まずは何より、G大阪の選手、スタッフ、関係者の方々、ファン・サポーターの皆様へ、リーグ優勝おめでとうございますと心から申し上げたい。
中断期間(2014FIFAワールドカップブラジル大会による)へ入る時の順位は降格圏の16位。そこからこの栄冠を勝ち取るために重ねた努力は並大抵でなかったはずだ。長谷川健太監督も試合後会見で「まだまだJ1のレベルに戻り切れていないということをチーム全体が認識して、それを中断中にみんなが共有しながら“もっと逞しくならなければいけない”という中で、一戦一戦這い上がってこられたのがこの結果に繋がったと思います」と振り返っていたが、シーズン序盤で突き付けられた苦しい現実を必ずひっくり返してやろうと選手全員が決死の覚悟でひとつひとつのプレーに取り組んだからこそ歓喜の瞬間を掴み取れたと言えるだろう。
実際そうした部分は迎えた最終節でも大いに見て取れた。のしかかる重圧から動きに硬さが感じられ、徳島の守備を攻めあぐねはしたものの、それでも何とかこじ開けようと選手たちは常に強い攻撃姿勢で前へ。遠藤保仁を中心に勝利へ結び付くゴールを目指す意欲を示し続けたと言えよう。さらに、発生してきた焦りを突かれて後半何度か大きなピンチを招いたが、それに対しては守備陣が気迫ある対応。絶対に失点を許さないという気概がひしひしと伝わってきた。
いずれにしろこの一戦でもG大阪が全員で向上させてきた“逞しさ”を失わなかったのは間違いない。だからこそ、ドローに終わりはしたが、最後に勝利の女神が笑みをたたえて振り返ったのだろう。
そして徳島についてだが、この最終戦、意地とプライドは十分に見せた。そう評価していいはずだ。もちろんJ1ホーム初勝利が叶わなかったのは残念であるし、勝点ではシーズン最低タイという不名誉な記録も背負ってしまうことになった。だが、シーズンを締めくくる一戦の内容は気持ちが最大限に込められたもの。贔屓目なくそのように言える。
事実、ゲームを振り返ると、攻守両面でより効果的なシーンを作っていたのは徳島の方であった。
チームは序盤から自分たちの戦いのベースである守備を非常にいい精度で展開。それはG大阪の今野泰幸に「前線のプレスバックとかも凄かった。きちんとポジションにも戻るし」と言わしめるほどで、ポゼッションを握られても組織全体でしっかりボールをサイドへ追い出し、決してバイタルエリア中央を突かせなかった。また最終ラインの福元洋平や橋内優也、アンカーに入った斉藤大介は高い集中とこれまで以上の厳しさをもってチャレンジ&カバーを実践出来ていたと言っていい。G大阪の宇佐美貴史が時間を追うごとにプレーエリアを後方へ下げていったのは、疑いの余地なくそれによって彼にプレーのし難さを与えた結果である。
同時に攻撃面でも徳島は躍動。回数こそ多くはなかったが、チャンスと見るやスピーディーな切り替えでG大阪ゴールを目指した。加えて後半は相手に出てきた焦りを見逃さず、それを好機へ結び付ける場面も。71分、コントロールミスした今野からエステバンがボールを奪ってフィニッシュまで辿り着いたのも、そうした狙いを持ち続けていたからこそだ。
とは言え、それほどのゲームをしながら勝てなかったことには真摯な姿勢で向き合う必要があろう。でなければここでの悔しい経験が単なる経験だけになってしまう。徳島はこのドローゲームも今後への大きな反省点と捉え、忘れることなく意識し、力の積み上げへ何としても繫げていかなくては。
「結果はついてきませんでしたが、J1で戦えたことに誇りを感じていますし、来年はJ2ですがこの舞台にまた戻って来られるように、今季一年戦ってきたことを無駄にすることなく、チームとしても個人としても努力したいと思っています。そしていつか優勝を争えるようになりたいと、そんな気持ちでガンバのセレモニーを見ました」とは斉藤の言葉だが、それは間違いなく徳島の選手たち全員が同じのはず。
その想いを持ち続けたならきっと大丈夫。徳島はまた遠からずJ1のピッチへ戻って来れることだろう。
以上
2014.12.07 Reported by 松下英樹