群馬の戦略にはめられた前節から一転、今節は自分たちの策略に京都をはめることができた。4―1―4―1から4―4―2に布陣変更したことも小さくないが、「試合全体を通して積極性が、この前の試合とは全然、違った」(廣瀬浩二)ことが勝因として挙げられる。北関東ダービーでは鳴りを潜めた激しさを取り戻したことが、試合序盤から果敢に挑みかかったことが、連敗阻止につながる勝点3をたぐった。
「マコ(杉本)と前線に張ることは意識していた。やりながら相手が自分のことを意識しているというか、気にかかっている、嫌がっている感じはあった」
そう振り返った大久保哲哉を目掛けてロングフィードを送り込んだ栃木は、京都の最終ラインを押し下げることに成功する。京都も長いボールを駆使しながら全体を間延びさせ、できたスペースでボールを動かすことを狙いとしてもっていた。だが、今回は栃木のほうが一枚上手だった。また、開始1分と経たずに大黒将志に巡ってきた決定機を、GK鈴木智幸にストップされたことも響き、流れを持って行かれた。
逆に好守から栃木はイニシアチブを握り、左の近藤祐介と荒堀謙次のコンビがサイドを侵略。7分には近藤のロビングを大久保が競り落とし、酒井隆介の背後から顔を出した杉本真が先制点を挙げた。思うようにボールを動かせなかった京都だったが、こちらも同じような形で同点とする。左の福村貴幸のクロスを右からドウグラスが頭でつなぎ、最後はノーマークの大黒が左足ボレーでネットを揺らした。前半16分のことだった。
1―1になってからもロングボールが飛び交う展開が繰り返された。京都としては地上戦に持ち込みたかったはずだが、川勝良一監督が悔いたように栃木のやり方に付き合ってしまった。そのため脅威を与えるような攻撃ができなかった。一方、自分たちの土俵で戦えていた栃木は、田中英雄から本間勲がインターセプトしたのを契機に高速カウンターが発動。複数の選手が京都ゴール前に押し寄せ、廣瀬、本間と渡ったボールを、ニアサイドに飛び込んだ杉本が合わせて決勝ゴールを奪った。その後、いくつか危ないシーンを作られはしたものの、1点差を守り抜いた栃木がクロスゲームを制した。
試合を引っ繰り返せなかった川勝監督は、「焦りすぎて普段の判断とか技術などを使うところが、今日はうまくできなかった」と敗因を語った。焦りが生じたのは、先手を取られたからだ。それが最後の最後まで空中戦と地上戦の使い分けを難しくし、局地戦でのパス交換の狂いを招くことに。失点に関して、「簡単にやられているのでちょっと不甲斐ない」とは酒井。後手に回っているケースが多いここ最近の悪癖を、次節こそ払しょくしたい。
前節のダービーに敗れた鬱憤を晴らした栃木。京都戦では、中盤の底に配された本間勲と岡根直哉が効力を発揮。特に、「京都が長いボールを使ってきたので跳ね返せたのは大きかった。体を張ってセカンドボールを奪い、繋ぐことを泥臭くやった」と本間が称賛した岡根がクリーナーとして機能したことで、波状攻撃を受ける回数を軽減できた。ダブルボランチはもちろん、ピッチに立った選手全員が「(プレスに)行くタイミングとかコンパクトさだとか、その中で何が起こるかの予測が、今日はうまくできていた」(阪倉裕二監督)。ただ、試合後、喜びを露わにする選手が皆無だったのは、非常に興味深かった。指揮官が引き締めたことも多分に影響しているが、良いパフォーマンスが継続できない今季の課題を分かっているからこそ、異口同音に「次が大事」(GK鈴木智)と口にしたのだ。アグレッシブさの継続。今季2度目の連勝を掴むには、次節もその姿勢を打ち出せるかが問われる。
以上
2014.10.05 Reported by 大塚秀毅