現在J1トップの55ゴールを挙げている鹿島。ここ5試合では、3連勝の後にG大阪と柏に敗れて順位を4位に落としたものの、敗れた2試合とも2ゴールを挙げており、鹿島らしさが消えているわけではない。今季のリーグ戦でも無得点試合はわずか2試合のみという攻撃力を誇っている。首位・浦和との勝点差は7。残り6節で逆転優勝を狙うには、今節の神戸戦は重要な一戦となるだけに、むしろ攻撃の姿勢は加速する可能性もある。
一方の神戸は、ここ5試合で1勝2分2敗と苦しい戦いを強いられ、順位も9位に後退。第26節の広島戦から3試合連続で先制に成功しながら勝ち星を逃すなど、内容と結果の反比例に悩まされている。とはいえ、第23節のF東京戦から6試合中5試合でマルキーニョスがゴールを挙げ、現在の得点ランキング2位タイ(13ゴール)にマルキーニョスとペドロ ジュニオールの2人がランクイン。攻撃力という点では神戸も負けてはいない。首位との勝点差は15。今節を落とせば悲願の初タイトルが消滅する可能性もあるだけに、現実的な目標はACL出場圏内(3位以内)かもしれない。だが、神戸の安達亮監督は「個人的にACL出場を目標にする考えはない」と話す。
「実際にタイトルは厳しいかもしれないけれど、ACL出場は優勝争いをしたチームに結果的に付いてくるものだと思っている。ACL出場圏内に滑り込もうという考えで戦って仮りに出場できても、その先(ACLでの活躍)はないでしょうから。だから、今はできるだけ順位を上げることしか考えていないです」
同じように、キャプテン相馬崇人も目の前の試合に集中することを念頭に置いている。「自力で優勝はできないので、とりあえずどれだけ勝点を積めるか。その結果として順位があるものだと思うので。1年を通して、どんな順位の相手でもやれる自信はできているし、鹿島に関しては今季のリーグ戦でも、ヤマザキナビスコでも勝っている。僕らがネガティブになることはない」
4月19日の第8節の対戦では、神戸がアウェイで15年ぶりに鹿島を下している。5月28日のヤマザキナビスコカップ予選リーグ第6節では再びアウェイで鹿島を下し、決勝トーナメント進出を引き寄せてもいる。しかも2試合とも3ゴールを挙げての快勝。神戸にとって鹿島に対する苦手意識はない。
とはいえ、鹿島が強いのは確かだ。日本代表の柴崎岳と小笠原満男のダブルボランチは強力。前節の柏戦では日本代表帰りの西大伍がゴールも決めている。その柏戦ではダヴィが負傷し長期離脱を余儀なくされたが、代わりに入った中村充孝がゴールを挙げるなどタレントには事欠かない。神戸の司令塔で日本代表の森岡亮太も「あれだけ若い選手が多いなかで結果を出している。鹿島は一つひとつのプレーがうまいし、一人ひとりの賢さも感じる」と言うのもうなずける布陣と言えるだろう。
今季の対戦成績では神戸が2戦2勝だが、実力的には互角と見るのが妥当。その両雄決戦で勝敗を分けるポイントについて、神戸のシンプリシオは「ミスが少ないチームが勝つと思う」と言う。ミスが勝敗を分けるのはどのゲームにも言えるが、試合巧者の鹿島が相手となると、よりその部分がクローズアップされるとシンプリシオは読んでいるようだ。
前節の徳島戦では、状況判断を見誤ったことで前半終了間際に同点ゴールを許した。それを受け、小川慶治朗はこう話す。
「試合を通して、人任せになっているのが問題かなと思う。前の選手も後ろの選手のことを意識してプレーしないといけないし、攻守ともにチームメイトで支え合うなど全体で戦う意識を持たないといけないと思う」
冒頭で鹿島がリーグ戦で無得点に終わった試合は2試合のみと記したが、神戸も無得点試合はわずか4試合である。
逆に、相手を無失点に抑えた試合を見ると、神戸が5試合、鹿島が10試合。これを一概に守備力の差と捉えるのはナンセンスだが、鹿島のほうがチーム全体で戦えている証拠と言えるかもしれない。神戸にとって今節は、小川の言う「チーム全体で戦う」ことが試される試合になりそうだ。
以上
2014.10.21 Reported by 白井邦彦