●石崎信弘監督(山形):
「自分たちは今日は勝たなければJ1昇格がないという中で、90分の中でどう勝っていくかというところで、そのためにはまず先にやられてしまうとかなり苦しくなるというところで、本当に選手はかなり集中して戦ってくれたんじゃないかと思います。私自身もJ1昇格プレーオフというのは初めてなんですけども、やはりプレーオフ独特の雰囲気というのか、どうしてもなかなかボールをつなげないとか、お互いに蹴りあってしまうとか、やはりそういうところが今日のゲームはちょっとあまりにも多すぎたんじゃないかと思います。そういう中でセットプレーから山崎(雅人)が決めてくれて、あとはよく本当に選手が集中してくれて、体を張って守ってくれたと。何回かカウンター攻撃になりかけたんですけども、やはりまだ攻撃のところで改善していかなければいけない問題が多々あるんじゃないかなと。今日、ディエゴが先週(11月30日のJ1昇格プレーオフ準決勝)の怪我で使いたくないというところで、林陵平がディエゴの代わりをよくやってくれたんじゃないかと思います。本当に彼以上の仕事を今日はしてくれたと。やはりこの1年間戦って、本当にいろんな選手が試合に出たんですけど、全員がハードワークした結果、J1昇格という形につながったんじゃないかなと思います。ただ、喜ぶのは今日までにして、来週(12月13日)天皇杯決勝があります。その次にはもっと大変なJ1の試合が続いていくと思います。本当にJ1は大変厳しいリーグだと思いますので。まずは天皇杯決勝、そのあとはちょっと休みます。どうもありがとうございました」
Q:今日勝たなければならない試合ということでしたが、そういう意味ではやりやすかったかと思います。そういう中で前半のうちに先制して、逆に後半の選択肢が減るなどやりにくさを感じたものはありますか。
「いえ、自分たちのやり方というものはそんなに変える必要はないということで、まずは千葉は1点を取れば引き分けでOKという形の中で前がかりに来るのはわかっていたんですけど、それに対してどうカウンター攻撃のところで勝負できるかというところを考えながらやっていたんですけども、やはり千葉も先ほど言いましたけどロングボールが多すぎて、なかなか千葉らしいサッカーが今日はできなかったのかなというところがありました。後半の途中から千葉の左サイドの谷澤(達也)と中村(太亮)のところで崩しがようやっと入ってきたんですけど、それに対してこのままではやられるかなということでロメロ フランクを入れて、ある程度ゲームが落ち着いたんじゃないかなと思います。ただ、先ほども言いましたけど、やはり守るだけではJ1では勝てませんので、どう攻撃につなげていくかというところをもっともっとやっていかなければ、来季は大変な年になるんじゃないかと思います」
Q:石崎監督は今回の結果で、3クラブでJ1昇格を果たしたことになります。それだけの手腕はどのあたりにあるとお考えですか。
「まあ、自分自身もよくわからないんですけども、いつもぎりぎりなんですよね。今回も6位からJ1昇格プレーオフで上がったというところで、まずいろんなチームをやってきているんですけど、その選手のサッカーに取り組むところというのを一番大事にしていきたい。まず、やはり自分がサッカーを上手になりたいとか、試合に勝ちたいとか、さらに上のレベルに行きたいとか、そういう気持ちの部分を強く持ってもらわないと、噂によく出るきついトレーニングが待っていますので。
それをなぜやるのかというと、自分が今以上に強くなるため、上手になるためということを理解してもらってやった結果が、選手が自分自身で取り組んでトレーニングに入るようになってきているんじゃないかなというところがあると思います。いろんな戦術とかいろんな問題があると思うんですけど、そういうところよりも僕としてはやはりそういう、さらにうまくなりたい、強くなりたという気持ちの部分をできるだけ刺激してチームを作り上げていきたいと思っています」
Q:今、おっしゃったように先ほどの関塚隆監督も今日は気持ちの面で山形のほうが上回っていてそれにやられたというようなことを話されていたんですが、後半の守備の選手たちの出足とかそのあたりのことを今日はどう評価していますか。
「ああいう場面を作らないのが、もっと楽に守れれば、一番いいと思うんですけど、ただやはりサッカーにはいろんな要素があって、技術とか戦術とか体力とかいろんな要素があると思うんですけど、その中で特にこの終盤にかけて選手が良くなってきたのは、その戦う気持ちのところ。体を張ってゴールを守るとか相手よりもよりたくさん走るとか。選手の話なんですけど、リーグ戦が終わってすぐ天皇杯がありまして、その準決勝のあとに(J1昇格プレーオフ準決勝の)磐田戦があって、大阪から山形に帰ってまた磐田に行ってというかなりハードなスケジュールだったと思うんですけど、僕はやはりそういう気持ちの部分を強くしたいというところであえてフルのメンバーで戦ったんですよね。そういうところがやはり今日のゲームの中でも出ていたんじゃないかなと思います。ただ、そういう過酷なスケジュールを戦ったおかげでJ1昇格プレーオフ準決勝でディエゴが怪我をしてしまったということはあったと思うんですけど、そのほかの選手の部分では本当にたくましくなってきたんじゃないかなと思います」
