ヤマザキナビスコカップ・準決勝の激闘から中2日。ガンバ大阪は天皇杯・準々決勝の戦いに挑む。相手は、大宮アルディージャ。大宮はJ1リーグ・27節のヴァンフォーレ甲府戦から約2週間を経ての公式戦だと考えても、コンディション的なアドバンテージは大宮にあるのは否めないが、「勝って疲れを癒している」とDF岩下敬輔が言うように、『勝利』は選手たちにとって何よりの力となっている。それは驚異的なペースで白星を重ねている昨今の試合結果を見ての通りだろう。しかも、G大阪にはJ1クラブ中、唯一、2000年に鹿島アントラーズが達成して以来の『国内三冠』の可能性を残したチームとしてのプライドがある。決勝へと駒を進めた先日のヤマザキナビスコカップ同様、天皇杯決勝の舞台にたどり着くためにも、まずはこの準々決勝で『大宮』の壁を粉砕したい。
その大宮とは今季のJ1リーグ戦ですでに2度対戦し、G大阪が2勝。相性の良さを見せつけているが、だからこそ、大宮の『リベンジ』への思いも強いはず。しかも一発勝負のトーナメント戦の戦いは、リーグ戦とはまた違った難しさもある。ともに準々決勝まで駒を進めてきたプライドに懸けても、好ゲームが期待できそうだ。
先にも書いた通り、ガンバ大阪は10月9、12日の両日、ナビスコカップ準決勝・川崎フロンターレ戦を闘い終えたばかり。最大の収穫はホーム&アウェイの戦いを制して、決勝へと駒を進めたことに他ならないが、裏の収穫を挙げるならばやはり、J1クラブ中、最もハードな9、10月を送っている中で、結果を積み上げられていること。しかも、連戦を考慮して、あるいはケガ人や体調不良による離脱など、アクシデントも起きている中で、メンバーを入れ替えながらこの激戦を勝ち抜けてきたことだろう。
「今のガンバは誰が出ても結果を残せるという空気感が漂っている。そのことはチーム内でのいい競争にも繋がっているし、その事実が相乗効果になってチームに勢いを生んでいる」と話したのは、直近のナビスコカップ・川崎F戦で2ゴールを挙げたMF阿部浩之だが、『ターンオーバー制』とまではいかなくとも、先発メンバーを入れ替えたり、疲労が否めない選手を早めに交代できるのは層の厚みゆえ。長谷川健太監督もその川崎F戦でのFW宇佐美貴史の早めの交代理由を「個人的にはまだやれたかもしれないが、ずっと厳しい試合に出っぱなしで疲れは相当ある。それも踏まえて少し早めに代えました」と語っていたが、そうした決断こそが何よりの証拠だろう。
それは、この天皇杯の戦いだけを振り返っても言えること。例えば4回戦のサンフレッチェ広島戦はリーグ戦での対戦も控えていたこともあり、FWパトリックやFW宇佐美を控えに回し、FW佐藤晃大やFWリンスを先発させたり、それまで先発での出場機会が少なかったMF明神智和やDF金正也にチャンスを与える中で3-1と勝利。この準々決勝への切符をつかみ取った経緯もある。その自信からも、また疲労が否めない現在のチーム状況を踏まえても、今回も総力戦で挑むのは必至。ぎりぎりまで選手個々のコンディションを見極めながら一丸となって7年ぶり、3回目の決勝の舞台での『結果』を求めることになりそう。「次、勝たなければ意味がない(FW宇佐美貴史)」という思いのもとに。
大宮はラウンド16の愛媛戦を逆転勝ちで制し、2大会ぶりとなる準々決勝の舞台に駒を進めてきた。その愛媛戦は渋谷洋樹監督にとっての初陣となった中で愛媛に先制を許すも、63分にFW富山貴光が同点弾。更に、その5分後にもMF橋本晃司が逆転弾を決め、ホームの地で白星を引き寄せた。しかも特筆すべきは、愛媛戦での勝利後のリーグ戦5試合で4勝1敗と好調をきたしていること。うち、直近のリーグ戦2試合では連勝を飾って“降格圏”を脱出しており、上り調子の中で天皇杯の戦いを迎えることになる。その勢いを途切れさせないためにも『結果』を求めて万博に乗り込んでくるのは間違いない。8月9日のリーグ戦における対戦時とは監督も交代した中で、違う大宮の姿が見られることになりそうだ。
注目は前述のFW宇佐美貴史と、元G大阪で大宮の攻撃の軸の1人であるMF家長昭博。FW宇佐美は幼少の頃からMF家長と同じルートを辿ってG大阪のアカデミー入りを果たした経緯もあってだろう。かねてからMF家長に憧れ、今でも「自分にとっては唯一無二のスター」だと語っていたが、ともに攻撃の軸となる選手だからこそ、より輝きを放ったチームにゴールが、勝利がもたさられるといっても過言ではない。しかも戦いの舞台は二人が慣れ親しんだ万博記念競技場。見応えのある対決を楽しめそうだ。
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2014.10.14 Reported by 高村美砂