「環境も状況も非常に似ているチームだ」。秋葉監督は昨季の就任当初から愛媛についてこう話していた。秋葉監督と石丸監督は、福岡時代のチームメイトでありS級ライセンスの同期。ふたりは昨年、群馬と愛媛の指揮官に就任し、2年間にわたりチームを率いてきた。そして奇しくも、両者ともに、この最終戦を最後に退任することが決まっている。そんな両監督が、敷島で“最後の戦い”を演じる。
群馬と愛媛は2004年のJFL時代、J昇格をかけて火花を散らしたライバル同士だった。群馬は2005年、愛媛は2006年にJ2に参入。大きな夢を抱いてJの舞台へと駆け上がったが、この10年間、ともに厳しい戦いを強いられてきた。現在の順位は愛媛が17位、群馬が19位。松本や北九州、岡山など新興勢力に遅れを取る形で、ともに下位に低迷。クラブとして正念場となっている。今季のホーム平均入場者数は群馬が3689人(リーグ20位)、愛媛が3820人(リーグ19位)。ありきたりな言葉だが、チーム、サポーター、地域のつながりをクラブがもう一度確認する必要がある。
最終戦は、サポーターがクラブへの愛情を再確認する場だ。どんなに辛く苦しいシーズンでも、最終戦だけは特別。感傷的な要素が加わり、感動的なイベントとなる。ただ今季は例外かもしれない。群馬、愛媛ともに監督の退任こそ決まっているが、プレーオフ日程などの関係で、選手の去就発表は、愛媛の功労者・関根永悟の契約満了以外に行われていない。となれば、みせるべきものはフットボール。それはサッカープレーヤーとして本望だ。両チームともに、これまで築き上げてきたサッカーのすべてを最終戦の場で表現して、サポーターの審判を問うことになる。
両チームともに、今季は前線のプレーヤーたちがエキサイティングなゴールを生み出してきた。この最終戦で、一つでも多くのゴールを決めることがチームの信任へとつながる。群馬は、ロビーニョ(13点)、平繁龍一(7点)、青木孝太(5点)の3人で計25ゴールをマーク。彼らの活躍がなければ今季も降格争いに巻き込まれていたことは間違いない。3人の存在は、この2年間の財産のひとつ。クラブが継続したチーム作りを遂行するなら、来季も残さなければいけない戦力だ。前節東京V戦で50メートル独走弾を決めたロビーニョは「この2年間で自分は大きく成長できた。最近は勝てていないので最後は自分のゴールでサポーターへ勝利を届けたい」と最終戦へ臨む。
一方の愛媛は、西田剛(10点)、河原和寿(12点)、堀米勇輝(8点)の3人で計30点、チーム総得点の約6割を稼ぎ出す。3人のアグレッシブな攻撃は観ていて清々しく、型にハマったときの愛媛は強さを発揮する。最終戦は、西田が出場停止となるがゴールへと向かうスタイル自体は変わらない。アウェイでの最終戦となるがゴールラッシュで、ベテラン関根、そして石丸監督の花道を飾りたいところだ。
群馬にとっても秋葉監督のラストゲーム。クラブ初のOB指揮官としてチームをまとめた秋葉監督は「この2年間でチームに何が残せたかは自分では分からないし、自分で答えを出すものではないと思っている。サポーターやスポンサーなど見守ってくれた方々が判断してもらえれば」と話した。群馬が最終戦でどんな戦いをみせるか。2年間の答えは、ラストバウトのピッチ上にある。
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2014.11.22 Reported by 伊藤寿学