激動の2週間だったが、もう気持ちの整理はついた。自分たちらしいサッカーを見せて、シーズン最後の試合を勝利で締めくくる。浦和の選手たちは名古屋戦に勝つことだけに集中している。
リーグタイトルへの道のりは最後の最後に険しくなってしまった。前節の鳥栖戦で終了間際に追いつかれたことで第19節から保持していた首位の座から陥落。トップに立ったG大阪とは勝点62で並んでいるものの得失点差が7もあるため、G大阪が引き分け以下の結果に終わらなければ逆転優勝はほぼ絶望的だ。たった2週間前まで優位な状況にいたはずなのに、今や崖っぷちに立たされている。
だが、浦和の選手たちに悲壮感はない。練習の雰囲気もいい。紅白戦では声もよく出ているし、ポジティブな掛け声も聞かれる。空気によどみはなく、心地良い緊張感が伝わってくる。
勝って終わりたい。選手たちは純粋に勝利することだけ考えている。
この2週間、おそらく誰よりも苦悩していた柏木陽介は言う。「いい意味で開き直りがすごい。G大阪に負けた時よりも今の方が開き直れている自分がいる。こういう状況になった時、いろんな風に声をかけて、支えてくれる人がいることも感じられたから、そういう人たちのためにも、自分たち自身のためにも最後勝って終わりたい」。
他会場のことは自分たちでどうすることもできない。だからこそ、自分たちにできる目の前のことに注力する。「勝って、結果を待つ。あの数十秒がたまらなくドキドキする。また勝って、試合が終わった後の緊張感を味わいたい」。そう話すのは昨シーズン、広島で最終節に逆転優勝を成し遂げた守護神の西川周作だ。
ただ、その浦和の前に立ちはだかる名古屋もおいそれと勝ちを譲る気はないだろう。今シーズン、名古屋はヤマザキナビスコカップを含めて浦和とは2度対戦しているが、いずれの試合も黒星を喫している。
特に6月1日にナビスコカップ予選でぶつかった際には、埼玉スタジアムで5─2の大敗を喫している。その屈辱を晴らし、満員に膨れ上がったスタジアムで浦和サポーターを沈黙させてやろうと考えているはずだ。なかでも田中マルクス闘莉王は打倒・古巣に向けて誰よりも闘志を燃やしているに違いない。浦和への愛着が強かった分だけ気合が入るのは当然だ。
名古屋はここ5試合で2勝3分けと負け知らずだ。仙台、徳島、清水、大宮と降格圏や残留ラインをさまよっている下位チームとの対戦が含まれていたとは言え、現在4試合連続2ゴール中で気持ちはかなり乗っているだろう。
泥臭い形でも貪欲にゴールを狙ってくる川又堅碁、スピード自慢の永井謙佑や田鍋陵太、アギーレジャパンに定着しつつある田口泰士など、個の特徴がハッキリした実力者が揃っており、一瞬で戦況を変える力がある。片時も集中を切らさないようにしたい。
特に名古屋のセットプレーは要警戒だ。強さと高さを備える名古屋は一撃必殺の飛び道具でチーム総得点の4分の1程度を稼ぎだしている。また、スピードを生かしたカウンターも鋭い。名古屋は試合の流れと関係のないところからゴールを奪えるポテンシャルがある。
浦和は前々節のG大阪戦ではセットプレーを跳ね返されたところからカウンターを受けて失点を喫し、鳥栖戦では相手のセットプレーに沈んだ。浦和の選手には攻守両面においてセットプレー時に高い集中力が求められる。
那須大亮は「名古屋はセットプレーの強みがあるし、前線で川又や永井ら動きをつけられる選手がいるので、カウンターも危険。川又はクロスの入り方も上手なので注意しないといけない」と気を引き締める。
泣いても笑っても、これがシーズン最後の一戦だ。人事を尽くして天命を待つ。浦和にできることはそれだけだ。
以上
2014.12.05 Reported by 神谷正明