前節、福岡を迎えたNDスタは2週連続の“対福岡シリーズ”。ただし、山形が今節迎え撃つのは、前節とは大きくスタイルの異なる北九州だ。山形、北九州ともコンパクトさを保った状態で力を発揮できるが、山形は相手陣内に押し込む攻撃時に、北九州は自陣での守備時にそれはより発揮される。異なる特徴のチーム同士の対戦はスウィングするのか、それとも不協和音が響くのか。

6連敗を喫するなど前半戦で苦戦を強いられた北九州は、第21〜23節の3連敗を最後に連敗がなく、着実に勝点を積み上げている。最近5試合では神戸に2-3で敗れた以外は3勝1分け。半数以上のメンバーを入れ替え、鳥取に2-0で勝利した天皇杯2回戦も合わせた6試合では、すべて前半45分を無失点で折り返す抜群の安定感を発揮している。前節、10年のJ2参入以降勝てていなかった岡山から8度目の対戦で初勝利を挙げた。昨シーズンから3連敗している山形戦だが、前半に先制パターンが多い山形に対して無失点で折り返せるかどうかが初勝利へのカギになる。そして勝てば次節、ホームでの福岡ダービーにこれ以上ない弾みがつく。

安定感を生み出している基盤は組織的な守備。失点ゼロの時間をできる限り長く続けることで、自分たちの土俵に引きずり込むことができる。特に自陣ゴール前に引いてからのシステマティックな守備は特筆。互いに適切な距離感を保ちながら、誰がボールへアプローチしてもほかの誰かがスムーズにポジションを修正してギャップを埋めたり、全体をスライドしてカバーしたりと、チームコンセプトが染み込んだスムーズな連動を見せている。山形・奥野僚右監督も「結果、失点が少ないということは、全員の守備の意識が統一されているのではないか。いまあの形で安定しているので、強いチームだと思う」と分析する。

また、攻撃面では複数得点の試合も増えてきている。2トップはこの5試合、池元友樹と第30節から3試合連続ゴールを記録した渡大生を固定。運動量と突破力を兼ね備える2トップだが、攻撃の起点となっているのはセンターバックの前田和哉と渡邉将基だ。裏へ一気にボールを飛ばしたり、下りて間で受けるフォワードに預け、ボランチのサポートから一気に押し上げるのが特徴的なパターン。前節・岡山戦は井上翔太が2ゴールしたが、サイドハーフではチームでもっともフィニッシュワークに絡みアシスト数の多い小手川宏基もいる。今節は今シーズンここまで全試合フル出場のキャプテン・前田、前節は出場直後に井上の先制ゴールをアシストした大島秀夫、さらに柱谷幸一監督が古巣・山形との対戦となる。

山形は前節、福岡を2-1で退けた。後半から終盤にかけて防戦に回る時間が長かったが、序盤に挙げた2得点が効き、リードを保ったまま試合終了。第22節から4連敗したあと、これで9試合負けなし。先制してはリードを盾に試合を運び、リードされても最後には追いつく。第15節・鳥取戦に6-0と大勝して以来、無失点試合は19試合実現できていないが、どんな場面でも落ち着いてパフォーマンスできる精神状態がいまは結果をプラスの方向へと導いている。9月に入ってからは綱渡りも多く、内容的に「完勝」や「納得」と表現できる試合は少ないことも、見る角度を変えれば、競った試合で勝点をモノにできていると言い換えられる。

目的地であるプレーオフ圏内は徐々に近づきつつある。6位までの差は勝点5。終盤に差し掛かったリーグ戦で、追いかける立場にとってはドローも「後退」を意味するが、今後は上位同士の潰し合いもあり、勝ち続けることで圏内に潜り込むことは十分に可能だ。今月は3度のトレーニングゲームを行い、いずれも筋肉系のトラブルで離脱していた比嘉厚平、ロメロ フランク、林陵平も今週までに全体練習に合流している。残り8試合プラス2を総力戦で臨む態勢は整っている。

「北九州は4-4-2のブロックをつくるので、間とかで受けることを意識してやりたい」と話すのは秋葉勝。チームとしてボールを保持する時間は多くなりそうだが、得点が得られるかどうかはアタッキングサードでの質次第。球足の速いサイドチェンジを使い、クロスにはニア、中、ファーとはっきり飛び込む状況をつくり、さらに、守備への切り換えで相手に自由を与えずにボールを奪うところまでやりきりたい。チームも、サポーターもでき得るすべてを注ぎ込むことができれば、試合終了のホイッスルとともにスタジアムが歓喜に包まれる時間はきっと訪れる。

以上

2013.09.28 Reported by 佐藤円