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【J2:第38節 山形 vs 横浜FC】レポート:数的優位を生かした横浜FCが4得点で2連勝!山形は2得点で食い下がるも連勝はストップ。(14.10.27)

この試合最大のターニングポイントは22分。リスタートのボールを受けた舩津徹也が前方の山田拓巳に預ける。縦を塞がれ再び舩津にリターンされたボールを、今度は浮かせてさらに奥へ。下りる山崎雅人と入れ替わりで右スペースに飛び出したのは松岡亮輔。右足アウトの絶妙なトラップからニアへのクロスにディエゴが飛び込んだが、中へ絞ってからだを寄せた野上結貴と接触。ここで主審のファウルの笛が吹かれたが、ファーサイドに流れたボールを、走り込んだキム ボムヨンが蹴り込みゴールネットを揺らした。「遅延行為」によるイエローカード。キムは6分前にも警告を受けていたため、2度目の警告で退場となった。10人になった山形は、キムがいたウイングバックに山崎雅人を下げ、3−4−2で対応。最大のストロングポイントである山崎とディエゴ、川西翔太のトライアングルを早くも手放さざるを得なくなった。

数的優位に立った横浜FCは「自分たちが主導権を握って回しながら隙を突くということをやっていた」(松下年宏)とじっくりとボールを握り、動かした。山形は3−4−2のウイングバックを下げた5−2−2の構え。しかし、前線が2人では連動したプレスがかからず、両サイドに大きく空けた通路を横浜FCの野上、永田拓也の両サイドバックに自由に往来された。小池純輝、松下年の両サイドハーフも中央寄りのポジショニングでフォワードの黒津勝をサポートするほか、中央でも数的優位を生かしていた。流動的な動きを繰り返す味方を、小気味よくリズムを刻むパスと、ときに鋭く縦に入れる勝負のパスで寺田紳一が動かした。

「一人少なくなったチームというのは0−0で耐え忍んで、相手を焦らして焦らして、こっちは我慢して我慢して、あわよくば1点取って勝点3、最低でも引き分けを得るというのがパターンだと思うし、定跡だと思ってた」と話したのは松岡。しかし、横浜FCにゴールが生まれたのは、キムの退場からわずか6分後のことだった。右コーナーキックを得た横浜FCはファーサイドに流れたクリアボールを寺田が拾うと、1対1から縦に仕掛けてニアへ低いクロス。黒津がマークを剥がして飛び込み、ヘディングでゴールネットを揺らした。この得点につながったのは、1分ほど前のシーン。右から左へサイドを変えたボールを野崎陽介がスルーパスに換え、走り込んだ永田が敵陣深い位置でファウルを受けたプレーだった。

10人の戦いで先制点を与えた山形は、しかしここから本領を発揮する。38分、相手のバックパスのタイミングで川西がGK南雄太へプレッシャーをかけると、右に開いた安英学へフィードされたボールにはディエゴがチェイス。接触プレーで安が倒れている隙にディエゴが素早くリスタートすると山崎も呼応。再びボールを受けたディエゴが前線にボールを送った先で、すでに動き出していた松岡がダイビングヘッド。南の手が弾いたボールはゴールマウス内側へと転がった。ここまで数々の決定機を逃してきた松岡の、チームを救う同点ゴール。しかし松岡本人は、その前の失点に絡んだこともあり、「ただ追いついただけのゴール」と派手によろこびを表現することはなかった。

後半に入ると、山形は川西を中盤に下げて5−3−1に。相手のサイドバックへの対応がある程度可能となり、ボールを奪う回数が増えたことでカウンターで返すシーンも増えてきた。押された立ち上がりをセーフティーなプレーで凌いでいた横浜FCは、52分に早くも最初のカードを切る。野崎に代えて投入されたのは2ヶ月近くピッチを離れていた市村篤司。この市村と永田をウイングバックとする3−4−3にシステムを変更した。ワイドに人を配置するこの采配が効果を上げ、再び押し込む展開に持ち込むと、コーナーキックの流れで相手のクリアミスを拾った永田がそのままドリブルでラインを突破し、クロス。ゴール前に残っていた野上は早めのジャンプで落ち際のヘディングとなったが、執念で枠まで飛ばし、横浜FCが再びリードした。

山形は68分、山崎に代えて伊東俊を投入し、システムも4−4−1に変更。本来はシャドーの川西と伊東をサイドハーフに配置したが、4分後にはボランチの松岡を下げて中島裕希を投入。川西がややバイタルをケアするものの、4−1−3−1でリスクを冒す方法をチョイスする。しかし75分にファウルで与え、フリーキックを松下年に直接決められ点差は2点に広まった。横浜FCは足をつった永田に代えて西嶋弘之を投入し再び4バックに戻したが、中島の突破を西嶋が止めきれず、与えたフリーキックから當間建文に決められて1点差に迫られた。しかし、アディショナルタイムにはゴールキックから得点。黒津がヘッドで落とし、スペースのあるバイタルエリアで寺田は収めきれなかったものの、小池が引き取って中央をドリブル。すでに足が限界に来ていた山形の守備をスルスルと抜け、飛び出した山岸範宏をもかわしてゴールに流し込んだ。

結果は2−4。3連勝とならなかった山形は、ようやく越えたばかりのプレーオフボーダーラインを逆戻りし、3連敗後の2連勝となった横浜FCはまだ遠くに見える可能性に望みをつないだ。イレギュラーな展開のなか、システム変更による戦術的なせめぎ合いも試合の興味を高めた。山形が一人少なくなってから2点を奪ったのは、勝利をあきらめなかった証であり、限られた状況で何をすべきかを模索し続けたという点で評価できるもの。「数的優位のなかで2失点したというのはもったいないし、自分たちを苦しめている」(松下年)と反省点もある横浜FCも、山口素弘監督は「狙いを持ってサイドから行くというところでそういう点も取りましたし、このところ得意としているセットプレーから点を取った」と数的優位の状況を生かすことができたとし、「全般的には非常によくやってくれましたし、この時期、特に自分たちにとって一番重要なのは勝点3なので、それを取れたというのはよかったと思います」と総括した。

山岸が言う。「こういう敗戦、非常に悔しさは大きく残りますが、これでチームがバラバラになるとか、自分たちがいままでやってきたことを見失うとかそういうことではなくて、またアウェイの熊本戦で勝点3、勝利をつかみ取れるように、また明日からいい準備を、勝つための準備を進めていきたいと思います」。苦しい試合を最後まであきらめなかったチームには、残り4試合、堂々と昇格を争う資格がある。

以上

2014.10.27 Reported by 佐藤円
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