首の皮一枚つながった。2点差を付けられての敗戦ではあったが、3−0で終わりそうな試合終盤。後半のアディショナルタイムに決まった1点が、川崎Fの選手たちにモチベーションを与えている。
「1点を取れたことは大きいと思います。3−0での勝利が必要なのと2−0でOKなのとでは全然違います」と話すのは谷口彰悟。手痛い対応のミスで3失点目の直接的な原因となってしまったが、すでに気持ちは切り替わっている。「戦ってみて、手も足も出ない相手ではないという印象をうけました。自分たち次第です。割りきって、点を取りに行くしかないと思います」と述べる。
「最後の一点は大きい。2−0だったらホームだしやれるスコアだと思う」と話すのは大久保嘉人である。「タイトルは取りたいですね。決勝に行きたい。面白い試合になると思います」と意気込む。
さすがに負けた以上「良くはなかった」と述べる風間八宏監督も、アディショナルタイムの1得点について「1点取れたのは大きい。ホームで戦えるのも大きい」と前向きだ。「決め切れなかったところもあるが、もっとおもしろい事をやってもらいます。チャンスはありますし、楽しみです」と話し、第二戦に向けて気持ちを入れていた。
アウェイでは1-3と完敗してしまった川崎Fだが、田中裕介が決めたアディショナルタイムの1点がチームを勇気づけているのは間違いない。今回の等々力での第二戦で川崎Fが2−0で勝利した場合、アウェイゴールルールが適用され、決勝進出が決まる。もしアウェイでの第一戦が0−3で終わっていたとすると、ホームでは3ゴールが必要で、なおかつそれでも2試合合計で同点に追いつけるだけだった。それどころか、3ゴールを奪うために前掛かりに試合を進めざるを得ない中、1失点も許されない厳しい戦いを余儀なくされていた。そして仮に1失点した場合、勝ち上がりのために必要なゴール数は5点になる。つまり言い方を変えると、アウェイゴールはホームで許容される失点のマージンだという言い方ができる。
ホームでの勝利と、それによる決勝進出を狙う川崎Fだが、G大阪の選手でまず警戒しなければならないのが宇佐美貴史とパトリックの2トップであろう。第一戦を前に川崎Fの選手たちは彼らへの警戒感を口にしていたが、結果的にその彼ら二人にゴールを奪われてしまった。1失点まではまだ許容されるとはいえ、1失点してしまえばイーブンに戻すために少なくとも3得点が必要となる。そう考えれると、まずは彼らに仕事をさせない必要がある。
彼ら2トップへの警戒を行った上で、中村憲剛が要注意人物として名前を口にしていたのが、大森晃太郎と阿部浩之の両サイドハーフの二人だった。彼らの守備がG大阪のポイントで、それをどうかいくぐるのかが課題となる。また第一戦の試合中、G大阪の選手がところどころで見せていた大島僚太をターゲットとした厳し目の守備も、この試合の行方を左右するポイントの一つであろう。川崎Fとすれば大島がそうしたプレスをかいくぐり、どれだけパスを供給できるのかにも注目したい。当の大島は「相手が来てくれたほうが、剥がせればチャンスになるので、来ても問題ないです」と意に介する様子を見せなかった。
今季これまでにも見せてきたように、すでに川崎Fの選手たちは内容のあるサッカーができるレベルにある。そしてその試合内容を取り戻すために今必要なのは、意識の変化だ。リーグ戦では思うように結果を出せていないこの苦境を脱するためには、選手自らが楽しむ事が必要だと風間監督は話していた。そうであるならばチームが「やれるかもしれない」と考えるスコアでアウェイでの第一戦を終えられたのはプラスであろう。リーグ戦では2節続けて等々力で引き分けているだけにまずは勝利して、決勝進出を決めてほしいと思う。そのためにもサポーターの声援をお願いしたいが、その点についてジェシは「明日はサポーターの皆さんに、今まで見たことのない応援をお願いします」と述べていた。そしてだからこそ、「自分たちが決勝に行くのだと思って戦います」と話していた。
どちらに転んでもおかしくはない状況となったが、G大阪も死力を尽くして戦うはずで、そう簡単な試合にはならないだろう。どちらに転ぶにしても、見応えのある試合を期待したいと思う。
以上
2014.10.11 Reported by 江藤高志