Q:攻撃面でもっと良くしていかないといけないということですが、今日見ていると攻守両面で相手よりも多く走る、早く走り始める、最後まで走るという面で非常に感銘を受けました。山形のベースになっているところだと思いますが、J1でも十分通用するという自信はおありですか。
「そうですね。天皇杯でJ1とやって、特に鳥栖とやった時なんですが、延長戦で勝ちました。その時に鳥栖よりも走れた。延長戦でも鳥栖に走り負けなかったと。鳥栖のほうがもしかしたらJ2チームが相手ということで気持ちの緩みがあったかもわからないですけど、そういうところが天皇杯でもあったと思うんですよね。そういう戦う気持ちの部分というのをやはり刺激しながらやってきたところが、千葉の選手よりレベルは落ちると思うんですけども、頑張れるようになってきた。本当に選手も頑張れるようになってきた。
特に、G大阪から期限付き移籍できてくれた川西翔太はやはりテクニックがあるんですよね。ただ、やはり最初のころはそういう自分の好きなプレーしかしていなかったんですけども、チームになじむことによってディフェンスもするようになったし、自分からアクションを起こして飛び出すこともできるようになった。本当に素晴らしく、自分を捨てたおかげで(より頑張れる)プレーができるようになったんじゃないかと。本当に今の山形の選手はJ1に出したら技術、戦術のところでかなり劣ると思うんですけど、そういう戦う部分に関してはどこよりも強くなったんじゃないかなと思います」
Q:J1昇格プレーオフもぎりぎりの6位で出場できたという話でしたが、今季指揮を執られてぎりぎりのところまで上げていくまでの中で苦労されたのかどうか。例えば戦う姿勢を話されていましたが、最初のうちはJ2でも10位ぐらいの時期もあり、少し薄れていた部分もあったのでしょうか。
「去年、ちょうどシーズンが終わって12月に2週間ほど先にシーズンが始まる前に来てトレーニングさせていただいたんです。その前に僕は中国にいて、その前に札幌にいたんですけど、札幌の選手よりもかなりレベルが、止める、蹴る、いろんな部分でレベルが高いなと思っていたんですけど、走るとか頑張るとか、ディフェンスをするというところがやはり少し今まで見てきたチームよりも劣るというところがあったと思うんですよね。そういう中で冬から合宿を始めていろんなトレーニングをしながら、システムを変えたりとかやった中で、今の選手に合うのが今のシステムかなというところです。そのシステムを変えたところで結果も出てくるようになってきたんじゃないかなと。今の形が彼らには一番合っているのかなと思います」
Q:今日は35,504人の来場者のうち1万人くらいは山形のサポーターだったのではないかと思います。千葉との地理的な違いや町の大きさの違いを考えると、かなり多くのサポーターが来場した思いますが、そのことについての感想と、それから今週も山形は雪が降って雪かきをしないと練習場が使えないような状況でしたが、雪かきなどサポートしてくれる人たちについての思いをお願いします。
「シーズンの最初、合宿から入ってリーグ開幕を迎えるんですけど、そのあとに山形に帰るんですよね。その時には(練習)グラウンドには雪があってトレーニングがなかなかできない。そういう中でシーズンの当初からサポーターの方がグラウンドに来て雪かきをして3月を乗り切ったという中で、本当に山形のサポーターの方々にはお世話になっているというのと、本当に選手と近いところにいるんじゃないかなと思います。
今週も月曜日にかなりの雪が降りまして、本当にこれは今日は練習はできないなと思った中で、今の時期の雪というのはかなり重たいんですが、そういう雪をサポーターが力を合わせてグラウンドを開いて、まあ、半コートしかできなかったんですけど、半コートを開いてトレーニングをしたというところ。本当にサポーターの方々には頭が下がる思いでいっぱいです。それと、今日はこんなにたくさん山形から応援に来られたというところで、いろんな手段があると思うんですけども、皆さんが来たおかげで力になって苦しい時間帯も乗り越えられたんじゃないかと思います。
