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【J1:第27節 柏 vs 広島】レポート:悪天候によって持ち味を消されても、両者ともファイティングスピリットと激しいバトルを90分間貫く。柏対広島3連戦の第1ラウンドは、妥当のスコアレスドロー。(14.10.06)

試合後、ミックスゾーンに現れた工藤壮人は、開口一番、苦笑いを浮かべながらこう話した。
「今日は特に言うことはないんですけどね…」

前日未明から降り続いた雨によって、試合開始前にはピッチ上に水分を含み、ところどころに水溜りができているのが目視できる。
柏も広島も、本来は地上戦を得意とするチームだが、このピッチコンディションでそれぞれの持ち味を発揮するのは難しいし、むしろ発揮しようとパスをつなげば、それがかえって致命傷にもなりかねない。

そこでネルシーニョ監督、森保一監督、両チームの指揮官が与えた指示は、ともに「リスクを冒さず、シンプルに攻める」ということだった。

ボールを奪ったら、相手のディフェンスラインの背後を目掛けてロングボールを蹴り込む。横パスやバックパスは論外。そして、相手のDFが弾き返したセカンドボールの争いと、濡れたピッチ状況により普段よりは発生する可能性が高いDFとGKのミスを狙う。前線の選手は、アバウトなロングボールに対し、試合開始直後から終了の瞬間までとにかく走り切る。冒頭の工藤の言葉は、戦術、駆け引き、テクニックよりも、フィジカル的要素がはるかに大きかったゆえに、「試合分析に困る」という意味で発したものだ。

この試合展開は後半も変わらない。「リスクの大きいプレーはしない」「後半も気持ちを切らさずに声を掛け合いながらプレーを続けること」とハーフタイムにネルシーニョ監督が試合前と変わらぬ指示を送れば、森保監督もまた「攻撃はシンプルに徹底してやり続けること」「守備はセカンドボールをしっかり拾い続けること」と、キック&ラッシュを徹底する。

ただ、その中でお互いにチャンスも作った。54分、広島は右サイドの石原直樹が折り返し、濡れたピッチの影響を受け、ボールが増嶋竜也の足元を抜けて佐藤寿人の元へ。佐藤は素早く反転してシュートを放つが、すぐさま詰めた増嶋の足に当たってシュートは枠に逸れた。すると柏も70分にルーズボールを高山薫が拾い、フワリと浮かしたパスをゴール前へ入れる。ゴールを背負ったレアンドロは、これを胸でトラップしてオーバーヘッドシュート。しかしGK林卓人の好セーブが得点を阻止する。

この日の両守備陣の集中力とファイティングスピリットは素晴らしかった。激しいバトルを繰り広げながら、このピッチ状況で“事故”を起こさないように、その中にも繊細なプレーを心掛ける。ただし、唯一その“事故”が起こりかけたのが72分のプレー。青山敏弘の裏を狙ったパスは、鈴木大輔が難なく対処するかに思えたが、濡れた芝に足を取られて転倒。ここは飛び出した桐畑和繁が佐藤のシュートをブロックする。桐畑の好判断だった。
79分には藤田優人のクロスをレアンドロが折り返し、ファーサイドのスペースに入った高山がシュートを放つも、これは枠外へ。この試合で、意図的に相手の守備を崩し掛けた攻撃は、両チームを通じてこの1本だけだった。

終盤、広島は浅野拓磨、柏はドゥドゥと、切り札としてピッチに送った選手もスピード系の選手だった。両選手ともよくボールに絡み、見せ場を作りかけたが、結局はゴールを割るには至らず、試合はスコアレスドローに終わる。90分間に渡って披露したファイティングスピリット、フィジカルコンタクトを恐れぬ果敢な姿勢など、試合自体は大味な展開ではあったものの、両チームの選手はまた違った面でプロ力量・屈強さを存分に見せてくれた。

このJ1第27節から、柏対広島は3連戦となる。当初はこの初戦を分析し、2戦目、3戦目へのスカウティング材料になるはずだったが、高萩洋次郎が「今日の試合は参考にならないですね」と話していたように、それぞれのチームが相手を分析し、周到に準備してきたことをほとんど発揮できない試合となった。
だが、言い換えると周到に練ってきた対策はヤマザキナビスコカップ準決勝第1戦で初めて姿を現すことになる。ここ数年、タイトルを取り続けてきたチーム同士による異例の3連戦は、果たしてどのような結末を迎えるのだろうか。

以上

2014.10.06 Reported by 鈴木潤
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