90分の時点までは1点のリードを奪っていた。あとは逃げ切れば良かったはずだ。しかし、最後まで勝負を諦めていなかった水戸にあっという間にふたつのゴールを奪われ、勝点3を失った。試合後に高木和道は「逃げ切れなかったのが全て」と力なく語り、為田大貴は「残念という言葉しかない」と受け入れ難い現実を整理できていない様子だった。
試合序盤こそ水戸に主導権は握られたが、25分にCKから 風間宏矢が先制してからは、五分五分の展開だった。後半に入り一度を追いつかれるも、63分に若狭大志のパスを受けた為田大貴が、スピードに乗ったドリブルで相手DFを一気に抜き去り追加点を奪う。その得点シーンの勢いそのままに、その後の大分の攻勢は続いた。ほとんどの時間帯で「狙い通りに試合を進めることができた」と田坂和昭監督が語るように、前線からの守備を意識し、ボールを奪えば為田が「ゴールまで矢印が向いていた」と語るようにショートカウンターが実に効果的だった。
ところが85分を過ぎたあたりから勝利を意識し過ぎたかの、奪ったボールをキープするのか、攻撃に転じるのかチームの意思が重ならなかった。最終ラインを思い切って上げれば、状況は変わっていたかもしれない。あるいは、前線の選手を自陣まで引かせ、低い位置でブロックを作るという手もあっただろう。いずれも、意思統一さえ図っていれば、アディショナルタイム4分の惨劇は防げていたはずだ。
指揮官は「もう終わったことは仕方ない。残り2ゲームあるのでしっかり準備したい」と前を向いたが、昇格を狙ううえで、詰めの甘さは致命的になりかねない。
一方、水戸は柱谷哲二監督が「前節はアディショナルタイムに追いつかれた悔しさを強いメンタルに変えた」と語ったように、常に追いかける展開であっても、「最後まで諦めずに勝利への執念を持ち続けて戦った」(柱谷監督)。
交代のカードが全てFWとベンチからのメッセージも分かりやすく、1枚目のカードとなった馬場賢治は3得点全てに絡み、2枚のカードとなったオズマールは何度も最終ラインの裏へ抜ける動きを繰り返し、大分の守備陣を翻弄した。
采配がピタリとハマり、アディショナルタイムで一気に逆転したチームは、リーグ終盤にきて、今最も輝きを放っている。監督も選手も全員が「早く次の試合をしたい」という雰囲気を漂わせ、大分を後にした。
以上
2014.11.10 Reported by 柚野真也