正直言うと、もっとシーズンの途中でもたくさんの人が試合を見にきてくれれば、もうちょっと潤うんじゃないかと思います。どうしても山形のチームというのは後ろに大きな企業がないんですよね。私は最初に山形の監督をやっていた時にモンテディオ山形を立ち上げるという中で一緒にやった仲で、本当にいろんな山形の企業の人に協賛していただいてなんとかお金を集めていただいて社団法人という形で始めたんですけど、そのあとにいろんなタイプのクラブ、大分にも行ったりしていろんなJクラブを見てきたんですけど、山形の場合は本当に県民の方々、県の企業の方々が後押しをしないとやはり成り立たないクラブだと思うんですよね。本当にもう少しスタジアムに来てくれたら、もう少しいい補強ができるんじゃないかと思います。
今季、最初はあまり成績が良くなかったものですから、やはり人の入りが少なくて、終盤にお客さんを集めないと来季の編成ができないといろいろマスコミに出させていただいて、マスコミの方に協力していただいてなんとかお客さんに入ってもらうようにしたんですけど、来季はJ1だからもっとお客さんがたくさん入ってくれると思います。ですが、そういう中でやはり結果を残していかないとまた来場者が減ってしまうというところがあるので、本当にチームを支えるためにもぜひホームで、今日(観客が)入っても…。ぜひホームでたくさんのサポーターの方が来季来ることを祈っています」
Q:石崎監督ほどJ1からJ2と全国を駆け回った監督はいないと思います。今までの経験の中で日本にサッカー文化がどれほど根付いているのか体感から教えてください。
「J2からJ1にクラブを上げたのは僕が3回、反町康治(現:松本)が3回、小林伸二(現:徳島)が3回で、僕は3人目なんです。まだまだそういう日本のサッカー生活、生活の中にサッカーが染み込んではいないと思うんですね。やはりどうしても野球と比べると野球のほうが浸透していると思いますし、見ているサポーターの人も野球のことはよくわかる。ただ、やはりサッカーの部分で、今、ヨーロッパのサッカーとかいろんなサッカーがテレビで身近に見られる環境になっていますので、頭ばかりが大きくなっている人たちが多いんじゃないかと思うんですね。そういう中でヨーロッパの人とかよその国の人というのは、自分がサッカーをやっていた人がそういうサポーターとかになっていると思うんですけど、どうしても日本の場合はそういう情報量が多いものですから、それで頭でっかちになって、こんなこと言っちゃいけないか、という部分があるんじゃないかと思うんです。
ただ、山形は私が前にいた20年前ぐらいだとほとんどサッカー文化はなかったんですよね。そういう中でやはりこういうふうに県が中心となって山形にサッカーを残してくれたと。だから、今でこそそのモンテディオ山形というのが山形の中である程度浸透していて、私がまず山形に来てびっくりしたのは、駅を降りたところにモンテディオ山形の旗があったり、車を走らせていると車にリボンマークみたいなシールが貼ってあったりして、僕が以前いたころには考えられない感じで、僕がいなかった16年の間に浸透してきたんだなと思っています。
ただ、やはり本当のサッカーの良さというのはどこにあるかというところで、僕はやはり先ほど話している通り頑張ると、一生懸命頑張る、戦う。まあ、精神的な部分だと思うんですけど、やはりそういうところで人に感動を与えられるんじゃないかなと。下手な人が一生懸命走って戦う。それで、それに刺激されてサッカーが上手な人も一生懸命走って戦うようになってくれば、もっともっと日本のサッカーも強くなってくるんじゃないかと思います。
こんな偉そうなことを言ったら怒られるかもしれないですけど、FIFAワールドカップやアンダー世代の代表を見ていると、たぶん日本のサッカーの育成の部分は間違っていないんだろうと。ただ、やはりそれだけに固執して気持ちの部分でなかなか勝てないんじゃないかと、特にアジアの国などに勝てない。今でもアジアでは下の年代は(国際大会の予選を)突破できていないと思うんですよね。
去年、ちょうど中国にいましてU-18歳年代の選手を教えていたんですが、本当に最初は下手くそで、もうこれはどうなるかと思っていたんですけど、こっちが真摯に接して、中国ではフィジテク(フィジカルとテクニックを織り交ぜたメニュー)とか走らせまくったんですけど、彼らは富裕層で今までそんなことやったことがないという中で、やはりやれば結果がついてきたんですよね。それで一応中国で、その年代では決勝で負けたんですけど、2位になったというところ。それは本当に自分自身にとっても文化の違うところで指導をしてきた成果。言葉が通じなくても気持ちがしっかり合えば、彼らも良くなっていくというところをものすごく感じたんですね。
それで日本に帰ってきて山形にお話をいただいて、日本人じゃけ言葉通じるから大丈夫じゃろうと思って最初入っていったんですけど、やはりなかなかそういうところを受け入れられる選手と受け入れられない選手がいたと思うんですけど、ただ、受け入れられる人がちょっとずつでも増えていったおかげでチームが一つの方向に向くようにはなったんじゃないかなと思います。僕も昔の人間ですので気持ちの部分の話ばかりになってしまうんですけど、気持ちでやっぱり強くなっていかなければ、どれだけ技術があっても出せないんじゃないかなと日々考えています。すいません、偉そうなこと言って。聞き流してください」
