第32節は後半に岐阜の猛攻を受けたものの、狙いである相手の背後を突く形での15分の谷澤達也の得点を守っての1−0で、第29節・水戸戦以来の勝利をあげた千葉。前節(第33節)は第32節から中2日だったがスタメンを変更せずに臨み、序盤は谷澤、町田也真人のシュートで得点機を作った。だが、特に左サイドへの大きなサイドチェンジが目立ったダイナミックな展開の愛媛の攻撃に押されてしまう。愛媛のCKが続いた36分にヘディングシュートを決められて先制点を許したが、前半途中からプレスが機能していなかったことが響いていた。関塚隆監督は後半開始からナム スンウに代えて佐藤健太郎を入れ、中盤の守備を修正。50分に佐藤健のパスを中村太亮がスルーしての谷澤のシュート、68分に佐藤健のパスを受けた中村のクロスからの森本貴幸のシュートが決まって逆転に成功。だが、90分に愛媛は堀米勇輝が打ったシュートのクロスバーの跳ね返りに西田剛が詰めて同点ゴールを奪う。千葉はケンペスを入れて勝ち越しを狙ったが、2−2で引き分けた。
3−3の引き分けに終わった第31節・京都戦での後半のアディショナルタイムの失点シーンについて話した時、千葉のGKの岡本昌弘はこんなことを言っていた。
「あの場面は千葉のスローイン(判定は京都のスローイン)と思った千葉の選手は10割だったと思います。でも、失点は集中力を切らせた自分たちのミスのせい。オフサイドでもハンドでもファウルでも主審が笛を吹いて止めるまでプレーを止めないように、ボクは練習から言っているんです。オフサイドやマイボールのアピールも動きながらやるのはいいけど、そこで止める癖をつけると集中力が切れてしまうから。みんなを止まらせてしまったボクもよくなかった。『止まるな』と言えばよかったけど、全員が切れちゃったかな」。
また、千葉はセルフジャッジでのプレー停止は別に、セットプレー後のこぼれ球への反応が遅い。前述の愛媛戦の2失点目もシュートのこぼれ球への反応が遅かったため失点。味方同士がぶつかってでも失点を阻止しようと動くのならばともかく、どこか人任せのようで瞬時に動かない。その甘さを払拭しなければ失点は減らず、勝つことなどできない。
東京Vは第31節で栃木に2−3で敗れると三浦泰年監督(当時)を解任し、東京Vのユースの冨樫剛一監督がトップの監督に就任した。冨樫体制初戦の第32節はJ2残留争いのライバルの富山(9本)の倍近くの16本のシュートを打ちながらも決定力不足で無得点。12分にパスを富山のセンターバックにカットされ、隙を突かれる形でロングパスを受けた苔口卓也に奪われたゴールが響いて、0−1の敗戦で4連敗。21位の讃岐との勝点差は3に縮まってしまった。しかし、前節は持ち味のワンタッチのパス回しよりもサイドのスペースを長めのパスで突いてのクロスから得点機を作り、88分の決勝点も左サイドバックの安在和樹のロングパスを受けた平本一樹のクロスに中後雅喜がヘディングで合わせたもの。冨樫体制初勝利は第27節・水戸戦以来の勝利で21位の讃岐との勝点差を6に広げた。
両チームともサイドのスペースを使う攻撃が目立つだけに、サイドの攻防は勝敗を分けるポイントの1つ。また、千葉は愛媛戦の2失点目では中央に入ってきた堀米をマークできずにフリーでシュートを打たれたのも問題だった。冨樫体制でスタメンの座を得た東京Vの中後はボランチでもゴール前に出てくるプレーが目立つ。千葉はゴール前で引き過ぎて相手にスペースを与えることを避け、前線へ飛び出してくる選手をきちんとマークしてプレッシャーをかけられるか。そして、愛媛戦の反省から大きなサイドチェンジなどのダイナミックな攻撃に対応できるか。攻守で「自分がやる」という強い意識が勝利には必要だ。
以上
2014.09.27 Reported by 赤沼圭子