この時期のリーグ戦は深秋の落葉樹に似ている。残り試合が少なくなるにつれて、昇格可能性を残すクラブがひとつ、またひとつと減っていく。プレーオフ制度導入により、その時期は全体的に終盤にスライドしたものの、最後まで昇格という名の木につかまり続ける難しさ自体に変わりはない。前節、湘南に続き松本が自動昇格圏内を確定し、昇格レースは完全に残る1枠をめぐるプレーオフ権争いに移っている。その松本の昇格をホームで見届けた福岡は同時に、今シーズンの昇格可能性が消滅。いまだ可能性を残す山形も、現在は勝点2差分の「圏外」にある。その差を詰め、圏内に入り込むのは容易な道ではない。残るは3試合。攻守にわたりチームを牽引する川西翔太は「自分たちが勝たな上に行かれへんと思うし、自分たちは3つ勝って、あとはほかがどうなるかというところ」と勝ち続けなければならない状況への覚悟を語った。この先対戦する3チームにはそれぞれの状況に置かれ、勝ち進むにつれて周囲も騒がしくなるが、「自分たちの長所を前面に押し出す」というもっともコアな部分を見失ってはならない。
退場者を出した前回のホームで横浜FCに2-4と敗れ、連勝を「3」に伸ばせなかった山形は、前節・熊本戦で3-1と勝利。宮阪政樹の直接フリーキックと山崎雅人の2ゴールで前半を3-0と優位に進めた。半面、後半はロングボール主体に押し込む熊本に後手を踏み、フリーキックから失点を喫している。失点シーンのほかにも、相手のスローインから上げられたクロスに対しマークがズレてあわやというシーンもある。守備は安定しているように見えるが、前線からのプレッシングやプレスバックをかいくぐられると危うい展開に持ち込まれることも多い。残り3試合+2を勝ち続けるには、そうした修正を粘り強く続けていくことも必須条件だ。負傷や出場停止でバックアップの駒不足が懸念されていた守備陣では今節、キムが出場停止を解かれ、次節以降も選手が復帰見込み。明るい兆しはあるが、サドンデスはそれを待たない。目の前のこの一戦がすべてだ。
ボールを積極的に前に運び、そのボールを追い越しながら敵陣ゴール前に人数をかける福岡の攻撃は、その分、浅いラインの裏をカウンターで突かれやすい。前節・松本戦も守備の陣形を十分にセットする間もない状態で何度も速攻を受け、クロスに対しては粘り強く跳ね返したが、縦の槍を2度受けきれなかった。今季ここまでの総シュート数398本に対し、被シュート数は455本。「ハイリスク・ハイリターン」でJ2屈指のスリリングなサッカーを展開しているが十分なリターンは得られず、先にゴールを割られるケースも多い。直近で先制した試合は2節前にオウンゴールを挙げた栃木戦だが、その前となると1-0で勝利した8月24日の第28節・岐阜戦まで遡らなければならず、直近の無失点もその岐阜戦以降ない。
3試合を残して6位との勝点差は11まで開き、今シーズンのプレーオフ進出の芽は消えた。これをもって今週、クラブは2シーズン指揮を執ってきたプシュニク監督の今季限りでの退任を発表。同時に神野卓哉チーム統括部長の退任も発表され、来シーズンは新体制で臨むことになった。プシュニク体制で臨む最後の3試合は、ダイレクトに来季へ向けたものというより、この2シーズンめざしてきたスタイルをさらに追求するようなものになるだろう。今節の勝点3を持ち帰り、ホーム、レベスタで迎えるラスト2試合へ弾みをつけたい。
前回対戦は第15節。宮阪、ディエゴを経由して中央を割ったスルーパスに中島裕希が飛び出し、山形が12分に先制した。多くの時間で主導権を握り、攻め込む機会も多かった山形が無失点のまま勝利したが、決定力を欠いて得点はこの1点に留まった。互いにフォーメーションが4バックから3バックに変わっているが、今節も山形が狙うのは前線からの守備。高い位置でプレッシャーをかけることで奪ってからのショートカウンターを狙い、奪えずとも相手の攻撃を制限することで後方の守備の負担を軽減する。また、山形の前線3人が絡むカウンター攻撃はスピード感のなかに精度もあり、ラインを上げて対抗する福岡には脅威となるが、それを恐れて腰が引けては福岡も攻撃のチャンスをつかむことはできない。両チームとも自陣で守備に追われたりプレッシャーを受ける展開を避け、敵陣でのプレーを増やすのが理想だ。リスクをうまく管理しながら、よりアグレッシブに攻撃的な長所を打ち出せるのはどちらか。勝点3を奪い合うNDスタの90分は、ハードワークをベースにした激しい攻め合いにもつれ込みそうだ。
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2014.11.08 Reported by 佐藤円