最終節、まさかこれほどの大一番が待っていようとは──。徳島にとってJ1ホーム初勝利へのラストチャンスとなるこの一戦は、自力でのリーグ優勝がかかったG大阪を迎えるという大注目の構図。両者どちらも勝利以外意味がない状況であるため、そこにはもう今から並でない緊迫感が漂っている。さらに徳島については、ここでの結果が今季の存在印象をガラリ変えると言えよう。負ければホーム未勝利、シーズン最低勝点記録更新となる上、最後G大阪に優勝まで決められたチームとなって非常に不名誉なそれしか残らないが、逆に勝てば一転。前のふたつを関係ないものにし、土壇場でリーグ優勝の行方を劇的に動かすサプライズを起こしたチームとして興味深く記憶されるはずだ。
それだけにやはり徳島は勝利を譲れない。力の限りを尽くして是が非でも白星をもぎ取らなくては。
とは言え、G大阪との間に小さくない差があることは認めざるを得ないだろう。A代表の遠藤保仁、今野泰幸、前節でも規格外の才能を見せつけた宇佐美貴史らを擁す彼らの組織力はワンランクもツーランクも高いところにあり、そう簡単に対抗出来るものではない。またG大阪は今年2つ目のタイトル(ヤマザキナビスコカップが1つ目)奪取に向けた最高のモチベーションも纏っている。それゆえ選手たちの見せる激しさと勢いは恐らく予想以上に強烈なものであろう。
しかし徳島にとってすれば、力量や立場にそうした大きな違いがあるからこそ、つけ入るところが生まれ易いと言える。それはやはり精神的な部分で、G大阪に精神的な焦りを強く感じさせる戦いが出来た時には徳島もきっと勝機を見つけ出せるはずである。
そしてそれを狙いとするなら当然先制点を許すことは禁物だけに、チームには守備の出来が何より問われる。個でも組織でも脅威を作れるG大阪の攻撃を粘り強いハードワークで、しっかり我慢し続けなければならない。そこでポイントのひとつとして浮き上がるのがグループとしての連動対応。具体的に言えば、チャレンジ&カバーをどれだけ精度高く継続して出来るかという部分だろう。事実、それを実践した前々節では上位の鳥栖にもほとんど決定機を作らせず、それによって後半には鳥栖の選手たちに大きな焦りを与えていた。惜しくも失点シーンだけは相手の変化に対応し切れなかったが、それ以外では非常にいい守りの安定感を生み出せていたと言っていい。
もちろんそうした守備が今節も同じようにハマるとは言い切れない。ただ、その徹底がG大阪に少なからず戦い難さを与えるのは間違いないと思われるだけに、徳島はピッチに立つ全員が最大限の意思疎通と集中をもってそれを体現していくべきであろう。
厳しい現実をほぼ毎節のように突き付けられた今季。選手たちはもちろん、ファン・サポーターも、多くの辛さを味わうことにはなってしまった。だが、そうであっても今年一年の経験は決して他では得られない貴重な財産。再びJ1を目指してリスタートすることになる来季の力へ必ず繋がっていく。
果たして徳島は、今年のJ1のクライマックスとして最高の注目を浴びるこの一戦でどのような戦いを披露するであろうか。「首位のガンバ大阪が相手とはいえ1年間やってきたことを最後にどれだけ出来るかがこの試合で大事だと思いますし、簡単に優勝させてはいけない。応援してくれるサポーターのためにもホームで勝利することが、来年にもつながると思うので、全員で90分間戦っていきたいと思います」というキャプテン斉藤大介の言葉に期待を寄せて開始のホイッスルを待ちたい。
以上
2014.12.05 Reported by 松下英樹