。この勝ち点3の重みは、試合終了後に選手を出迎える小原から流れ落ちていた涙が、何よりも物語っていた。

以上

2004.09.05 Reported by 佐々木聡


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