Q:今、ハードワークの重要性や気持ちの面をおっしゃっていましたが、それは今季、J1昇格を決めた湘南、松本、山形にすべて共通する部分だと思いますし、戦い方や目指している方向性、3バックを採用していることも含めて共通していると思います。この3クラブがJ1に上がったことの意味というのはスタイルも含めてどのようにお考えですか。
「そうですね。湘南、松本、山形と3バックのチームがJ1に上がったんですけど、ただ、今のままだと頑張るだけではJ1で勝てるほど甘くないと思うんですよね。やはりそれをさらに変化させていくか。いい方向にですね。それが本当に大きなポイントじゃないかなと思います。それは戦力とかそういう部分の問題になってくると思うんですけど、ただ、方向性としては間違えないで今のところを継続しながら、さらにレベルアップできるようにしていかなければいけないんじゃないかなと思います。(Q:共通点はあるとお考えですか)一緒にしないでください」
Q:J1昇格プレーオフは石崎監督は今年が初めてですが、今年で3年目の開催で3回とも3位のチームが勝てない。精神的なものかもしれませんが、その原因や理由で思い至るところがありますか。
「その1年前、2年前をよく知らないんですけど、今回の山形の場合はリーグ戦でも終盤にかけて勢いが出てきたと。それに天皇杯がうまく絡んで、さらに勢いがついたというところで、山形の場合は勢いがあった分、いい方向に出たんじゃないかなと。準決勝で(対戦した)磐田は(リーグ戦の)終盤になかなか勝てない状況があって、そこからJ1昇格プレーオフという形で、やはり終盤にかけてどうチーム力を上げていくか。一番いいのは1位、2位で上がるのがいいと思うんですけど、やはりそういうところがポイントにあるんじゃないかなと思うんですけど、それはちょっとよくわからないんです。(Q:J1昇格プレーオフで選手が気持ちの面で怯んでいるんじゃないか、緊張しているんじゃないかと思ったところはありますか)いや、それはないですね。天皇杯に関しても、今日の試合ももっと緊張するかなと思っていたんですけど、うちの選手は普段通りに相変わらずハードワークしていたんじゃないかなと思います。本当に今日はかなり集中して、特にディフェンスラインなんですけど、かなり集中してできたいたんじゃないかなと。試合でアツくなるやつがたくさんいますので」
Q:今のJ2を勝ち抜くカギになっているような部分、あるいは監督の過去のJ2で昇格した経験を踏まえて今のJ2の勝負を分けるポイントみたいなものがあれば教えてください。
「一つは湘南にしても松本にしても継続があったんじゃないかなと。特に湘南の場合、J1に上がってJ2に落ちたら普通は(監督が)クビになるけど、そのまま継続して監督を代えずにそのままやった結果が今季は本当に素晴らしい成績でダントツの1位で上がれた。やはりそれはフロントの力が良かったんじゃないかなと、考え方とかですね。やはりそういう継続が松本の場合も反町監督がずっと継続してやられている。やはりそういうところが今回の2位という昇格につながっているんじゃないかなと。まあ、千葉の場合は今季で(J1昇格プレーオフは)3回目だと思うんですけど、3回とも監督が違うというというところ。やはりそういうところにもしかしたら大きな問題があるのかもわからないし、山形の場合は1年目なんですけど。以上です」
Q:今日のGKの山岸範宏選手は好セーブが何回かあって、準決勝ではヘディングシュートを決めたりとか、チームにおける彼の役割は大きいと思うんですが、一言いただけますか。
「本当に彼がチームに入ってくれたおかげで一つにまとまった。山岸がチームを引っ張ってくれた部分、それはトレーニングから、ゲームもそうなんですけど、すごく大きなポイントだったんじゃないかなと思います。彼とよくコミュニケーションをとるんですけど、やはりチーム内で問題があった時には僕に相談に来てくれますし、僕自身もそういう相談をしやすい相手というところでうまくコミュニケーションをとれたんじゃないかなと思います。本当に先週はスーパーなヘディングシュートを決めていますし、素晴らしいファインセーブもしてくれるし、ただ、ちょっとキックに難があるんですけど。本当に彼が入ったおかげでといってもいいぐらいの働きをしてくれたんじゃないかなと思います」
Q:最後は胴上げをしてもらっていましたが、その時の心境を教えてください。
「6位で胴上げですからね。恥ずかしくて。あれで、昨日のG大阪みたいに優勝して胴上げならいいんですけど。最初は逃げたんですけど、つかまってしまいました。あまり派手なことは苦手ですから」
以上