「難しい試合になる」。吉田眞紀人は険しい表情で今節の展望を口にした。
今節ホームに迎えるのは現在最下位の富山。今節の結果次第では21位以下が決定してしまうだけに「死に物狂いで挑んでくる」(金聖基)ことが予想される。さらに順位こそ最下位だが、水戸側の見解は「(富山は)力のあるチーム」(吉田)で一致している。
前回対戦では3対0で水戸が勝利をおさめた。結果だけを見れば、水戸の完勝と言えるが、「1点目を取るまでは富山の速い寄せに苦労した」と吉田が振り返るように、富山の厳しいプレッシャーに苦しめられた印象が強い試合であった。そのチームにさらに宮吉拓実、井澤惇、前貴之、パク テホン、廣永遼太郎といった能力の高い選手が加入。現状は厳しいが、明るい材料がないわけでもない。奇跡を起こそうと水戸に乗り込んでくるに違いない。「前回対戦よりパワーアップしたチームが残留のために必死に向かってくる。正直、怖い相手」と話す吉田をはじめ、選手たちは最大限の警戒を示している。
「20周年記念試合」で勝利が義務付けられている水戸と残留に向けて絶対に負けられない富山の一戦。前節同様一進一退の攻防が予想される。
拮抗した試合を勝ち切れるか。それが今季の水戸の課題と言える。今季喫した13敗中11敗が1点差。さらに引き分けも12試合あり、どちらに転ぶか分からないような試合で勝ちきれなかったことが今の順位に甘んじている最大の原因だ。
吉田は「やっているサッカーには本当に自信がある」と言いながらも、「精神的に変わらないと水戸はいつまでもこの順位だと思う」と厳しい言葉を吐いた。
「同じ負け方でも負け方が悪いというか、事故でもいいから1点を取ってやろうという迫力がまだまだ弱い。昨季、松本に在籍していましたが、松本はそういうところがすごかった。よくサポーターから『気持ちが伝わらない』と言われますが、その気持ちは分かります。チームとしてガムシャラさが足りない。90分通して平均的にいいサッカーができている。だから、もったいないというか、もうひと踏ん張りが足りない。そういう面が変わらないと水戸はいつまでもこのままだと思います。それは監督の問題ではない。選手1人1人がもっと貪欲にならないといけない。松本がなぜ2位にいて、僕らはこの順位なのか。それは気持ちの問題だと思います」。
今季のチームは苦しみながらも進化を遂げてきた。どのチームが相手でも主導権を握れるようになり、拮抗した戦いを演じられるようになった。しかし、もう一つ殻を破れずにここまで来てしまった。今、水戸に求められているものはただ一つ。「勝ちきる強さ」である。
もちろん、チームとしての約束事を守ることは最優先だが、それだけでは勝つことはできない。選手個々がプラスアルファを出さなければならないのだ。「もうひと踏ん張り」を出せるかどうか。チャンスでは失敗を恐れずに仕掛け、ゴール前では泥臭く体ごと飛び込む。貪欲さをむき出しにして奪うゴールが水戸を変えることとなる。
現状を打破するためにも、自分たちの力で限界を乗り越えないといけない。厳しい試合になることが予想される今節こそ、そのきっかけにしたい。いや、しなければならない。残りはわずか7試合。もうこれ以上、同じことを繰り返すわけにはいかない。次なるステップに向かうための1勝を、なりふり構わず奪いに行け。
以上
2014.10.10 Reported by 佐藤拓也