試合が終わってみればシュート数は千葉が15本で東京Vは14本。だが、それほど多く感じられなかったのは、ゴールの枠外がかなり多く、決定機は千葉が3回で東京Vが4回と少なかったからだろうか。集客活動の効果か今季最多の12,346人の観客は、後半のカウンター攻撃の応酬に沸くことはあってもゴールシーンで沸くことは最後までなかった。
9日間で3試合のラストゲーム。千葉は前節で負傷した岡本昌弘に代わってGKはJリーグデビューの高木駿で、負傷箇所が回復した山口智がスタメンに入り、さらに右サイドハーフは井出遥也に代わって幸野志有人と前節から3人を変更。東京Vは前節のスタメンからの変更は1人(常盤聡に代わって鈴木惇)のみで、勝った前節のいい流れを維持するかのように立ち上がりから攻勢に出た。前線から厳しくプレスをかけ、ボールを奪うとスペースをうまく使って攻める。千葉のプレスの隙間を通すようにパスをつなぎ、こぼれ球に素早く反応。12分、右サイドからのクロスを平本一樹が落として鈴木が打ったシュートはゴールポストに当たって外れたが、この試合の最初の決定機を作った。守備の意識も高く、ボールを奪われると素早く帰陣して、全体をコンパクトにしたままスペースをケアした。
千葉はディフェンスラインの背後のスペースを思うように突けず、20分頃まではパスもなかなかつながらなかった。「『裏』をケアされた時にどうするかという課題が出た。『3人目の動き』を使って飛び出すプレーが必要だった」と話した町田也真人は「もう少し横に揺さぶってから縦にパスを入れる」プレーの必要性も口にした。25分、右サイドから森本貴幸、町田が絡むと左サイドから入ってきた中村太亮が強烈なシュートという横幅と3人目を使った決定機は、東京VのGK佐藤優也がシュートをキャッチ。流れの中で東京Vに隙がなかなかできないとみると、37分、千葉はFKで山口智が素早くリスタート。谷澤達也のパスから森本がヘディングシュートを放つが、佐藤優也が好セーブで失点を阻止した。
千葉のゆっくりとした攻撃の組み立てが目立った前半に対し、後半は互いに相手のミスからカウンター攻撃を仕掛け合うスピーディーな試合展開となった。だが、そこでより正確性の高いプレーを見せ、ゴールに近づいたのは東京V。後半、千葉は交代出場のケンペスがボール奪取からのドリブルシュートがGKの正面という1回だけしか決定機を作れなかったが、東京Vは流れの中やセットプレーで杉本竜士、井林章、中後雅喜がゴールを脅かした。だが、それでも決めきることができず、スコアレスドローに終わった。
両チームが得た勝点は同じ1でも、その意味合いは少し違う。20位の東京Vは前節終了時に6だった21位の讃岐との勝点差を7に広げた。この結果を中後は「今日、勝てれば一番良かったし、今日は最低限が引き分けと考えていたんですけど、4連敗の後が1勝1分で、チームとしては上向きになっていけばいいと思います」と前向きに捉えた。
千葉は前節に続いて勝てば6位になれるチャンスがあった一戦でまたもや勝ちきれず、7位から9位に後退。東京Vの決定力不足に救われながらも無失点で守っただけに、ここぞというところで『1点』が取れない積年の課題が重くのしかかった。「後半の最後のほうに(山口)智さんからいいボールが2本来たので、そこでいいクロスを上げられればよかった。少ないチャンスをモノにするのも必要で、セットプレーでもチャンスがあった。こういう試合はセットプレーも大事だと思うので、毎回、もっといいボールを蹴れるように練習しないといけない」と話したのは中村。苦しい状況でも動き方も含めたプレーの選択を的確に行ない、正確に実践できるか。その課題の壁を乗り越えないとJ1は見えない。
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2014.09.29 Reported by 赤沼圭子