10月上旬から芝の養生のため主練習場の新門司球技場ではなく、本城のサブ運動場を使ってきた北九州。その養生期間がようやく終わり現在は新門司の美しく生えそろったピッチを使っている。

新門司に戻った10月23日。全体練習が終わったあとも選手たちは芝の感覚を確かめるようにしばらくはトレーニングをしたり、ストレッチをしたりと思い思いに汗を流していた。その模様を眺めながら芝の上に座り、時に笑顔を交え、時に難しい表情を浮かべながら話し込んでいた２人の選手がいた。北九州の盤石の守備とゲームの構築に中心的な役割を果たしている前田和哉と八角剛史の２選手だ。彼らはおよそ20分にわたって言葉を交わしていた。その中身を問われた前田は「雑談ですよ」と濁しつつ、「個々個人がもっと頑張らなくちゃいけないことがあるんじゃないか」と少しだけ話の内容を明かした。ゲームをコントロールする立場にある両選手から見えるピッチ上の景色。まだまだやれることがあるという考えで一致していたようだった。

ホームゲームは今節の岐阜戦と２週間後の湘南戦の２試合限り。本城のファンやサポーターに今季のチームを見せつける機会は少ない。アウェイ戦も含めても残りは５試合で、高いモチベーションで向かってくる相手が続く。
すでに37試合を消化、もちろん北九州の戦術は成熟し浸透している。他方で相手チームの研究も進む。この状況の中で勝利を引き寄せ、３位やあるいは２位へと上り詰めるには、まさに『もっと頑張る姿勢』が求められている。具体的に言うならば、前線、最終ラインを問わずボールを奪う意識を高く持ち、攻撃へと転じたときには繋いだり受けたりする気持ちを行動で示すことだ。「単純なミスがまだ多い。（パスを）出せずに持ちすぎてミスをすることもある」と指摘する前田も、質を高めるには気持ちが大切だという。「自分に蹴っておけばなんとかなる、ミスをしても自分が付いているというプレーをしたい。それがサッカーだと思う。しんどい時でも繋いでくれたんや、見ててくれたんや、というプレー。いかに苦しいときでも思いやることが大事だと思う」――。

対する岐阜は前節、水戸に０−２と惜敗している。ただ試合を通じて岐阜らしさが見られた。高地系治が狭いスペースにもパスを通してチャンスを作ったり、遠藤純輝が好位置でボールを受けてシュートまで持ち込みゴールに接近。守備面ではDFに当たってコースが変わるなど不運があっての失点となったが総じて安定していた。こうした攻守に力強さのある岐阜。北九州の八角は横浜FC時代に一緒にプレーしていた選手を挙げ、岐阜への対策を練る。「自分のところと高地がマッチアップし、ナベ（渡邉将基）のところではナンちゃん（難波宏明）が競る。それぞれの場面でいろいろな駆け引きが出てくるんじゃないか」。スコアに直結するポジションで繰り広げられるだろう手の内の知る選手同士の競り合いは楽しみだ。

現在Ｊ２の得点ランキングで５位に付けている池元友樹とナザリトの直接対決にも注目。ともに14ゴールを挙げており、３位タイの前田遼一（磐田）、ウェリントン（湘南）との差は２点。この試合で追いつくことももちろん可能だ。
前節の東京Ｖ戦では最終盤に鮮やかなゴールを決めた池元。今回の岐阜についてはそのナザリトの出場の有無で「（戦い方が）変わってくる」と分析する。ナザリトは２試合にわたって出場していない。ただ池元は「他にも個が強く中盤にも経験豊富な選手がいるし、しっかり繋いでくるイメージだ」と警戒。北九州のゲームの入り方として「前回の試合で出た課題はミーティングでも出せた。みんなが同じ方向を向いて意識してやることが大事」と、やはり意識統一の必要性に言及していた。

北九州はこの試合に勝てばクラブ史上最高順位の３位に手が届く可能性がある。また岐阜も現在は15位だが11位の横浜FCとの勝点差はわずかに３。得失点差こそあるが残り５試合で大きくジャンプアップすることも可能だ。チームが成熟期にある今、勝利を引き寄せる最大のポイントは、当たり前のことかもしれないが気持ちで負けないこと。ピッチ上の11人が同じ目的を持ち『もっと頑張る』姿勢を出せるか。ハートを見せつける90分が始まろうとしている。

以上

2014.10.24 Reported by 上田真之介