あの熱戦からおよそ1週間。讃岐は今シーズン最後となる全体練習を13日(土)に行った。ただ練習と言っても、この日は選手とスタッフ全員が参加するキックベースが開催され、選手はもちろん、監督やコーチもその中に混じって全力でキックベースを楽しみ、笑い声と笑顔が絶えない時間がそこに流れていた。
その中で、今シーズン限りで現役を引退する西野泰正の姿もあった。讃岐に在籍して4年。J2・J3入れ替え戦の第2戦では最後の交代選手として出場し、讃岐のJ2残留に大きく貢献した。
西野選手は富山第一高校出身で、99年・00年と全国高校サッカー選手権へ出場。チームのエースとして2年連続でベスト4進出を果たした。01年に磐田に加入し、その後清水、京都でもプレー。そして11年に、同年JFLに昇格したばかりの讃岐に加入。Jを知る数少ない選手として、加入当初からその活躍に期待が集まった。
北野誠監督は「加入した時にいろいろ話をしたけどチームの状況や起用法など理解してくれたし、去年はキャプテンも務めてくれて、J2昇格に向けて頑張ってくれた」と、当時のことを思い出しながら語ってくれた。また讃岐に加入してからは、攻撃だけでなく守りの場面で出場する機会も多くなり、「あいつのポジションはフォワードでもディフェンダーでもない。フォワダー(フォワード+ディフェンダー)だから」と、冗談交じり北野監督が話すこともあった。ただ裏を返せば、それだけ監督の求めるプレーをしてくれるという信頼の証。そして、試合で活躍する西野選手のプレーに興奮しファンになった人も少なくないだろう。
そのファンの一人である井上将裕さんは、なんとこの日のために千葉から駆けつけ、ピッチの西野選手を見つめていた。もともとは磐田サポーターだった井上さん。その中で西野選手の献身的なプレーとその人柄に引かれ、磐田を離れてからもずっとその活躍を応援し続けていたそう。井上さんは「リーグ戦や入れ替え戦と、一年一年勝負だったと思う。西野選手の献身的なプレーやその活躍が大好きだったので、本当に感謝の言葉しかない」とあらためて引退の寂しさと、ねぎらいの言葉を送った。
そして練習終了後には、チームメイトとの記念撮影や胴上げ行われ、新たな道に進む西野選手を送り出した。そして見学に来ていたファンへ「これまで応援してくれてありがとうございました。讃岐に来て4年、プロのサッカー選手として14年間プレーを続けることができました。本当にありがとうございました」と感謝の言葉を述べた。
そして最後は長年応援してきた井上さんのもとへ。「本当にありがとう」と西野選手が右手を差し出すと、井上さんも「こちらこそありがとうございます」と答え固い握手が交わされた。また井上さんからは、ファンの想いがいっぱい詰まった寄せ書きも送られ、それを見る2人の目元にはうっすら光るものがあった。
JFLからJ2、そしてJ2残留となった讃岐を4年間引っ張ってきた西野泰正。
ファンからの『Get Gool 西野!』というコールを背に受け、また一人のサッカー選手がピッチに別れを告げた。
以上
2014.12.15 Reported by 小谷秀斗(オフィスひやあつ)