7連勝中のG大阪は、「前回対戦してなかなかマッチアップできなかった」(長谷川健太監督)とシステム上の理由から、中盤の並びをアンカーに明神智和、右に阿部浩之、左に今野泰幸、トップ下に遠藤保仁を置くダイヤモンド型に変更し、柏の3−4−2−1に対応した。
だが中盤の並びを変更した効果はあまり見られず、前半唯一の決定機といえば、28分にポストを叩いた遠藤のミドルシュートのみだった。
それでも、そのポスト直撃のシュートが生まれた時間帯の前後から、G大阪は柏にマークを掴ませない位置でボールを受けて、相手をいなす折り合いを見つけたのだろう。上記した遠藤のミドルシュートも柏のマーカーを剥がしたからこそ生まれた場面だったが、後半もその流れを引き継ぎ、G大阪が柏のマークを剥がしながらボールを握って攻め込むという流れへ。61分、連戦のために温存していたパトリックを投入すると、さらに前線で起点ができ、G大阪がより深い位置を取れるようになる。
68分、G大阪にこの試合最大の決定機が訪れる。今野とのワンツーで抜け出した宇佐美貴史がペナルティーエリア内で前を向き、GKと1対1の場面。これはタイミング良く飛び出した桐畑和繁が宇佐美のシュートをストップ、そのこぼれ球を再び宇佐美が拾い、中に切れ込んでシュートを放つも枠を逸れた。「あそこで決めていれば試合の展開は変わった」と宇佐美自らが語る、この試合の大きな分岐点だった。
後半は劣勢に立たされた柏には、「今すごく調子の良い相手なので、後ろの選手たちは常に声を掛けながら、一番危ないところをケアしようと割り切って守っていた」(大谷秀和)と、むやみに前から取りに行かずに、自陣の深い位置にブロックを作ってコンパクトな陣形の中で守備をしていく狙いがあったようだ。
最後の局面では3バックが連動してG大阪の攻撃を遮断し、裏を取られてもタイミング良い飛び出しを見せる桐畑が相手より先にボールにコンタクトして難を逃れる。水際で耐えしのぎながら、じっとチャンスを待つ。前節、10人で戦い、苦しい展開を強いられた中で終盤の逆転ゴールで勝利を収めた鹿島戦が、成功体験として生かされているかのようなしぶとい戦い方を見せた。
終盤もG大阪がボールを握るという構図は変わりない。しかし、逆転優勝のためには勝利が義務付けられているプレッシャーや、リーグ、天皇杯、ヤマザキナビスコカップという3つの大会を戦う過密日程に加え、雨のぬかるんだピッチ状況で普段以上に疲労の色合いが濃く出てしまったのか、攻勢の中にもわずかにミスが発生し、そこを突いた柏がラスト10分はカウンターからキム チャンスと橋本和の両翼を使い、ゴール前まで押し返す場面を作った。
そして、この雨中の決戦に決着をつけたのは、前節に続き途中出場の太田徹郎。左の橋本から大谷、茨田、キム チャンスとピッチをワイドに使った柏らしい展開から、レアンドロとのワンツーで抜け出したキム チャンスがクロスを放ち、DFに当たってコースが変わると、「ここに来るだろうなと思った」と待ち構えていた太田がワントラップしてシュート。スリッピーなピッチにボールが滑り、ゴールネットを揺らした。G大阪の連勝をストップするとともに、ホーム日立台の無敗記録を13に伸ばす大きな一発となった。
ここで勝っていれば浦和との勝点差が2にまで縮まっただけに、終始押し込んでいたG大阪にすれば痛恨の敗戦である。ただ、「次のFC東京戦からどれだけ勝っていけるかが大事なので、うまく切り替えて自分たちのサッカーをして勝てるようにやっていければいい」と宇佐美が語ったとおり、敗戦を引きずらずに切り替え、次から再び勝ち続けていくことができれば、浦和との直接対決が残されているとあって優勝の可能性は十分にある。
柏も、一時は絶望的かと思われたACL出場圏内が、この連勝で3位鳥栖に勝点6差に迫った。もちろん、まだ難しいことは承知だが、この2試合で鹿島とG大阪相手に見せた柏らしいしぶとく、したたかな戦いを最終節まで続けることができれば、1試合ごとにACL出場権獲得の可能性は増していくはず。「残り全勝して、勝点を60にする」(大谷)ことが、今の柏の最大の目標である。
柏もG大阪も目標は違う。だが、双方に共通して言えることは、12月6日の最終節まで自分たちが勝ち続けるしか、道は残されていない。
以上
2014.10.23 Reported by 鈴木潤