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【J2:第36節 東京V vs 湘南】レポート:90分間集中力切れず、互いに「1点」を奪いにいった好ゲームの末のスコアレス・ドロー。(14.10.12)

スコアレス・ドローで試合終了のホイッスルが鳴り、湘南の優勝が決まった。だが、整列に向かう湘南選手たちの表情には、優勝の喜びよりも、たった今終わったばかりの試合が不完全燃焼であったことへの不満足さの方が色濃く表れていた。9月23日、史上最速タイでJ1昇格を決めた試合も引き分け、そして、優勝決定戦となった今節もドローと、“ここ一番”の試合で勝ちきれなかったというのは、やはり、前半戦21試合で20勝1敗など、ここまで驚異的な勢いで勝ちまくってきたチームにとっては、何とも悔しいところだろう。
それでも、挨拶が終わり、優勝の喜びを一緒に分かち合うためゴール裏へと歩み寄るうちに、待ちうける3000人超の湘南サポーターによって盛り立てられ、次第に選手たちも歓喜の表情へと変わっていった。
永木亮太主将の一声で一例すると、恒例のラインダンス。そして、昇格決定の際は固辞した胴上げを、曹貴裁監督は、優勝が“クラブ史上初”の快挙だったこともあったからであろう、今回は甘んじて受けた。3回、名将は宙を舞った。

その対面では、首位・湘南を相手に激闘を演じた東京Vの選手たちが、同サポーターから盛大な称賛の拍手を浴びていた。

こうして、試合後にスタジアム全体がピッチ上の選手たちへの大歓声に包まれるというシーンを見れば、この試合がいかに好ゲームであったかが十分伝わってくるのではないだろうか。試合開始直後から、実に緊迫した、球際激しい熱戦が繰り広げられた。

「勝てたでしょう」と、いつになく中後雅喜が力強い目と口調で言い切った通り、全体を通して、思い通りの戦いをしたのは東京Vだったのではないだろうか。試合前、「走力」を冨樫監督はポイントに挙げていたが、「DF、ハーフ含めて、うちの両サイドがアップダウンを激しく繰り返してくれたことによって、相手のストロングな部分が少なくなっていった(冨樫監督)」。遠藤航、三竿雄斗、宇佐美宏和、菊池大介、もっと言えば、武富孝介、大竹洋平といった、サイドを使いながら次々とボールホルダーを追い越して攻め込んでくる湘南の勢いを、あまり出させなかった。
また、一方で、中央で入れてくる縦パスもにも、きっちりと対応できていた。3人のセンターバック、または永木、岩尾憲から何度も鋭く縦に出されたが、中後を中心に体を張ってカットし、インターセプトから攻撃に転じるという場面が何度も見られた。
「互いにDFラインをどれだけ高い位置に上げられるか」も、もう1つの鍵と選手たちは位置付けていたが、「相手に押し込まれる時間帯もある」と、ある程度の割り切りは最初からできていたため、守勢の時間帯もにも焦らず、冷静に耐え凌ぎ、攻撃の時を待った。
その結果、4試合連続のクリーンシートは「自信になる」と、東京V選手たちは前を向く。ただ、一方で、いい形で崩しながらも、フィニッシュの質、層の薄さは、残念ながら進歩があまり感じられなかったと言わざるを得ない。後半、田村直也を投入し、二ウド、中後がより攻撃的になったところに南秀仁も加え、平本、南、中後のコンビネーションで崩していく形には、ゴールの可能性も感じられたが、それでも得点には至っていない。
とはいえ、「繋ぎも、しっかりとゴールに近づいている」と、選手たちはみな手応えを口にしている。残り6試合となった。残留に向けて「勝利にこだわらなければいけない時期(中後)」の中で、勝つためには得点は絶対条件である。感じつつある手応えを、試合で結果に結びつけられるかこそ、東京Vのこれからの早急かつ最重要なテーマとなる。

優勝が決まり、歴史に名を刻んだ湘南だが、曹監督はここで満足するような器ではない。これからJ1で戦い続けるクラブに成長するためにも、今節のように相手にストロングを消された時にいかに打開していくかは今後への大きな課題となったに違いない。
前半は、クラブ史上初の『優勝』の二文字に、若い選手の多いチームゆえ、緊張からの硬さがあったことは、見ているこちらにも伝わってくるものがあった。だが、「引き分けではダメだ。勝に行くぞ」
「こういう場面でビビッていてはダメだ」というハーフタイムでの指揮官の叱咤に、後半から選手たちは奮起した。立ち上がりから東京V陣内での展開が続き、同40分にはDFラインからのスルーパスに途中から入った岡田翔平が抜け出し、フリーでこの試合最高の絶好機を迎えたが、枠をとらえることができなかった。
普通に見れば、湘南の決定力は十分高いと。だが、こうしたポイントごとにピックアップしてみると、逸機はまだまだあるようだ。特に、勝つべき試合での「ここ一番」だった。そうした場面で決めることこそ強いチームの必須条件と言えるのだから、今以上の詰めのそつの無さを極めていくことが、目指すチームへの一端となるのではないだろうか。

ともあれ、スコアレス・ドローであり、内容的には不完全燃焼とはなったようだが、史上最速、14連勝、そしてクラブ史上初、J2リーグ史13チーム目と、記録づくめの優勝を手にした今節は、「前節の愛媛戦の3−0、アウェイで磐田に2−1で勝った試合、2位の松本に4−1で勝ったのと同じぐらいの価値はある日になった」と、湘南指揮官は位置付けた。そして、昨年、J2再降格の屈辱の会見を行った同じ、味の素スタジアムの会見場で「情けない話ですが、去年ここで会見して、降格が決まった時、あいつらの顔を見るのが辛かった。でも、そこで残って頑張った奴に100%助けられたという思いしかないですね。良い選手たちだと思います」と、最大級の謝辞を述べ、締めくくった。

湘南ベルマーレの監督、選手、スタッフのみなさん。社員、関係者のみなさま、サポーターのみなさま、そして、担当の隈元大吾さん。心から、優勝&J1昇格おめでとうございます!!

以上

2014.10.12 Reported by 上岡真里江
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