今シーズンのJ2も残すところは7試合。どのチームも緊張した中でのトレーニングが続く。リーグ戦の42試合は、どれもが等しい価値を持ち、どの試合も重要な試合であることに代わりはない。それでも、やはり、今シーズンの成果を決する7試合は特別な試合。勝点1の違いが、それぞれの立場を大きく変える混戦リーグではなおさらのことだ。そして11日、福岡はレベルファイブスタジアムで讃岐を迎えて戦う。
さて、福岡は苦しい戦いが続いている。直近5試合の成績は1勝4敗。第30節を終えた時点では6位の大分に勝点1差の7位につけていたが、現在は勝点7差の11位。J1昇格プレーオフ出場権を手に入れるためにはギリギリの位置にいる。
自分たちのサッカーが通用しなくなったわけでも、チームが崩れているわけでもない。ただ、中盤の高い位置でボールを受ける選手が不在で、チーム全体の距離感がアンバランスになっており、それが、持ち味であるプレスがはまらないこと、攻撃が単調になりがちなこと、あっさりと失点すること等々につながっている。8日の練習後には、選手全員がピッチの中で円陣を組んでミーティングを実施。現状をどのように修正するかについて、それぞれが意見を出し合った。「選手間でのすり合わせができた。最終的にトレーニングで確認して讃岐戦に臨むだけ」と話すのは平井将生。プレーオフ進出に向けて、まずは讃岐戦での勝利を目指す。
勝点7の差を追いかけるという意味では、讃岐も同じ立場にいる。直近5試合の成績は1勝1分3敗。順位は東京Vと勝点7差の21位で、J2残留を果たすための戦いが続いている。ギリギリの立場にいるという点でも福岡とは似た立場にいる。
J参入初年度となる2014シーズンは7連敗でスタートするという厳しいものだったが、戦いを続けていく中で次第にチームとしてまとまってきた印象があり、実際、後半戦では岡山に勝利し、京都、松本に引き分けるなど上位チームから勝点を奪っている。コンパクトな陣形をベースにした組織的な守備から、素早くカウンターを仕掛けるのが持ち味。福岡に対しても、自分たちのやり方で勝点3を狙いに来ることは間違いない。「直近10試合のパフォーマンスは、かなりいい。この10試合での勝点は我々よりも多い。注意しなければいけない相手」とマリヤン プシュニク監督は話す。
互いに勝たなければ未来への希望がつながらない試合は、ホームの福岡はもちろん、アウェイの讃岐も、目指すものは勝点3以外にはない。内容よりも結果が優先される試合であり、それぞれに対戦相手への対策も練っているだろう。それでもやはり、結果を左右するのは、いかに自分たちのサッカーを表現できるかというところにある。ここまでくれば、チームの状態が激変することはない。武器として使えるのは、今までに積み重ねてきたものがすべて。自分たちのやり方を見失わずに、90分間に立って徹底した方が勝利を掴む。
互いの特長を考えれば、福岡がボールを持ち、讃岐は守りながらワンチャンスを狙う展開になるのではないか。その中で、福岡に求められるのは、縦のポジションチェンジを繰り返しながら、中盤の高い位置に起点を作ってチーム全体の距離感を保ち、相手のギャップを素早く突くこと。讃岐に求められるのは、粘り強く守って、相手の隙を見逃さずにカウンターを仕掛けること。対照的な特長を持つチームの対戦は、我慢比べのような展開になることも予想されるが、しびれを切らさずに自分たちのサッカーを繰り返す必要がある。勝負は90分間。熱く、冷静に戦うことも両チームに共通して求められていることだ。
そして福岡は、ホームで戦うというアドバンテージを最大限に活かしたい。ピッチに立つのは11人だが、サッカーの試合は11人だけでは決まらない。ベンチに控える選手。ベンチの外から仲間を見守る選手。そしてスタンドから声援を送るファン、サポーター。それらの力の総和がホームゲームで戦うチームの力。その総和の差が勝敗を分ける。ギリギリの戦いだからこそ、いつも以上にひとつになって勝利をつかみたい。
以上
2014.10.10 Reported by 中倉一志