歓喜の瞬間は前節、西京極で訪れた。京都と引き分け勝点1を手にした湘南は、3位・磐田の敗戦を受け、2位以内を確定させた。開幕14連勝のJリーグ記録を打ち立て、その後も1敗しかせずに快進撃を続けている彼らのプロフィールに、史上最速のJ1昇格という記録が新たに加えられた。
ゲームはしかし、苦しい展開だった。岡田翔平のゴールで幸先よく先制したものの、次第に京都にペースを握られ、大黒将志の2ゴールで逆転された。1試合平均1失点以下の湘南にあって、リーグ戦では今季3度目の複数失点で、逆転されたのは初めてのことだった。
「内容はよくない試合でした。プレスがかからず、セカンドボールも拾えずに相手のペースになってしまった」岡田はゲームを冷静に振り返った。一方で、こうも続ける。
「勝って決められればよかったけれど、チームとして積み重ねてきたことが史上最速に繋がった。シマさんのゴールに助けられました」
84分だった。リーグ戦今季2度目のスタメン出場となった島村毅が自ら持ち運び、同点弾を仕留めた。右足を痛めていた時期に磨いた左足が、ここぞの場面でヒットした。
ひとつの目標をクリアした彼らだが、優勝、そして来季へ向け、つねと変わらず目の前の一戦に注ぐ。今節迎えるのは岐阜、今季初めて複数失点を喫した相手だ。
湘南と岐阜の前回の対戦は3月にさかのぼる。第4節、長良川に臨んだ湘南は、先制点を含む3得点で勝利を収めた。だが岐阜も前後半の終了間際にそれぞれショートカウンターからナザリトがゴールを決め、ゲームは3−2で決着した。湘南はリードしたあとの試合運びに課題を見出し、一方の岐阜は敗れながらも破壊力の一端を垣間見せた。
経験豊富なタレントを多数擁する岐阜は、その後も複数得点のゲームを重ね、目下15位ながら得点は47と、京都と並び4位タイにつけている。反面、得点と同じ失点数47が物語るように守備に課題があり、前節の熊本戦も前半2点をリードしながら後半に逆転され2−3で落とした。クロスからの失点がなかでも多く、かたや湘南はクロスが特長のひとつとするため、試合の見どころのひとつになりそうだ。なお岐阜はボランチやセンターバックとして出場してきたヘニキが、湘南はFW武富孝介が出場停止となる。
湘南の曹貴裁監督は相手を踏まえて言う。
「岐阜さんがチームとして戦う気持ちやスピリッツを非常に育まれていることが、映像を見ても伝わってくる。それに怯んだり受けたり、王様気取りでやったりしてしまうと僕たちはしっぺ返しを食らう。いつも通りの平常心でプレーできるかがすごく大事だと思う」
「選手たちはすごくいい顔をして練習してくれている」指揮官はオフ明けのトレーニングについて口にした。今節の試合後には全選手・スタッフが参加する「J1自動昇格圏内確定凱旋セレモニー」も予定されている。結果を残し、ホームであらためて喜びを報告したい。
以上
2014.09.27 Reported by 隈元大吾